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名手も称賛する快勝で関西馬を一蹴
文/編集部(W)、写真/森鷹史


毎年、チューリップ賞の週がやって来ると、ようやくが近づいてきたことを実感する。と同時に、桜花賞がすぐそこまで迫って来ていることも。

先日発表されたの開花予想では、今年は平年並みか平年より早く咲く所が多くなりそうとのこと。阪神競馬場がある兵庫県は桜花賞(4月12日)よりも早く満開を迎える模様だが、「桜が桜花賞当日まで散らないでほしいなあ」と願うのも毎年恒例となっている。

その桜花賞の最重要ステップがこのチューリップ賞で、阪神芝外1600mで行われた07年以降(過去8年)の桜花賞では、6頭の勝ち馬を送り出している。

暮れの阪神JFの好走馬がチューリップ賞でひと叩きして桜花賞へ向かうケースも多いが、昨年の阪神JFを制したショウナンアデラは前年のレッドリヴェール同様、チューリップ賞どころかステップレースを挟まずに桜花賞へ直行予定。2歳女王不在で行われることとなった今回、阪神JF組は②&③着のレッツゴードンキココロノアイが出走してきた(その他では⑧着ロカ)。

『メインレースの考え方』でも書かれていたように、過去8年のチューリップ賞では、阪神JF③着以内馬は[5.3.1.2](複勝率81.8%)と極めて高い好走率を誇っていて、実績を考えても、レッツゴードンキココロノアイが1番人気に推されるだろうと思っていたら。最終的には2番人気(3.8倍と5番人気(8.2倍)。その2頭を押し退け、1番人気(3.7倍)の座に就いたのは新馬戦エルフィンS2連勝中クルミナルだった。

3ヵ月ぶりの実戦で、大目標はその後にあるだろう2頭に対し、デビューから非凡な瞬発力を見せている素質馬の3連勝に期待したファンが多かったということか。ところが、この日の阪神は徐々に雨脚が強まり、5R・3歳未勝利(良)→9R・千里山特別(稍重)→10R・武庫川S(稍重)→11R・チューリップ賞(重)と、芝の馬場状態はみるみる悪化。クルミナルは武器である瞬発力を封じられてしまい、後方から伸び切れないまま初黒星(⑪着)を喫することに。

そんな3歳牝馬にとって過酷な馬場状態の中、レッツゴードンキは初めて逃げる形になりながら③着に粘り、ココロノアイは出遅れながらも馬群の外を通って進出し、直線で伸びあぐねる多くのライバルを尻目にグングン加速してレッツゴードンキを交わし去り、大外強襲で②着に食い込んだアンドリエッテの追撃も凌ぎ切って完勝した。

③着レッツゴードンキは④着ロカに2馬身差を付けていて、道悪の巧拙の差を加味しても、休み明けでもきっちりと馬券圏内を確保したココロノアイレッツゴードンキ総合力で一枚上だったという結果ではないだろうか(道中でブレーキをかける不利がありながら②着まで追い込んだアンドリエッテも負けて強し)。

特に、出遅れと外を回るロスがありながら、②着アンドリエッテに1馬身1/4差を付けたココロノアイはさらにワンランク上という印象も。名手・横山典騎手「少しヤンチャな面のある馬ですが、スタッフがしっかりとやってくれたおかげで、今日は返し馬から注文もなく、折り合いもすごく良くて、僕の思った通りの快勝です」と称賛したことからも、精神面でも確かな成長を見せているようだ。

ココロノアイの三代母マックスビューティは重馬場のチューリップ賞を快勝し、その後、桜花賞オークスを制して牝馬二冠を達成したが、ココロノアイはどうだろうか。

という感じで、桜花賞へ向けて着々と役者が揃ってきた牝馬三冠戦線。改めて現3歳世代が戦ってきた牝馬限定重賞を振り返ってみると、アルテミスS(ココロノアイ)、ファンタジーS(クールホタルビ)、阪神JF(ショウナンアデラ)、フェアリーS(ノットフォーマル)、クイーンC(キャットコイン)、そして、今回のチューリップ賞(ココロノアイ)となる。

その6レースのうち、出走馬がいなかったファンタジーS以外では関東馬が勝利していて、チューリップ賞も唯一の関東馬だったココロノアイが、1頭で関西馬16頭を一蹴している。前出の馬以外にはきさらぎ賞51年ぶりの牝馬Vを飾ったルージュバックもいて、現3歳牝馬は本当に関東馬に主役級が多い。今年最初のJRA・G1フェブラリーSは関東馬不在で行われていたが、桜花賞は関東馬中心で争われることになりそうだ。