強敵相手の戦いを近いうちにまた見たい
文/浅田知広、写真/森鷹史
G1のステップレースが盛りだくさんの3月。そんな中で古馬G3・ハンデキャップの条件で行われるのが、この
中日新聞杯だ。他の重賞と違って、よほどうまくいかないと春のG1でどうの、という話にはならないものの、なんとなく
秋を見据えた一戦になる。
昨年の優勝馬
マーティンボロは2走後に
新潟記念も勝ち、
秋の天皇賞でG1初出走(7番人気⑬着)を果たした。そしてハナ差②着の
ラキシスは、次走
ヴィクトリアマイルでは⑮着に敗れたものの、秋に
エリザベス女王杯のタイトルを手にしたのは、みなさんご存じの通りである。
もっとも、G3のハンデ戦だけに、この路線の常連さんや、いったんはG1の壁に当たった馬、そしてこれから大舞台を目指そうかという馬まで、
出走メンバーは多彩だ。今年は1番人気の
ダノンジェラートが前走1600万①着。2~3番人気に
デウスウルト、
ミトラと前走G3、G2の好走馬、続く
サングレアル、
ディサイファが秋のG1経験組。それ以下も混戦で、まあ馬券を買った人に話を聞けば、どれも理由には納得できそうなメンバー構成となった。
そんなレースで先手を奪ったのは、まず重賞通用の足がかりを作りたい6番人気
マイネルミラノで、800m通過は49秒4、1000mは61秒6のスローペース。個人的に注目していた一昨年の④着馬
パッションダンス(7番人気)は2番手で掛かり加減で、人気どころでは
デウスウルトや
ミトラ、
ディサイファあたりが好位に続き、これを見る形で
ダノンジェラートと
サングレアル。単勝10倍台までの馬はおおむね中団から前につけ、
どの馬にもチャンスがありそうな展開で4コーナーを通過した。
そして直線、逃げる
マイネルミラノは手応え十分。そして我が(?)
パッションダンスも渋太く脚を伸ばし、
デウスウルトの追撃さえしのげれば、もしかしたら当たるかも、と思ったらまだまだ残り300m。いい加減に慣れてきそうなものだが、先行馬を買っているとどうも旧・中京のイメージで期待して見てしまう。
しかし新コース、この直線なら多少の
不利やら
ロスがあっても、脚さえあれば取り返せるもの。坂の途中では前が壁になっていた
ディサイファが外に持ち出したのが、ちょうどこの残り300mだった。
昨秋の天皇賞では、やはり前が詰まり気味になり、最後に盛り返したものの0秒6差の⑫着に敗退したが、G1ではなくG3となれば話は別。しっかりと
デウスウルトや
マイネルミラノを差し切り(あと
パッションダンスも)、昨年の
エプソムC以来となる
重賞2勝目となった。
しかしどうも
ディサイファは
好凡走がそれぞれ続くタイプで、デビューからの
7戦中6戦で馬券圏内に好走した後、
4戦連続で⑤着以下。その後は一昨年5月から昨年6月まで
11戦中10戦で馬券に絡み、
昨秋からの4戦が再び馬券圏外。そしてここにきて
①着と、また
好走期に入ってきそうな気配がある。
半兄
アドマイヤタイシはG3で
5連続②着と好走が続く一方で勝ち切れなかったが、こちらは重賞をしっかり勝っている点は好印象。思い返せば
グラスワンダー(母の従兄弟)も、勝ちまくった間と最後には
馬券圏外が連続しており、血統的に走るときは走るとはっきりしている面もあるのだろうか。
そう考えると、冒頭に触れた
「なんとなく秋を見据えた一戦」という視点ではなく、勢いのあるうちにG1に再挑戦して欲しいもの。
重賞2勝目を挙げ、これからさらにG3という立場でもないだけに、この勢いで
安田記念に参戦して
「実はマイル適性ありました」なんてことにはならないだろうか。もちろん
宝塚記念で2200mを克服してくれてもいいが、いずれにせよ、
強敵相手の戦いを近いうちにまた見たい。
一方、その
ディサイファに差し切られてしまった
デウスウルトは、すでに7歳だが2年の休養があり、キャリアは21戦。重賞初挑戦の
チャレンジCから
②③②着で、前走の
中山金杯にしても
ラブリーデイ、
ロゴタイプを相手にしての③着だけに、まだまだチャンスは十分にありそうだ。