淀みない流れで、オークス実績馬の争いになった
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
ハンデが発表された時点でのトップハンデ馬は
ケイアイエレガント(56kg)だったが、同馬は捻挫のために
回避。54kgを背負う馬がトップハンデとなり、そのうちの1頭だった
スイートサルサも左肩ハ行で取消したため、今回のトップハンデ馬は4頭となった。
アイスフォーリス、
エバーブロッサム、
バウンスシャッセ、
ブランネージュだ。
この4頭には、
ある共通点があった。いずれも
オークスで掲示板に載っていたのだ。6歳馬
アイスフォーリスは3年前に
ジェンティルドンナが制した
オークスで③着に入り、5歳馬
エバーブロッサムは一昨年に
メイショウマンボが優勝した時の②着。そして、
バウンスシャッセと
ブランネージュは昨年に③着(
バウンスシャッセ)と⑤着(
ブランネージュ)になっている。
3歳春に実績を残した馬が
重めのハンデを課せられる形になり、レースでは
オークスで③着に好走した2頭(
バウンスシャッセ、
アイスフォーリス)がクビ差の接戦を演じた。
1000m通過が59秒2という淀みない流れになり、
底力を問われるレースとなったからだろう。
バウンスシャッセは好走と凡走の差が激しいタイプだが、前走の
愛知杯⑧着は、着順よりもその内容が気になるものだった。
道悪馬場だと成績が良くない馬で、
重馬場が合わなかった面があるのだろうが、道中で終始
行きたがる面が見られたからだ。
馬場が緩いと下を気にして、むしろ折り合いが付きやすくなる馬がいるものだが、
バウンスシャッセはそうはならず、ずっと
行きたがっていた。キャリアを重ねて
掛かりやすくなってきているのでは?と思わざるを得ない内容だった。
ひと息入れられて(今回は約3ヶ月ぶり)、今回は
落ち着いて臨めるかが焦点と思われたが、その点、
淀みなく流れたのは幸運だった。折り合い上手の
田辺騎手が後方で折り合わせて、外差しが利く馬場も読み切って外から追い込んできた。すべてが噛み合ったし、さすがの
藤沢和厩舎の仕事ぶりだったとも言える。
思えば
オークスでは、直線で前が壁になりながら
ヌーヴォレコルトや
ハープスターと0秒1差の接戦をした馬で、
実力があるのは誰もが認めるところ。後にその戦績を振り返った時、
「中山牝馬Sを勝った時はなんでこんなにハンデが軽かったんだ?」と思われるかもしれない。
バウンスシャッセはそれくらいの実力がある馬だから、
オークスで接戦を演じた2頭(
ヌーヴォレコルト、
ハープスター)を再び
“ライバル”と呼べるように、今後も
落ち着いて力を付けていってほしいものだ。
クビ差の②着となった
アイスフォーリスは今回が
引退レースで、直線入口では前がガバッと開いてビクトリーロードができたかと思われたが……すんでのところで
タイトルは手にできなかった。キャリア32戦目で、今回が8度目の②着だった。
父の
ステイゴールドはキャリア50戦目での引退レース(
香港ヴァーズ)で初の
G1タイトルを獲得したので、
アイスフォーリスの
サンデーサラブレッドクラブでは
父と似た引退レースになることを望んでいたようだが、惜しくも叶わなかった。それでも、
アイスフォーリスは戦績的にはいちばん
お父さん似だったようにも思う。
ステイゴールドが
香港ヴァーズを制したのは7歳12月で、
2歳~6歳3月では36戦して[3.12.8.13]という成績だった。初の重賞タイトル(
目黒記念)を獲得したのは6歳5月で、今回の
アイスフォーリスと同じ6歳3月時点では重賞未勝利(②着が7度あった)だった。
アイスフォーリスは
[3.8.1.20]という成績で現役競走馬を終えることになったので、お父さんと似ているなあと感じたのだ。
アイスフォーリスは
フローラS②着、
オークス③着と早くから活躍していたが、6歳となった今年はレコード決着となった
中山金杯で⑤着に入り、今回も僅差の②着で、ここへきての
成長力が感じられる。
ステイゴールドと同じようにここからさらに強くなるかも……とも思わせられるが、6歳3月での引退は
クラブの規定なので仕方ありませんね。
いや、むしろ、
ステイゴールドは現役競走馬の頃よりも
種牡馬となってからさらに輝きを増した印象があったから、
アイスフォーリスも良い仔を産んで
名繁殖牝馬になるかもしれない。いいお母さんになってください。
それにしても……
中山牝馬Sがこんなに堅く収まるなんて、ある意味、
悲しいです(笑)。今回は、3番人気→4番人気→5番人気という順の決着で、調べてみると、
中山牝馬Sの③着以内が1~5番人気で占められたのは02年以来で、
13年ぶり。
02年の
中山牝馬Sは①着
ダイヤモンドビコー(55kg)→②着
ティコティコタック(56.5kg)→③着
レディパステル(55.5kg)という、重ハンデの3頭が上位を独占した年で、1000m通過が
57秒0という超ハイペースだった。
今年、1000mの通過ラップを見た時は、速いペースだったから
楽しいことが起きるぞ!とほくそ笑んだのだが、
牝馬限定重賞だと、ペースが速くなると実力馬が上位を占めて、
穴馬の台頭余地が狭められてしまうのかもしれませんね。来年は
ほどほどのペースを希望します……。