M.デムーロ騎手の“夢”に向けて、今年は最大のチャンス
文/編集部(T)、写真/川井博
「17番クイーンズリング、-20kgで444kg」。これが発表された時、
クイーンズリングをすでに買っていた人、買うと決めていた人、消していた人でさえも、
「おっ!?」と思ったのではないだろうか。
サラブレのツイッター(アカウントは
@sarabure_ebです!)では重賞の馬体重についてのツイートをしているが、
フィリーズレビューの馬体重についてのツイートは、
通常よりも多くリツイートしていただいたことでもそれは分かる。
自分としても頭の中に
「?」が渦巻いて、この事実を受け入れるのにひと苦労。馬体重が大きく減った時、ポジティブな理由はおもに
「元々太かったのが絞れた」、ネガティブな理由は
「カイ食いが悪い」、
「夏バテ」、
「体調が良くない」などがある。果たしてどっちか。
考えても分かるはずもなく、
「3歳の春といえば、人間でいうとちょうど10代くらい。女の子だし、ダイエットしたくなるものか……」などとくだらないことを考えたほどだ(笑)。
馬体減の理由はどうあれ、
この馬体重でクイーンズリングは勝った。今回はこれまでの2戦とは違って後方に控える形となったが、勝負所で大外を回って差を詰め、直線で一気に差し切る完勝。最後は
M.デムーロ騎手が手綱を抑える余裕を見せ、他馬とは
レベルの差を感じさせた。
勝ってしまうと、20kg減の理由はどうなってもポジティブなものになる。これまでが太かったのだとしたら、
「絞れたのだからこれから本領発揮」となるし、今回体調が良くなかったのだとしたら、
「そんな状態でも勝つんだから相当強い」となる。人間とは現金なものです(笑)。
また、今回の勝利はこれまでのデータを覆すものでもあった。
クイーンズリングと同じ
マンハッタンカフェ牝馬で、
きさらぎ賞を勝った
ルージュバックの時に触れたが、先週までで
マンハッタンカフェ牝馬は芝1600m以下の重賞で[0.3.7.53]。1400mはおろか、1600mですら勝っていなかった。
ルージュバック、
クイーンズリングはともに
桜花賞を目指すといわれている。この勝利で
ルージュバックの不安点も同時に払拭することになったのはある意味皮肉だが、
阪神JF勝ち馬
ショウナンアデラが戦線離脱した今、この
マンハッタンカフェ産駒2頭は堂々と桜花賞の主役を務めることになるはずだ。
ただ、
フィリーズレビューは桜花賞に繋がりづらい重賞というイメージがある。実際、前身の
4歳牝馬特別時代を含め、90年以降に
フィリーズレビュー~
桜花賞を連勝したのは97年の
キョウエイマーチ、05年の
ラインクラフトしかいない。
ただ、
クイーンズリングはデビュー戦が芝1800m、前走が芝1600mで勝ってきており、芝1400mは今回が初だった。90年以降の
フィリーズレビュー勝ち馬のうち、すでに1800mを勝っていた馬は90年の
エイシンサニーのみ。その
エイシンサニーは
桜花賞で4着、その後
オークスを制している。
「フィリーズレビューはスプリント寄りの傾向が強いレース」とよく言われるが、だからこそより
長めの距離に適性があると思われるクイーンズリングが勝ち切ったことの意味は大きいのではないだろうか。
桜花賞の前哨戦は次週の
フラワーCを残しているが、現時点で
桜花賞の勢力図はあらかた見えてきた。
桜花賞は
ディープインパクト産駒が4連覇中だが、
ショウナンアデラの離脱で
ディープインパクト牝馬の重賞勝ち馬は現時点でいなくなった。
アネモネSで②着までを占めたディープインパクト産駒2頭(
テンダリーヴォイス、
メイショウメイゲツ)の存在はあるが、今年は久しぶりに
“ディープインパクト産駒が中心にならない”桜花賞となりそうだ。
M.デムーロ騎手はレース後のインタビューで
「桜花賞を勝つのは夢」と語った。同騎手がもっとも
桜花賞制覇に近づいたのは13年で、
レッドオーヴァルを②着に導いている。
もしかしたら、その時に勝ったのが弟の
C.デムーロ騎手(
アユサン)だったことも
「勝ちたい」と思わせる理由かも知れない。その夢が今年叶うかどうか、ディープインパクト産駒の有力馬が不在になりそうな今年は、
最大のチャンスになりそうだ。