今年は少頭数のスローペースばかりを経て、皐月賞のゲートが開くことに…
文/編集部(M)、写真/森鷹史
3歳限定の
芝OP戦は、
牡馬クラシック路線に関して見ると、今年は
頭数がさっぱり揃っていない。先週の
弥生賞は11頭立てで、今週の
スプリングSは12頭立て。この2レースがともに12頭立て以下となったのは、
94年以来21年ぶりのことだ。
今週末の
フラワーCまで、
牝馬限定のOP戦は8レースが行われ、そのうち7レースが14頭立て以上だ(例外の
エルフィンSも13頭立て)。
短距離路線もそれなりに揃っていて、1400m以下の競走は
クロッカスSと
ファルコンSで、前者は14頭立て、後者は18頭立てで行われた。
これらを除く、つまり、
牡牝混合の芝1600m以上のOP戦がどのような頭数で行われているかというと、次の通りです。
【2015年、3歳限定の芝1600m以上のOP競走(牝馬限定は除く)】
| 月日 |
レース名 |
頭数 |
| 3月22日 |
スプリングS |
12頭 |
| 3月21日 |
若葉S |
8頭 |
| 3月8日 |
弥生賞 |
11頭 |
| 3月1日 |
すみれS |
9頭 |
| 2月28日 |
アーリントンC |
12頭 |
| 2月15日 |
共同通信杯 |
12頭 |
| 2月8日 |
きさらぎ賞 |
8頭 |
| 1月24日 |
若駒S |
7頭 |
| 1月18日 |
京成杯 |
17頭 |
| 1月11日 |
シンザン記念 |
12頭 |
| 1月4日 |
ジュニアC |
9頭 |
11レースのうち、13頭立て以上となったのは
京成杯(17頭)だけ。
これだけ頭数が揃わないと、当然のように
スローペースのレースばかりで、なんと上記の11レースはすべて
1000m通過が60秒0以上だ。1800m以上のレースでは、辛うじて
共同通信杯が1000m通過60秒0となったものの、それ以外のレースは
61秒0すら切っていない。今回の
スプリングSもまったくペースは上がらず、1000m通過は62秒6だった。
今年の
スプリングSは、
中山競馬場が初めてという馬も複数いて、いかにも
トライアルらしい流れで、最後まで
トライアルらしいレースになった。1枠1番の
キタサンブラックは、鞍上の
北村宏騎手曰く
「飛びが大きい」とのことで、小脚を使ってロスなく立ち回って……という表現は似つかわしいが、結果的に飛びが大きいながらも
内目をのびのびと走れて押し切ってみせた。
キタサンブラックはこれで無傷の3連勝で、普通なら
皐月賞への有力馬出現!と盛り上がっても良さそうなのだが……どうもそのような雰囲気が感じられない。むしろ
「リアルスティールは初の中山競馬場でも良いレースをした」という声が多方面から聞かれ、どっちが勝ち馬なんだか分からない状況だ。
今年、芝1600m以上の牡牝混合のOP戦が少頭数ばかりであることを前述したが、それにも関わらず、実は
重賞に限ると1番人気馬がほとんど人気に応えていない側面もある。
該当する重賞は6レースで、そのうち1番人気で勝利したのは
きさらぎ賞の
ルージュバックだけ。
男馬は1番人気になるとことごとく負けていて、盛り上がろうとしても水を浴びせられて
プシューッとされてしまっている。
ちなみに、
弥生賞と
スプリングSがどちらも12頭立て以下となったのは
94年以来と書いたが、その94年は、
スプリングSを単勝1.2倍の
ナリタブライアンが3馬身半差で圧勝してみせた。同馬のその後の活躍や
3歳クラシックの盛り上がりはご存知の通り。
いや、もちろん、
ナリタブライアン級の馬が出現することが難しいのはよく分かっているが……今年の状況では何に注目して
皐月賞を見たら良いのか、どうも定まらない。頭数が揃わず、
スローペースのレースばかりを経て、いきなり
フルゲートでの皐月賞のゲートが開くわけだ。
予想のし甲斐があると言えば聞こえはいいが、果たして
手に汗を握るようなレースになるのか……。
プロ野球は現在
オープン戦の真っ最中だが、競馬の
トライアルも、プロ野球の
オープン戦を見るような気分で接するべきなんでしょうかねぇ……? 少頭数のレースは馬券の売上減少にも直結するので、個人的には、主催者の
JRAは今年の要因を調査して、
対策を講じた方がいいように思います。
今年の
スプリングSを終えて、見どころがあったと言えるのは、
ディープインパクト産駒(
リアルスティール、
ダノンプラチナ)が②~③着に敗れて、
ブラックタイド産駒(
キタサンブラック)が勝利したことだろう。
ブラックタイド産駒は馬場を1周するO型コースよりも、半周するU型コースの方が上級条件では勝つことが多かったので、
キタサンブラックが押し切ったことには
少なからず驚いたが、それ以上に
ディープインパクト産駒が突き抜けられず、やはり
中山芝1800m重賞は
ディープインパクト産駒にとって
鬼門なんだなとの印象を強く持った(このレースを終えて[1.4.3.27])。
ご存知のように、
ブラックタイドと
ディープインパクトは
全兄弟で、
血統構成はまったく同じ。それでも、
中山芝1800mの重賞で突き抜けるのは
ディープインパクト産駒ではなく、
ブラックタイド産駒であるところに血統の面白さが感じられた。
ブラックタイドは現役時代に
スプリングS(04年)を勝っているが、
ディープインパクトは2000mを切る距離には出走歴がない。
ディープインパクトは馬体重が450kgを切るぐらいでレースを走っていたが、
ブラックタイドは490kg前後だった。馬格も違えば、
産駒に遺伝させている資質にも違いがあるということなのだろう。