異質の勝ちっぷりはそれなりの評価が必要かも
文/編集部(W)、写真/稲葉訓也
毎日杯が阪神芝外1800mで行われるようになったのは07年から。その過去8年を振り返ると、
父サンデー系が
[7.4.6.42]、その他の父系が
[1.4.2.45]となっていて、血統的には
父サンデー系が圧倒的な強さを誇っている。また、上がりがメンバー中2位以内だった馬が
[8.2.4.3]、メンバー中3位以下だった馬が
[0.6.4.83]で、
「速い上がりを使える=好走率が高い」という方程式も成り立つ。
そんなレース傾向を踏まえると、
ディープインパクト産駒が11年以降で
[2.2.3.6](複勝率53.8%)で、
4年すべてで馬券圏内入りしていたのも合点がいく。そりゃあ、
キズナ・クラスなら大外一気で3馬身突き抜けちゃうというもの。
今年、
ディープインパクト産駒は
アルバートドック、
アンビシャス、
グリュイエール、
ソールインパクト、
ペガサスボス。これまでの好走率で言えば、5頭いれば2頭セットで馬券圏内入りしてもまったく不思議ない状況だった。
ところが、馬券圏内入りできたのは1番人気で③着だった
アンビシャスだけ。馬群の外で掛かり気味に追走していたように、
距離ロスと
道中での消耗を考えると、0秒1差の③着は
負けて強しの印象ながら、結果的には前(
ミュゼエイリアン)を捕まえ切れず、後ろから差される(
ダノンリバティ)形になってしまった。
その
ディープインパクト産駒の大将格を押し退けて連対圏内入りしたのが、2番手から粘り込んだ
スクリーンヒーロー産駒ミュゼエイリアン、
父サンデー系のお株を奪うような鋭い決め手(メンバー中最速の上がり34秒0)を発揮して鋭伸した
キングカメハメハ産駒ダノンリバティだった。
ミュゼエイリアンは7番人気だったが、
新馬戦では
ココロノアイを下して圧勝し、
百日草特別は
ルージュバック、
ベルーフというのちの重賞ウイナーに次ぐ③着。重賞でも
札幌2歳S④着、
共同通信杯④着(③着
アンビシャスと0秒2差)と健闘していて、強敵相手に揉まれてきた経験が活きた面もあるだろう。
また、2番手追走から直線早め先頭という積極的な騎乗を見せた
川田騎手の手綱捌きも見逃せない。この舞台で
父サンデー系を相手に決め脚勝負では分が悪いと踏んだのかどうか。いずれにしても、後続の追撃を凌ぎ切ったのだから、今回の
積極策は正解だったと言える。
ミュゼエイリアンの上がりは34秒6ながらメンバー中10位。メンバー中2位以内の馬が阪神芝外1800mで行われるようになってから
8連勝中だったことを考えると、
エイリアンという馬名に相応しく、まさしく
“異星人”の勝ち馬だろう。
阪神芝外1800m重賞は逃げ切りが困難ということで知られていて、これまで逃げ切ったのは
07年ローズSの
ダイワスカーレットしかいない。ただ、4角2番手以内としても
12年ローズSの
ジェンティルドンナが加わるだけで、4角2番手以内からの押し切りもまた困難だ。これまでG1・4勝馬とG1・7勝馬しか成し得ていないのだから。
「阪神芝外1800m重賞で4角2番手以内から押し切り=G1馬」とまでは言い切れないものの、今回の
ミュゼエイリアンのレースぶりは
それなりの評価をする必要があるのではないだろうか。
『メインレースの考え方』で書かれていたように、過去8年の
毎日杯出走馬からは
ディープスカイ(
ダービー、
NHKマイルC)、
キズナ(
ダービー)、
ダノンシャンティ(
NHKマイルC)、
ストロングリターン(
安田記念)、
スピルバーグ(
天皇賞・秋)がG1馬となっているが、いずれも勝っているのは東京芝G1。
ミュゼエイリアンはおばに
オークス馬エリンコートがいて、
父スクリーンヒーロー×
母父エルコンドルパサーという血統構成だから、もろもろを勘案すると東京芝2400mはピッタリという印象だが…長い目で見守っていきたいと思う。
一方、
ダノンリバティは
つばき賞で先行したら切れる
ディープインパクト産駒(
キロハナ)に交わされて②着、今回は溜めて良い脚を使ったら先行した
ミュゼエイリアンにハナ差届かず②着で、なんとも惜しい競馬が続いている。
現状は芝にも高い適性を見せているが、
スカーレット一族の
父ミスプロ系と言えば、G1(Jpn1)・9勝の
ヴァーミリアンを筆頭に
キングスエンブレム、
サカラート、
ソリタリーキングとダートの上級馬が目白押し。
ダノンリバティは500kg前後の馬体からもダート適性が高そうで、こちらも長い目で見守りたい1頭だ。