ラキシスは完勝、キズナは「完全復活」が待たれる
文/浅田知広、写真/森鷹史
イスラボニータの
回避がありながら、それでもG1馬6頭という
豪華メンバーが集結した今年の
大阪杯。
春の天皇賞へ向けたステップレースとしては距離の差が大きすぎる一戦だが、近年はその
春の天皇賞が距離のせいで少々嫌われる傾向にあり、逆に
大阪杯は中距離戦であることで存在意義を増している印象だ。
とはいえ。いくら京都の上がりの速い馬場が苦手だといっても、
阪神大賞典3連覇を飾った
ゴールドシップが
春の天皇賞を
回避予定との報は、長距離戦好きとしては残念なことこの上ない。
その一方で、
昨春の天皇賞1番人気・
キズナは今年も
大阪杯から
春の天皇賞へ。前走の
京都記念③着はこの馬としては物足りないものの、
骨折による長期休養明けとしては悪くない競馬だった。これをひと叩きされ、連覇を狙う今回は単勝1.4倍の断然人気。
ディープインパクト産駒だが、フランスで重馬場の
ニエル賞を制した実績などから、不良馬場も対応できるとの大方の予想だ。
しかし、なにしろほかにもG1馬は5頭。中でも同距離・2000mのG1を制している
スピルバーグ(
天皇賞・秋)と
ロゴタイプ(
皐月賞)が2、3番人気。そして重馬場の
エリザベス女王杯②着がある
ラキシス、そして同じく重馬場の
小倉大賞典を勝った
カレンブラックヒルが4、5番人気と、おおむね距離・馬場適性の順となった。ただ、2番人気の
スピルバーグでも単勝7.4倍。
「G1馬6頭集結」と言われながらも、
ファンの注目はほぼ
キズナ1頭に集まった一戦だった。
そんなレースで先手を奪ったのは、12年に重馬場の
若駒Sを逃げ切った
ゼロスで、後続を大きく離して1000m通過は61秒1。重馬場だった第8レース(1000万)の同じ2000m戦は62秒1で前残り気味の結果だったが、そこから不良馬場になってのG2戦、正直速いんだか遅いんだかまったくわからん、という流れだ。
ただ、わからん上に人気薄(
ゼロスは11番人気)なら、思い切った競馬をしてくれた方がチャンスはあるだろうし、見ている方もおもしろい。さらに、
キズナと
スピルバーグに加えて
ラキシスが後方2~4番手、逆に
カレンブラックヒルと
ロゴタイプは前々の2~3番手と、人気どころは大きく位置取りが分かれた。
春の天皇賞に比べれば3分の2以下、2分少々で決着する2000m戦だが、多少なりとも長距離戦っぽい要素を含んだレース展開だった。
そして迎えた4コーナー。楽しませてもらった
ゼロスは後続に飲み込まれてしまったが、これを交わした
カレンブラックヒルは
小倉大賞典で強気な攻めで結果を出した馬である。後方で動きはじめた
キズナに対し、どんな抵抗を見せるのか、という態勢だった。
しかし、結果的にはこの馬場では離れた2番手でも速かったのか。「前」の人気馬
カレンブラックヒルと
ロゴタイプは失速、かわって
キズナがあっさり前を捕らえて
連覇達成かと思われた。
ところが、ここからが
ひと波乱。直線に入って
キズナの内から馬体を併せていった
ラキシスが、
キズナを「競り落とす」と言うほどの苦すらなく交わし去り、リードを半馬身、そして1馬身。歓声が少々のどよめきのようなものに変わる中、最後は
2馬身差をつける完勝劇だ。
ルメール騎手にとってJRA所属騎手としての初勝利はG2、それも
キズナを下す
金星となった。
ラキシスは先に「重馬場の
エリザベス女王杯②着」と書いたが、当時は上がりの3ハロンすべて11秒台。果たしてこれを「道悪実績」とみなして良いのか疑問だったが、今回はラスト1ハロン12秒8とかかる中で完勝と、どうやら疑問を挟む余地などなかったようだ。
昨春の
ヴィクトリアマイルでは
⑮着大敗を喫した
ラキシス。このメンバーの阪神で勝利を収めたことで、今年の春は
宝塚記念が最大の目標になるだろうか。暮れの
グランプリ・有馬記念では先行して見せ場こそ作ったものの、先輩牝馬・
ジェンティルドンナの⑥着に敗退。春のグランプリでは当然、それ以上の結果が期待される。
一方、同じ「
ディープインパクト×
ストームキャット牝馬」の
ラキシスに敗れてしまった
キズナ。前述の通り、
春の天皇賞が目標になるが、どうも
昨春の天皇賞から、差し切れそうな勢いを見せながら最後に止まっているのが気にかかる。なにせ
ダービーの印象が強烈なスターホース。故障もあったとはいえ、5歳を迎えてG1勝ちがひとついうのも寂しい状況になりつつあるだけに、そろそろ
ファンに
「完全復活」をアピールする勝利が見たいところだ。