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本番で持てる力を発揮して好勝負するのは!?
文/浅田知広、写真/森鷹史


なにかとケチをつけられがちな、中山芝1600mのコース形態。昨年はついに、朝日杯FSが阪神外回りへと移動してしまった。しかし中央4場、かつマイルという根幹距離を簡単に減らせるものでもなく、3歳春のオープン・重賞ではジュニアCフェアリーSに、トライアルのアネモネS、そしてこのニュージーランドTと4レースが行われている。

このうち、G1ともっとも強い繋がりがあるのが、このNHKマイルCトライアル・ニュージーランドTだ。本番の東京マイルと前哨戦の中山マイル、距離が同じというだけで……と思いがちだが、過去10年のNHKマイルCで、前走ニュージーランドT出走馬[5.2.3.58]。阪神代替の11年を除く「中山の」ニュージーランドTなら9回で[4.2.2.53]になるが、いずれにせよ、NHKマイルC優勝馬の半数ほどはニュージーランドT組なのである。加えて、この連対馬6頭中5頭はニュージーランドT③着以内馬だ。

そんなことを加味すれば、中山マイル2戦2勝で1番人気に推されたグランシルクを買っていいのかどうなのか。コース実績より、NHKマイルCに繋がりそうな馬を買ったほうがいいんじゃないか。いや、この馬とて繋がらないとも限らない、などと考えてレースを迎えたら、グランシルクはコース適性がどうのという以前の(と、そのときは思った)大出遅れ。さらに、2番人気のアルマワイオリ結構な出遅れを喫した上に、課題の折り合いに苦労しており、なにやら大波乱の雰囲気も漂う序盤のレース展開だった。

その一方で、1枠1番から好ダッシュを決めたのはしんがり16番人気、そして唯一の牝馬・アンブリカルである。前走の芝1200mで逃げ切り勝ちを決めたスピードを遺憾なく発揮して、3角手前でリードを3馬身ほどとっていた。

その逃げたアンブリカル(umbilical)、馬名の意味は「へそ」とのこと。今回はレース展開の肝になったと同時に、レース結果もへそを中心にぐるっとほぼ半回転することになってしまった。

4角では、前方に位置した人気どころ、3番人気のマテンロウハピネスや4番人気のヤングマンパワー、そして6番人気のアクティブミノルあたりが前に並びかけたものの、結果的にこれは前を深追いしすぎ。さらに直線前半では好位のインから8番人気のナイトフォックスがスパッと抜け出したのだが、これも終わってみれば反応が素晴らしく良すぎての④着敗退だった。

そのナイトフォックスを目標に、外からまず襲いかかったのは7番人気のヤマカツエース。そして大外からは、この小回り中山であの出遅れは厳しいかと思われた、グランシルクアルマワイオリが追い込んできたのである。最後はヤマカツエースグランシルクの追撃を抑えたため、序盤の位置取りから完全に「半回転」するには至らなかったものの、見事な差し-追い込み決着の一戦となった。

優勝したヤマカツエースの前走・ファルコンSは、先行馬2頭が①②着を占めた中、内から馬群を縫って追い込みハナ+ハナ差の③着好走。マイル戦は過去④⑥着だったが、前々走のアーリントンC(⑥着)は瞬発力勝負でやや見劣っただけで、ヤングマンパワーアルマワイオリとは0秒2差だった。

今回は、前走のファルコンSに続く稍重馬場に加え、抜け出すタイミングもばっちりで見事に雪辱。本番・NHKマイルCでは東京の馬場がカギになるが、ひと雨あるようならもちろん有力な候補になるだろう。

②着のグランシルクは展開の助けもあったとはいえ、よくぞあれほどの出遅れからここまで来た、という一戦だった。そして③着のアルマワイオリは、折り合い面の不安が解消されないままのレース運びでこの結果。さすがに朝日杯FS②着の実力馬である。

冒頭にも触れたように、このレースをステップにNHKマイルCで連対できるのはほぼ上位馬のみ。そして09年以降は、昨年(⑥着が最高)を除き、この組の連対馬は毎年1頭である。今年の上位3頭も、それぞれ課題を抱えつつの優先出走権獲得。この中から、本番で持てる力を発揮して好勝負するのはどの馬になるだろうか。