呪縛を解く勝利が土曜日1Rにあった
文/編集部(M)、写真/川井博
今春の
東京競馬は
内田騎手で開幕した。と言っても、
フローラSを
シングウィズジョイで制したからではなく、文字通り、最初のレース(土曜日・25日の1R)を
内田騎手の騎乗馬
ゼンザイが勝利したからだ。この勝利は
内田騎手にとって大きな意味があったのではないかと思う。
ゼンザイは穴ぐさ💨に指名していたので、どんなレースをするか注目していたが、そのレースぶりを見て、
内田騎手は気合入ってるぞと感じていた。
ゼンザイは前走で追い込む競馬を見せていて、初の東京コースに替わる今回も
末脚を伸ばすもんだと思っていた。ところが、ゲートが開くと
内田騎手は押して先手を主張し、ハナを奪った。そして、直線に向いても他馬に交わさせず、
押し切って勝利を挙げた。
単なる牝馬限定戦の未勝利勝ちと言ってしまえばそれまでだが、
内田騎手にとっては
呪縛を解く1勝だったんじゃないかと思った。というのも、この勝利は
内田騎手にとって、
今年の東京競馬場での最初の勝ち鞍だったからだ。
今年、
内田騎手は先週までに14勝を挙げていたが、これはすべて
東京競馬場以外でのものだった(中山で12勝、京都と阪神で1勝ずつ)。1回東京開催(1月31日~2月22日)では、1日目から8日目まで毎日騎乗したものの、勝ち鞍を挙げられずにいた。
のべ50頭に騎乗して0勝だったから、さすがに物足りないものだったろう。ただ、
②着が8回、
③着が9回あり、その複勝率は
34.0%だった。これは1回中山開催(複勝率26.5%)よりも、9勝を挙げた2~3回中山開催(複勝率19.8%)よりも高い。ついでに言えば、その複勝回収率は
136%で、いかに穴馬を激走させていたかが分かる。
激走が多かったものの勝つまでには至らず、スランプというより、
勝ち運に見放された感じだった。勝利を目指すジョッキーにとって、これは気になることだったのではないかと思う。
内田騎手はこれを
開幕初日のレースで払拭したわけだ。
気合の逃げ切り勝ちで、鬼気迫るその直線での追いっぷりには、東京府中に棲む
惜敗の神様(そんなものがいるのかどうかは知りませんが・笑)も逃げ出さざるを得なかったんじゃないかと思う。
この勝利の後、
内田騎手は5Rでも勝利し(
キャンベルジュニア)、
フローラS(
シングウィズジョイ)を含めて土日で3勝をマークした。土日合わせての成績は
[3.5.1.14]で、8連対というのは今週末の東京競馬で
連対数がいちばん多いジョッキーだった(2位は
武豊騎手と
田辺騎手の5連対)。
内田騎手は
フローラSでの成績が良く、実は今回で
4度目の優勝になる。08年
レッドアゲート、09年
ディアジーナ、13年
デニムアンドルビーに続く勝利で、このレース4勝というのは、かつての
4歳牝馬特別も含めれば、
大崎昭一元騎手と並ぶ
最多勝になる。ちなみに、3勝には、
岡部幸雄、
河内洋、
郷原洋行、
小島太という名ジョッキーの名前が並ぶ。
最多勝で4勝目なので、
皐月賞での
M.デムーロ騎手と同じように
「4勝目」という表現をしながらゴールしても良かったほどだ。今回はクビ+クビ差だったので、そこまでの余裕はなかったのでしょうけれど……。
内田騎手の
フローラS4勝は、いずれも
4角5番手以内からの押し切りで成し遂げられている。
デニムアンドルビーは3~4コーナーで外をマクるように動いて差し切ったので、4角5番手というのはちょっと違うような気もするが、いずれにしても
早めに動いて押し切るケースが多く、
開幕週の馬場コンディションとマッチする面があるのだろうと思う。
今年の
フローラSは1000m通過が
62秒6というスローだったが、それを作り出したのは逃げた
グリシーヌシチーというよりは、2番手でペースをコントロールした
シングウィズジョイだろう。
内田騎手が馬場とペース配分を読めていたから、この勝利につながったように見えた。
4週後の
オークスには、
桜花賞組や
忘れな草賞組も参戦し、激しい闘いとなることだろう。特に
桜花賞は超スローになって
不完全燃焼となった馬がたくさん出たので、
捲土重来を期す陣営が多いと想像される。
今回の
フローラSを参考にすれば、
オークスでどの陣営&ジョッキーに
気合が入っているか、それを見極めることが重要になってくるのではないだろうか。