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今のマイル戦線なら、今回の上位馬は本番でも侮れないはず
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也


重賞勝ち馬が8頭いるメンバー構成だったが、単勝2.7倍とやや抜けた1番人気に推されたのが重賞未勝利馬フィエロ。昨年のこのレースで②着、マイルCS②着という実績はあったが、勝ち馬を当てる単勝でこれだけの人気を集めたのは、個人的には少し「人気しすぎじゃないかな…?」と思っていた。

とはいえ、過去の傾向を見ると納得せざるを得ない面もあった。ご存じの方も多いかもしれないが、昨年はディープインパクト産駒が京都芝1600mの重賞を席巻していて、6レースが開催されたうち、産駒が出走しなかったデイリー杯2歳Sを除く5レースすべてで勝利した(ちなみに、そのデイリー杯2歳Sは全兄のブラックタイド産駒が勝っている)。

それが、今年になって風向きが変わり、これまでの3レースではまだ勝てていなかった(京都金杯エキストラエンドが4番人気②着、シンザン記念クイーンズターフが5番人気⑧着、京都牝馬Sウリウリが1番人気⑤着、キャトルフィーユが2番人気⑥着)。

ただ、その理由は明白で、これまでの3レースの勝ち時計を昨年と今年で比較すると、以下のようになる(馬場はすべて良馬場)。

  14年 15年 前年比
京都金杯 1.32.5 1.32.8 +0秒3
シンザン記念 1.33.8 1.34.8 +1秒0
京都牝馬S 1.33.0 1.33.9 +0秒9

昨年に比べて、年明けの京都は時計がかなりかかっていた。調べてみると、今年の各レースの開催当日はダートが道悪での開催となっており、湿り気味の馬場にディープインパクト産駒の身上である切れ味を削がれていたのでは、と想像できる。

そして迎えた春の京都開催開幕週。雨もなく馬場状態は良好なことが想像できたが、芝の状態がどうなのか、注目して見ていた。

ひとつの指標として、同コースで開催される土曜のメイン・錦Sのタイムを見ると、昨年が14頭立てで1分32秒6だったのに対し、今年は8頭立てで1分32秒0。展開の違いはあるものの、少頭数にしては時計が速め。ということで、今春の京都は例年通り時計の出る馬場だと推測できた

そうなると、ディープインパクト産駒の切れ味を邪魔するものはもうないのではないか。まだ重賞未勝利のフィエロが1番人気に推されたのは、そう考えた方が多かったのだろう(ちなみに自分もそうでした)。

ところがレースがスタートしてみると、前半600m通過が35秒3で、この馬場としてはかなりスローの部類に入るペース。逃げたサンライズメジャーがそのまま②着に粘り込み、好位にいたレッドアリオンが差し切る結果となった。

一方、フィエロは中団追走から直線で最内を突いて猛然と追い込んだが、先に抜け出した2頭には及ばず③着。エキストラエンドは④着、ヒストリカルは⑫着に敗れ、またもディープインパクト産駒は勝利することができなかった。

勝ち時計は1分32秒6前日の錦Sと比べて0秒6遅かったことからも分かるように、スローの前残りだったと考えて差し支えないだろう。

しかし、これを“展開のアヤ”と片付けていいのだろうか、という気もしている。

特に勝ち馬レッドアリオンは、ここ2戦は先行力を発揮して安定したレースぶりに変わってきているが、デビュー当初から鋭く追い込むレースもあり、逃げて押し切るレースもあり、自在性のあるところを見せていた。

安田記念のメンバーはまだ不透明で、現状ならダービー卿CTを制したモーリス、昨年のマイルCS勝ち馬ダノンシャークなどが人気を集めそうだが、これらは差し馬。メンバー構成によっては、ここでレッドアリオン、サンライズメジャーが発揮した先行力が、本番でも活きる展開になる可能性はありそう。

過去10年の安田記念で、前走がマイラーズCの馬は[0.2.5.30]。ただ、京王杯スプリングCなどを挟むと05年の勝ち馬アサクサエンエン(マイラーズC③着→京王杯スプリングC①着→安田記念①着)などがいるので、一概にマイラーズC組は消し」とは言えないだろう。特に今年のマイル戦線なら、今回の上位組にも十分チャンスはあるはずだ。