ディープインパクト産駒が切れ味勝負に持ち込ませずに勝利した
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
出走馬16頭のうち、
ディープインパクト産駒が4頭(
アルバートドック、
サトノラーゼン、
ジェネラルゴジップ、
ポルトドートウィユ)を数え、同じく4頭の出走馬がいたのが
ハービンジャー産駒(
スワーヴジョージ、
ゼンノブレーメン、
トーセンバジル、
リベレーター)だった。
ディープインパクト産駒を相手にしてハービンジャー産駒がどこまで戦えるか!?というのが、今年の
京都新聞杯の見どころのひとつと言えた。
ディープインパクト産駒の4頭のうち、
ポルトドートウィユ、
サトノラーゼン、
アルバートドックと3頭が6番人気以内に推されたのに対して、
ハービンジャー産駒で6番人気以内となったのは
トーセンバジルだけ。戦前から
ディープインパクト産駒優勢との評価が成されていたわけだが、結果もそのようになった。
上位入線の5頭は
0秒2差以内の接戦だったものの、①~③着となったのはすべて
ディープインパクト産駒(①着
サトノラーゼン、②着
ポルトドートウィユ、③着
アルバートドック)で、
ハービンジャー産駒は
トーセンバジルの④着が最高着順。
ディープインパクト産駒の強さが際立つ結果になった。
ディープインパクト産駒は一昨年の
京都新聞杯を
キズナが制し、その前年も
トーセンホマレボシが勝っていたから、相性が悪い感じはしなかった。しかし、
ハービンジャー産駒もこの舞台ならチャンスがあるかも?と思っていた。
芝2200mの重賞だったからだ。
芝2200mというのは
非根幹距離だけあって、最後の瞬発力勝負というよりも
持続力の勝負になることが多い。事実、過去10年の
京都新聞杯でメンバー中最速の上がりで制したのは13年の
キズナだけで、その他の勝ち馬は
メンバー中2位以下の上がりで優勝していた。切れ味勝負の展開にならなければ、
父サンデー系以外の馬にも台頭の余地があるのではないかと思っていたわけだ。
ハービンジャーは
デインヒル(その父
ダンチヒ)の系統で、言ってみれば
チーフベアハートと同じ系統。
チーフベアハート産駒は
芝2200mを得意にする馬が多かったから、ひょっとしてひょっとするかも?と思ったのだ。
今年は
スピリッツミノルが逃げ、前半の1000mを59秒4で通過し、結局、ゴールするまで
12秒7より遅いラップが一度もないレースになった。上がり4Fがすべて
11秒台(11秒9-11秒4-11秒9-11秒6)で、決め手勝負の馬たちにとっては
簡単なレースではなかったはずだ。
それでも、上位を独占したのは
ディープインパクト産駒だった。それだけ同産駒に
底力があることと、
ディープインパクト産駒と一口に言ってもバラエティに富んだ馬たちが揃っていた証だろう。
過去の
京都新聞杯を制していた
ディープインパクト産駒は母父が
ノーザンダンサー系だったので、今回の
ディープインパクト産駒の中でも、血統的には
ポルトドートウィユ(母父
クロフネ)と
アルバートドック(母父
Unusual Heat)が良さそうに映った。
というか、それ以外の2頭の
ディープインパクト産駒(
サトノラーゼン、
ジェネラルゴジップ)は母父が
ロベルト系で、その配合馬は
芝OPで勝った馬がいなかったので、突き抜けるまではどうか?と思っていた。
前述した通り、
京都新聞杯は
芝2200m重賞で持続力勝負になりやすく、今回も上がり4Fは
11秒台のラップが続いた。母父
ロベルト系の
ディープインパクト産駒はこのような流れが合うかも……とは思っていたが、
サトノラーゼンは見事に流れに乗って押し切ってみせた。
サトノラーゼンの上がり3Fは34秒5で、これは
今回のメンバー中で4位。上がり3Fタイムが1~3位の馬たちが②~④着だったので、ペースも仕掛けるタイミングも見事に合致した印象だった。切れ味勝負には持ち込ませず、
肉を切らせて骨を断つといったレースぶりに見えた。
サトノラーゼンはこれで[3.3.3.0]で、まだ馬券圏外になったことがない堅実派だが、
メンバー中最速の上がりを計時したこともなく、
ダービーでもどれだけ
持続力勝負に持ち込めるかがポイントになるのではないか。
ちなみに、90年以降の
ダービーで、それまで
メンバー中最速の上がりを計時したことがなく優勝した馬が
2頭いるが、それは何か、分かるだろうか?
正解は、90年の
アイネスフウジンと97年の
サニーブライアン。どちらもハナを奪い、レース上がりを35~36秒にしての
逃げ切り勝ちだった。
サトノラーゼンはこれまでに一度も逃げたことはないので、
ダービーにおいても番手を追走しそうだが、逃げ馬を突いて
ペースを落とさせないぐらいの戦法を採ってみてはいかがでしょうか?
サトノラーゼンの母
トゥーピーは、父
Intikhab(ロベルト系)×母父
カーリアン(ニジンスキー系)で、
Intikhabの産駒には
エリザベス女王杯を連覇した
スノーフェアリーがいる。
ニジンスキーの血も持っていてスタミナはありそうだから、
ダービーにおける
サトノラーゼンは、やはり肉を切らせて骨を断つレースをできるかどうかではないだろうか。
今回、
ハービンジャー産駒で最先着となった
トーセンバジルは、
メンバー中最速の上がり(34秒0)を計時していたので、負けて強しの内容ではあったが、賞金を加算することは叶わなかった。
ハービンジャー産駒はこのレースや
プリンシパルSを終えて、芝OPで[1.3.2.33]という結果になっている。
ハービンジャー産駒は、まだ
現3歳世代しか走っていないので、今後に傾向が変わってくる可能性は十分あるだろうが、唯一の芝OP勝ちが
中山競馬場(
京成杯・
ベルーフ)なので、現時点では小回りで
上がりのかかるコースの方が合う印象がある。
ディープインパクト産駒は芝重賞での勝率が低いのが
中山、
福島、
函館の3場で、いずれも
小回りコースだ。
ディープインパクト産駒vs
ハービンジャー産駒の次の焦点は、
小回りコースでの直接対決の時になるのではないだろうか。