ラブリーデイは宝塚記念でもおもしろい存在になりそう
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
施行時期が変わったり、距離やグレードが変わったり。いろいろと条件変更が激しく、今年で68回目と伝統がありながら、
流浪の重賞という印象もある
鳴尾記念。12年からはこの時期の芝2000m戦、
宝塚記念の前哨戦として行われている。
この3年間を見てみると、12年②着の
ショウナンマイティは
宝塚記念で③着に好走。一昨年は③着の
ダノンバラードが同②着、さらに昨年は④着の
カレンミロティックが同②着と、G3ながらもしっかり前哨戦としての役割を果たしている。また、3頭は
宝塚記念6、5、9番人気で、各年の③着以内馬の中では最低人気。格下に見られがちなG3ということもあり、
穴党には注目のステップレースだ。
そんな
鳴尾記念に今年、駒を進めてきたのは11頭。中でも、連覇を狙う
エアソミュールが1番人気の支持を受けた。昨年の優勝後はG2ばかりで
⑤①③③③着。特に、
毎日王冠を制した後の
天皇賞回避には少々驚かされたが、距離・コースに不安はなく、実力的にも
G3では格上の存在だ。
その対抗格と目されたのは
ラブリーデイ。重賞では好走すれども勝てなかった馬だが、今年に入って同期の
皐月賞馬ロゴタイプや、
ダービー馬キズナを下し、
中山金杯、
京都記念と2連勝。
阪神大賞典、
春の天皇賞は
⑥⑧着に終わったが、中距離に戻り、
宝塚記念へ向けてもうひとつ勢いをつけたい一戦になる。
さらに、昨年の
マイルCS③着馬
グランデッツァに、重賞通用のメドを立てたい
アズマシャトル。そして一昨年の覇者で、
屈腱炎による休養明けとなる
トウケイヘイローあたりが上位人気に推された。
そんなメンバーで先手を奪ったのは、5番人気の
トウケイヘイローで、同型の
メイショウナルトは競らずに2番手。人気どころの
グランデッツァ、
エアソミュール、
ラブリーデイが3~5番手に続き、前はややばらけ気味で前半の1000m通過は59秒5の平均ペースとなった。
レースが動いたのは3コーナー過ぎ。
ラブリーデイ、そして
アズマシャトルが3番手の外まで進出。前の
エアソミュールはこれを見て動き出し、内の
グランデッツァは脚を溜めて4コーナーへ。直線は人気どころの叩き合いになるかと思われた。
しかし直線に向くと、4コーナーで勢いがついていた
ラブリーデイが、楽々と
エアソミュールを競り落として先頭へ。内で距離損なく4コーナーを回った
グランデッツァは前が壁になり、開いてからも鋭い伸びは見られなかった。
終わってみれば、早めに動いた
ラブリーデイが、そのまま突き抜けて
2馬身差の快勝劇。②着には最後方から馬群を縫って追い込んだ
マジェスティハーツ、そして③着には4角大外で
ロスがありながらも盛り返した
アズマシャトルと、差し馬勢が上位を占めた。11頭立てのため派手な展開には見えなかったが、
ラブリーデイが他の先行勢をつぶして差し馬を連れてきた、という
強い競馬だ。
さて、その
ラブリーデイ陣営からは、レース前から
宝塚記念も視野に入れたコメントが出ていたが、この3年、本番で好走しているのは
鳴尾記念②~④着馬だった。もっとも、優勝馬で出走したのは12年の
トゥザグローリー(
宝塚記念⑫着)1頭だけ。その
トゥザグローリーは、
ラブリーデイと同じ
池江泰寿厩舎。今年はその雪辱戦……と思ったが、12年の
宝塚記念を制したのは同厩の
オルフェーヴルだったので、雪辱戦と言うのは違うかもしれない。
ともあれ。
ラブリーデイはこれまで、G1では2~3歳時(12~13年)の
朝日杯FSと
ダービーの⑦着が最高ながら、今年に入ってこれで
重賞3勝目。今回も含め、力でねじ伏せるような走りで結果を残してきた。今年の
宝塚記念には、3連覇を狙う
ゴールドシップなどG1実績馬が多く出走を予定しているが、臆することなく「横綱相撲」の競馬を試みるのが、
ラブリーデイにとって勝利への近道だろう。
今年は
「同期のG1馬を下した」ところからスタートした
ラブリーデイが、半年でG1タイトルを手中にするところまで至れるのか。その
中山金杯後に
「前半の古馬G1なら宝塚記念」と書いたのを思い出したので、ここは責任を持って本番でも馬券を買ってみたくなってきた(まだ買うとは言っていない)。人気はおそらく、過去の
鳴尾記念組の好走馬(5~9番人気)と同じあたり。
ちょっとした好配当狙いには、おもしろい存在になりそうなのは確かだ。