“ハンデ53kg”がこのレースのカギだった
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也
先週の開催から4歳馬のクラス替えが行われ、3歳馬も古馬混合戦に参戦。条件戦なら
「降級馬か、強そうな3歳馬を中心視すればいいんでしょ?」といったような考えで臨めば良さそうにも思う(実際はそうでもありませんね)が、重賞はそうはいかない。
だから余計に難しい(笑)。
そして、ハンデ戦となってからの
マーメイドSはとにかく荒れることで知られている。その理由としては、
3歳馬を含めた勢力図がまだ確定していない時期で、さらにハンデ戦ということもあるのだろう。例に漏れず、今年も3歳馬、重賞実績馬などバラエティに富んだメンバーが集まって、かなり難解な一戦となった。
今年の
トップハンデは56kgの重賞2勝馬バウンスシャッセ。少し離れて54kgで
ウインプリメーラ。1番人気に推された
マリアライト、2番人気
リラヴァティを含め、
53kgで最多の7頭が並ぶハンデ構成となった。
そして、ハナに立ってレースを引っ張ったのはその
リラヴァティで、馬券圏内に入った3頭(①着
シャトーブランシュ、②着
マリアライト、③着
パワースポット)もすべて53kg。結果的に、今回は
ハンデ53kgの馬がレースの中心だったといえるのだろう。
牝馬のハンデ重賞で
「53kg」といえば、皆さんどんな印象を持つだろうか。他馬と比較する必要もあるが、55kgならメンバーの中でも上位、
53~54kgなら強くもなく弱くもなく、53kgは54kgに比べれば少し落ちる?という感じではないだろうか。
だが、実際は
“少し”どころではなく、
この差がかなり大きい。といっても
成績は“落ちる”のではなく、むしろその逆。このレースを含め、05年以降に開催された牝馬限定のハンデ重賞で、ハンデ53kg、54kg、55kgの馬の成績を比較すると、以下のようになる。
| ハンデ |
着度数 |
勝率 |
複勝率 |
| 53kg |
10.6.10.85 |
9.0% |
23.4% |
| 54kg |
2.6.4.61 |
2.7% |
16.4% |
| 55kg |
3.4.3.53 |
4.8% |
15.9% |
実際は56kg以上の馬の方が勝率・複勝率ともに高いのだが、この3つのカテゴリーの中では
53kgの馬の好成績が目立つ。
このレースでも54kgの
ウインプリメーラは直線で一旦完全に抜け出したかに見えたが、最後に失速した(④着)のは上位馬に比べて1kgの差が響いた可能性もありそうだ。
それにしても、
シャトーブランシュは
素人目にも完璧なレース運びに見えた。道中は4角を回るまで後方の最内でコースロスを抑え、直線に入ってから大外に持ち出されると一気に伸び、激しい②着争いを問題にせず差し切った。
追い込み馬の内枠(今回の
シャトーブランシュは1枠2番)といえば、常に
「捌けるか?」という不安がつきまとうが、鞍上の
藤岡康騎手はそれを
完全に味方につける騎乗ぶり。ペースは
前半1000m通過が61秒5で、馬場を考えれば緩めだっただけに、この末脚の価値は高そうだ。
シャトーブランシュ自身は今回が格上挑戦の身ではあったが、
13年ローズSで②着、今年の
中山牝馬Sでは1番人気に推されており、決して格下ではなかったのだろう。これで名実ともにOP馬となったわけで、今後もますます期待できるだろう。
前崩れの流れの中、早め早めの競馬で粘り込んだ②着の
マリアライトも、他馬にマークされる厳しい展開を考えれば大健闘。
アロンダイト、
クリソライトなど近親にはダートの活躍馬が多いが、小柄なこちらは芝向きなのだろう。今後賞金を加算できるかがカギになりそうだが、順調なら秋のG1戦線でも注目の存在になるかもしれない。
近年、ハンデ53kgで牝馬限定重賞を連対した馬といえば、昨年のこのレースの勝ち馬
ディアデラマドレ、
ケイアイエレガント(
14年中山牝馬S②着)、
レディアルバローザ(
11年中山牝馬S①着)など、
後にG1で好走した馬の名前もある。今回の上位2頭はこれに続けるか。可能性は十分だろう。