ミスターアメリカンを破ったのはいちばん小柄な馬だった
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
ユニコーンSが東京ダート1600mで行われるようになってからは、
単勝オッズが1倍台の馬は
3連勝をしていた。03年
ユートピア(1.8倍)、05年
カネヒキリ(1.1倍)、10年
バーディバーディ(1.6倍)の3頭だ。
ところが、昨年、この流れを
アジアエクスプレスが止めてしまい(1.3倍で⑫着)、今年の
ゴールデンバローズも1.5倍で④着に敗れた。奇しくも、この2頭の鞍上はどちらも
戸崎騎手だったりする……。
アジアエクスプレスは4戦ぶりのダートで、内枠で揉まれた影響もあったのだろう。
ゴールデンバローズは
6枠12番という枠順で、近走はずっと
ダートを使われてきた馬だから大丈夫かと思ったが……やはり
海外遠征帰りは簡単ではないということなのか。
今回、
ドバイからの帰国初戦となったのは、
ゴールデンバローズと
タップザットの2頭。
ゴールデンバローズは
堀厩舎で、
タップザットは
池江厩舎だから、今年の
ダービー(
ドゥラメンテ・
堀厩舎)と
オークス(
ミッキークイーン・
池江厩舎)を制した厩舎ということだ。
堀厩舎も
池江厩舎も、今年の
ダービーや
オークスだけでなく、数々の
G1を優勝してきている一流厩舎だから、今回も調整には抜かりなし、だったのだろうが、結果は伴わなかった。
この2頭は帰国初戦で、馬体重について増減の発表がなかったが、
ゴールデンバローズは
518kg、
タップザットは
500kgで、これはどちらも
国内では最多体重だった。
3歳春だから増えていても問題ないのかな、と思っていたが、
安藤勝己元ジョッキーは自身のTwitter(@andokatsumi)で
「この時期の馬体増は疲れが抜けねえで一度緩めた証拠」とコメントされていましたね。なるほど、そういう見方もあるのかと勉強になりました。(ちなみに、優勝した
ノンコノユメは前走と増減なしの448kgだった)
ゴールデンバローズについて、金曜日(19日)に行った編集部会議では、
「ハルク・ホーガンのようだ」と話していた。その血統構成が
筋骨隆々のアメリカンに見えたからだ。
ゴールデンバローズは父が
タピットで、その父系は
エーピーインディ、
シアトルスルー、
ボールドルーラーと続く。母の父も
シアトルスルーの系統なので、父も母父も
ボールドルーラー系ということだ(
シアトルスルーの4×5というクロスを持つ)。
さらに、祖母の父が
ヘネシーで、
ストームキャット(ヘネシーの父)の血も持っており、父系には
ミスタープロスペクターの4×5というクロスもある。どこからどう見ても、
ミスターアメリカンという感じなのだ。
今回は、この
ミスターアメリカンが国内で生まれた15頭を力でねじ伏せるのかと思っていたら、優勝したのは
出走馬16頭の中でいちばん小柄な
ノンコノユメ(448kg)だった。
超人ハルク・ホーガンを
ジュニアヘビー級時代の
藤波辰爾が破ったような感じでしょうか。しかも、
逆さ押さえ込みや
スモールパッケージホールドなどではなく、真っ向勝負で
スリーカウントを奪ったような感じ。何を言っているのかよく分からない方、すみません(笑)。
いずれにしても、
ノンコノユメはまったくの正攻法で15頭を差し切ったのだから
圧巻だった。決して大きくないあの体のどこにあれほどのパワーがあるのだろうか。
ノンコノユメは父
トワイニング×母父
アグネスタキオンという配合で、ダート適性は父譲りと見るのが普通の考えだろう。ただ、
アグネスタキオン産駒では11年の
ユニコーンSを
アイアムアクトレスが制していて、母系にも
ダート適性の源泉があると感じていた。
曾祖母が
ビューパーダンスで、つまり
ノンコノユメは
ハーツクライの近親になるわけだが(
ハーツクライの祖母が
ビューパーダンス)、祖母
レディータイクーンの父は
アリダー直仔の
クリミナルタイプだ。また、
アグネスタキオンの母父は
ボールドルーラー系の
ロイヤルスキーで、この辺りに
ダート適性の高さが潜んでいるのだと思われる。
日本生まれで小柄なので、
ドラゴン・
藤波辰爾さんにたとえさせてもらったが、
アメリカンなダート血統は父系にも母系にも組み込まれているということだ。
ノンコノユメの今後の夢は、
G1制覇となりそうだ。順調なら今後は
ジャパンダートダービー(7月8日・大井ダート2000m)とのことで、初距離と初のナイター、初めての地方競馬場のダートを克服できるかが焦点になるのだろう。
昨年の
ジャパンダートダービーは
カゼノコが制し、同馬は
454kgでの優勝だったから、
小柄であっても大丈夫という感じはする。ただ、昨年の
カゼノコ、一昨年の
クリソライト、3年前の
ハタノヴァンクールと、近3年は前走を
ダート1800mで走って勝利していた馬が優勝しているので、
ノンコノユメは今回から距離が400m延びることがポイントだろう。
ユニコーンS→
ジャパンダートダービーという臨戦馬では、4年前に
グレープブランデーが優勝している(
ユニコーンSは②着だった)。その
グレープブランデーは父
マンハッタンカフェ×母父
ジャッジアンジェルーチという配合で、
ジャッジアンジェルーチは
ボールドルーラー系だ。
母系にアメリカンなダート血統を持っているという点では、
ノンコノユメにも
克服できる材料があると言えるのかもしれないが、果たして夢は成就するだろうか。