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時計面では拍子抜けも記憶には残るレースになりそう
文/編集部(W)、写真/川井博


馬場状態がコロコロと変化する東京や阪神とは対照的に、函館は土日、芝・ダートともに良馬場で行われた。今年の函館の芝は良好な状態のようで、JRA発表によると、6月14日(日)からは雨量の項目でもゼロ行進だから、路盤は硬くなっているはず。

なるほど、初日には500万の平場戦で1分8秒3という好時計が計時され、函館10R駒ケ岳特別(函館芝2600m、500万)では、シークレットパスが従来のレコードを0秒7も更新する2分38秒7で勝利した。函館スプリントS同日の9R(500万の平場戦)も1分8秒3で決着した。

気になったので、JRAのホームページで函館のレコードを確認してみると、88年函館記念(芝2000m)で樹立したサッカーボーイの1分57秒8がいまだ燦然と輝く。その下には芝1800mのボールドノースマンの1分46秒0も。88年青函トンネル開通記念(OP特別)で計時したもので、歴史を感じさせる。2歳の芝1000m(57秒2)にはハギノトップレディの名もある。

このあたりのレコードが塗り替えられると、オールドファンでなくても寂しさを覚えるのではないだろうか…。なんてことを思いつつ、3歳以上の函館芝1200mの欄に目を向けると、11年6月19日の道新スポーツ杯(函館芝1200m、1000万)テイエムオオタカが樹立した1分8秒0があった。

平場戦の500万で1分8秒3が連発する馬場状態であれば、G3なら1分7秒台必至。そんなことを考えながらレースを迎えたのだが、終わってみればこちらも1分8秒3で決着。掲示板に表示されたタイムを見て、しばらく思考回路がフリーズした。

ペースが遅かったのかと思い、レースVTRを見返してみると、フギンアンバルブライベンメイショウイザヨイの内3頭が押して押してハナ争い。先頭を行くフギンがペースを緩めている気配はなく、2番手のアンバルブライベン、後続のエーシントップコパノリチャードも4角でジワジワと接近して先頭を伺う。前がかりの展開で直線へ。

2番手から抜け出したアンバルブライベン、これに食らいつくエーシントップ。この2頭が残り1F標識で抜け出し、コパノリチャードは脱落して馬群に沈む。その刹那、大外から1頭桁違いの脚色で伸びたのがティーハーフだった。さらに、14番人気②着アースソニック、12番人気③着レンイングランド、7番人気④着セイコーライコウクロフネ軍団も揃って4角10番手以下で、いわゆる前崩れでの大波乱である。

前半3F33秒0は、函館芝1200mで行われた函館スプリントSの中では08年(32秒8)に次いで2番目に速い。ハイペースなのに1分7秒台には突入しないという不思議な結末で、時計的には凡戦に映る。牝馬で56kgを背負い、2番手追走から②着と0秒1差の⑤着に粘ったアンバルブライベンの健闘は光るものの、4角4番手以内のエーシントップメイショウイザヨイコパノリチャードフギン⑧⑫⑭⑯着と大敗し、先行勢がだらしなかったのか、よほど厳しいペースだったのか。

とはいえ、ティーハーフの勝ちっぷり、国分優騎手の手綱捌きにはケチをつける気はない。

内にいたダート実績馬のヒラボクプリンスよりも出脚が鈍く、ポツン最後方。この時点では正直、馬券圏外だと思ったのだが、国分優騎手は慌てずに内、内を回ってロスを最小限にとどめ、3~4コーナーの中間で馬群の外を回って一気にスパート。加速したまま直線に向いてまとめて差し切った。内を突いて前が詰まったローブティサージュスギノエンデバーとは対照的で、結果的には思い切りの良い判断が奏功した感じ。

展開がハマった面はあるだろうし、ティーハーフは時計のかかる馬場が向くタイプだから、“時計を要した”決着も幸いした印象だが、芝1200mの重賞で最後方から差し切って2馬身半差を付けるのは容易ではない。香港スプリントなど、短距離G1を勝っているラッキーナインの半弟で、ポテンシャルに成績が追い付いてきたと言うべきではないか。

サドンストームは昨秋以降、京阪杯シルクロードSで②着に好走し、高松宮記念では国分優騎手とのコンビで④着と健闘を見せた。重賞制覇は弟ティーハーフのほうが先となったが、この全兄弟が短距離戦線を賑わす存在になってきたのは確かだろう。ティーハーフとは[3.1.1.0]と相性抜群の国分優騎手だが、今後はサドンストームとどちらを選択するのか、その選択も興味深い。

時計面では拍子抜けしたが、ティーハーフのインパクトのあるレースぶり、開幕週なのに真ん中より外枠の馬の外差し決着、人気薄のクロフネ産駒が②③④着などなど、記憶には残るレースとなりそうな予感。