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この勝利が種牡馬ディープインパクトの新境地を拓く!?
文/編集部(T)、写真/森鷹史


ハンデを見ると、57kgの牡馬サドンストームがもっとも重い斤量ではあったが、牝馬のウリウリも55.5kgを課されており、この2頭がハンデ上位といえる存在だった。結果的にこの2頭が馬券に絡んでおり(ウリウリ①着、サドンストーム③着)、実績馬が順当に結果を出したということになるのだろう。

とはいえ、勝ったウリウリ課題がなかったかといえばそうではない。このレース前までは、ディープインパクト産駒は芝1200mの重賞で[0.2.6.13]。好走率こそそれなりに高かったが、勝てていなかったのだ。

「ディープインパクトはスプリントの強豪馬を出せない」と言われることは、まだあまりなかったように思う。とはいえ、この状況があと数年続けばそうなっても不思議ではなかったかもしれない。

すでにサンデーサイレンスの全盛期をご存じない方もいらっしゃるかもしれないが、ディープインパクトの父サンデーサイレンスも、かつては似たようなところがあった

調べてみると、サンデーサイレンス産駒の初重賞制覇は初年度産駒のプライムステージ94年札幌2歳S(札幌芝1200m)で飾ったが、古馬混合の短距離重賞はなかなか勝てなかった

そして、ようやくサンデーサイレンス産駒が古馬混合の芝1200m重賞を勝ったのは、すでにサンデーサイレンス自身がこの世を去った(02年8月18日に死去)後、ビリーヴが制した02年セントウルS(02年9月8日に開催)だった。

その後、そのビリーヴを皮切りにデュランダル、アドマイヤマックス、オレハマッテルゼ、スズカフェニックスと立て続けにスプリントG1を制した馬が出たわけだが、かつては「サンデーサイレンスからは一流スプリンターが出ないのでは?」などといわれていた時代は確かにあったのだ。

理由を考えると、サンデーサイレンス産駒は距離の融通が利く馬が多かったので、スプリント路線に特化する馬が出てこなかったのもあるかもしれない。

これはディープインパクトにも通じるものがある。それだけに、「ディープインパクトもそうなる可能性はあるのか?」と(個人的に)考えていたところで現れたのが、今回勝ったウリウリ。昨年の京都牝馬Sを制するなど、これまではマイルを中心に戦績を積んだが、前走の安土城S(京都芝外1400m)で京都牝馬S以来の勝利を飾り、今回が初めてのスプリント戦となった。

芝1400mでは②④③①着と安定していたが、未知数となる200mの短縮がどう出るのか。前走のウリウリは馬群の真ん中から脚を伸ばしたが、今回は後方の内に待機。直線を向いてダンスディレクターをはじめとする他馬が外に持ち出す中、外に進路がないと見た岩田騎手は迷わず内に進路を切り替えた

結果的にこの選択が大正解で、馬群を捌くのに少し手間取ったダンスディレクターに対し、ウリウリは内から鋭く突き抜け、立て直して伸びてきた②着ダンスディレクターの追撃を振り切った。

ウリウリダンスディレクターの差が半馬身とわずかだったので、直線の進路取りが大きく結果を分けた可能性は高い。ただ、脚を余すところなく能力を発揮させた岩田騎手と、それに応えたウリウリの勝ちっぷりは文句のつけようもないものだろう。

ロードカナロアが引退してから、短距離路線は長らく混沌としている。ウリウリは今後改めて距離を延ばすのか、1200m路線を突き進むのかはまだ分からないが、今回はこの路線で大成する可能性を示した一戦となったのは間違いないところ。

種牡馬サンデーサイレンスの新境地を拓いたビリーヴのように、ウリウリがディープインパクト産駒として最初のチャンピオンスプリンターに君臨する可能性も十分あるはずだ。