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鬼門をぶち破ったブランボヌールなら希望の光が見えてくる
文/編集部(W)、写真/川井博


13年は、クリスマスが函館芝1200mで行われた函館2歳Sでは85年ダイナアクトレス以来となる1番人気による勝利を飾り、1番人気の連敗を「25」でストップさせた。14年は、アクティブミノルが92年マザートウショウ以来となる逃げ切りを決めた。開催時期が早まり、7月に行われるようになったのは12年からで、その影響なのか、ここ2年は珍しい記録が続出している。

その流れからいくと、今年も珍しい記録が生まれても不思議ない。では、その記録とは何なのか。

サンデーサイレンス直仔以外の父サンデー系は函館芝1200mで行われた函館2歳S[0.0.1.39]。40頭が出走して③着1回。拒絶感が尋常ではない。ただ、今年はヒルダ(10番人気)、ブランボヌール(1番人気)、マコトルーメン(6番人気)、メジェルダ(2番人気)、メジャータイフーン(3番人気)、ラッキーボックス(4番人気)、ラプレシオーサ(11番人気)と、出走馬が7頭と多い上に上位人気がズラリ。

サンデーサイレンス直仔以外の父サンデー系が函館芝1200mでの函館2歳Sでついに初連対、何なら一気に初勝利、という記録がまずイメージできた。

さらに、函館芝1200mの函館2歳Sで、前走が函館以外だった馬が勝てば、76年ソーウンムサシ以来ということで、ラッキーボックスか地方馬(ラプレシオーサリンダリンダタイニーダンサー)が勝てば、超がつく珍しい記録の誕生となるがどうか。

そんな記録を思い浮かべながらレースを迎えたのだが…レース後、サッカー日本代表の本田選手「ゴールというのはケチャップみたいなもんだと。出ないときは出ないけど、出るときはドバドバッと出る」という言葉が脳裏をよぎった。

①着ブランボヌール、②着メジャータイフーン、③着ヒルダ、⑤着マコトルーメン、⑥着ラッキーボックス、⑦着メジェルダ、⑧着ラプレシオーサで、上位8頭のうち、④着タイニーダンサー以外はサンデーサイレンス直仔以外の父サンデー系という結果に。初連対、初勝利、馬券圏内独占、ほぼ上位独占という形で快挙達成となった。これまで拒絶され続けてきた鬱憤を晴らすかのように。

しかも、3馬身半差で圧勝したブランボヌールディープインパクト産駒ということで、これで同産駒はJRA全10場重賞制覇の記録達成ともなった。7月の函館2歳Sは何かと記録尽くめだ。

それはそれとして、ブランボヌールの強さは際立っていた。稍重で前後半3Fが34秒1-36秒5。4角3番手以内の馬が揃って掲示板外に沈んだ結果を見ても、ハイペースで流れたのは周知の通り、その中、ブランボヌールは後方からじっくりと進め、勝負所で外から早めに押し上げて、直線で岩田騎手のムチが入るとあっという間に後続を突き放してみせた。

レースの流れに乗り、鞍上の指示に素直に従う。仕掛けられてからの反応も上々。デビューしたばかりの2歳馬とは思えないセンスの塊のような馬である。さすが函館リーディングを獲得した岩田騎手がパートナーに選んだ馬と言える。

函館2歳S出走馬からは朝日杯FS皐月賞を制したロゴタイプ(12年函館2歳S④着)が出ているが、函館2歳Sを制した馬が同年暮れの2歳G1を制したケースは、96年マイネルマックス(朝日杯3歳S①着)まで遡らなければならない。函館2歳Sで好勝負しても、2歳G1、その先のクラシック戦線は展望しづらい。函館2歳Sにはそんなマイナスイメージが定着しているのは確かだろう。

だが、ディープインパクト産駒はデータクラッシャー。鬼門データを見つけてもあっさりクリアすることは朝飯前で、それは今回のブランボヌールでも証明されている。

ディープインパクト牝馬ジョワドヴィーヴル(11年)、ショウナンアデラ(14年)が阪神JFを制し、マルセリーナ(11年)、ジェンティルドンナ(12年)、アユサン(13年)、ハープスター(14年)が桜花賞で4連覇を飾っている。

ブランボヌールは母系が短距離型でも、センスの良さをもってすればマイルまでならこなしても不思議ではない。同世代の牝馬相手ならマイルでも好勝負に持ち込める。そう考えるのは筋違いでもないはず。体は出走馬中で3番目に軽い432kgだが、夢はいっぱい詰まっている。2歳最初の重賞なら、夢は大きく見たい。