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先行有利の傾向を覆して差し切りを決めた勝ち馬を素直に褒めるべき
文/浅田知広、写真/稲葉訓也


東西に北海道と、3場揃って開催替わり。北海道は今週から札幌開催である。その札幌の最高気温は29度。それでも暑いほうかもしれないが、37度だなんだという関東からすれば、うらやましいかぎりである。

そんな、夏真っ盛りの日本列島だが、月に1度走るかどうかというオープン馬にとっては、早くも秋目前。札幌のクイーンSは、3歳馬なら直接秋華賞へ、古馬にとっては府中牝馬Sあたりを挟んでエリザベス女王杯も視野に入ってくる。

今年、そのクイーンSに顔を揃えたのは計10頭で、半数の5頭は前走が条件戦。このメンバーなら、やはり注目はG1馬レッドリヴェールになる。

一昨年に阪神JFを制し、桜花賞ではハープスターの②着。その後は馬券圏内から遠ざかっているものの、札幌2歳Sを制したコースに戻って……、いや、当時は函館代替だったので戻ってはいなかった。札幌2歳Sを制した北海道には戻り、そしてやはり札幌2歳S以来となるG3で久々の勝利を挙げられるのか、という一戦だ。

レースは唯一の3歳馬、オークスでも逃げたノットフォーマルがハナに立ち、2~3番手にフレイムコードイリュミナンス。注目のレッドリヴェールもその後につけ、さらにブランネージュと続いて、ここまでで10頭の半分である。

札幌で行われたクイーンSは過去14回。その勝ち馬のうち、13頭は2コーナーを5番手以内で通過した馬。今年の展開で言えば、ブランネージュまでが有力な優勝候補、ということになる。

前半の800m通過は47秒6、そして1000mは59秒9。いくら洋芝・札幌とはいえ、開幕週の1800m戦、それも重賞競走となれば、この通過タイムはスローペース。馬群はやや縦長に伸びていたものの、そのまま前の馬が勝ち切る競馬、もっと言えばレッドリヴェールが久々の勝利をものにしそうな展開だ。

そのレッドリヴェールは、前のノットフォーマルフレイムコードとの差を少しずつ詰めながら4コーナーへ。後続の動きに注意を払いつつも逃げ切りは許さない、そんな万全とも思えるレース運びだった。あとはその手綱さばきにレッドリヴェール自身が応えられるかどうかだけ。直線でやや外に持ち出し、残り200mを切って前2頭を捕らえたところまでは、ほぼ完璧だったと言えるだろう。

しかし、そこに後続から襲いかかる馬が1頭。2コーナー通過は9番手、過去の傾向からすれば勝機が薄いはずメイショウスザンナだった。もっとも、後方追走とはいえ、さばきやすい10頭の少頭数。3~4コーナー中間で徐々に位置取りを上げ、4コーナーではレッドリヴェールの直後と、こちらはこちらで「先行有利」のレース傾向さえ無視すれば、文句なしの展開だ。

この2頭に差があったとすれば、メイショウスザンナは後方でピタリ折り合い、レッドリヴェールは2コーナーあたりで少し掛かり気味になったこと。ただ、レッドリヴェールも決してバテてはおらず、大勢に影響を与えたかどうかは微妙なところ。切れる末脚を繰り出したメイショウスザンナを、素直に褒めるべきだろう。ともあれ、タイミング良く抜け出したレッドリヴェールの外から、メイショウスザンナがスパっと差し切り勝利を収めたのだった。

メイショウスザンナは3歳時にフラワーCで②着好走も、牝馬三冠は⑤⑨⑱着と右肩下がり。その後は1000万条件でも苦戦した時期があったが、そこからじわじわと盛り返し、6歳夏についに重賞勝ちを果たした。

おじにはダート10勝のメイショウホムラ、その弟でデビュー戦の豪快な追い込みが一部で有名なリアルヴィジョン、はとこには阪神3歳牝馬Sを制した抽選馬アインブライドと、近親はなかなかの個性派揃いメイショウスザンナも、またどこかで一発がありそうな気配がある。

一方、レッドリヴェールは敗れたとはいえ、前走のヴィクトリアマイル④着で桜花賞以来の掲示板に載り、今回は桜花賞以来の②着好走。凡走続きから立ち直り、もうひと花咲かせても不思議のないところまでやってきた。昨年⑯着のエリザベス女王杯再挑戦か、あるいは牡馬相手でもマイルCSか。いずれにしても、このまま好調を維持してG1の舞台に姿を見せてほしい。