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勝負を分けるのは気持ちの強さなのかも?
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也


少し形は違うものの、先週の小倉記念と今週の関屋記念を見終えて、最近はジョッキーの心意気に注目すべきなんじゃないかと思うようになっている。

小倉記念はテン乗りの松若騎手が騎乗したアズマシャトルが優勝したが、同馬は最終追い切りが予定していたタイムよりも速くなり、騎乗した松若騎手が謝る場面があった。それでも「結果を出します」と話し、その通りに差し切って重賞初制覇を成し遂げた。

今回の関屋記念での川須騎手は、前走の中京記念でもレッドアリオンに騎乗して2番人気に推されたが、出負けして⑧着に敗れた。それでも今回も騎乗するチャンスを得て、逃げの手に出て押し切った。

川須騎手は、レース後、「なんとしても結果を出したいという気持ちでした」と話していたが、直線で差し返すように伸びて、その姿には強い気持ちが感じられた。

「いまはすぐに乗り替わりになる」という話をよく耳にするが、そんな時代だからこそ、騎手の心理も考えて予想をすると面白いのかもしれない。もちろん心意気だけで結果が出るほど簡単な話ではないのだろうけど、僅差の接戦で勝負を分けるのは、気持ちの強さでもあるような気がするので。

レッドアリオンは兄のクラレントが昨年の関屋記念を優勝し、アグネスタキオン産駒では11年にレインボーペガサスという優勝馬も出ていて、血統的な相性は非常に良いように感じられた。しかも今回は、12頭立てで先行馬が少なく、たとえ出負けしても挽回しやすそうな外枠を引き当てた。勝つための条件がいくつも揃ったとも言えるだろう。

兄のクラレントが昨年の関屋記念を制した時が1分32秒5(稍重)で、今年は1分32秒6(良)。兄弟揃って勝ち時計も似ているなあ、と思ったが、そのペースを見比べたら、かなり違っていた。

兄(クラレント)が制した昨年は、34秒9-46秒5-58秒1という通過で、レースの上がり3Fが34秒4。これに対して弟(レッドアリオン)の今年は、36秒4-47秒9-59秒3で1000mまでの通過は昨年より1秒以上も遅い。当然、上がりは今年の方が速く、33秒3という過去10年の関屋記念で4番目に速いタイムとなった。

昨年のクラレントは5~6番手を追走して差し切ったので、レースラップよりも遅い通過タイムだったが、今年のレッドアリオンほどではなかっただろう。となると、レッドアリオンが逃げてクラレントが差す形だったら、いったいどちらが先着するのか?という疑問が湧いてくる。

クラレントレッドアリオンは、過去に3度、直接対決をしていて、1勝1敗1痛み分けという感じだ。今年の安田記念ではクラレントが③着に好走して、レッドアリオンは⑧着。その前走のマイラーズCレッドアリオンが優勝し、クラレントは⑩着に敗れた。もうひとつの直接対決は昨年のマイルCSで、レッドアリオンが⑭着、クラレントが⑮着に敗れている。

いずれも多頭数で、他馬や枠順に結果が左右されやすい面もあったから、本当は2頭だけで対決してもらいたいんですけど、ダメでしょうか。ダメですね(笑)。シービスケットの時代じゃないんだから、というツッコミが聞こえてきそうです。

ただ、今年の安田記念で③着となったクラレントを見ても、今年になって重賞2勝をマークしたレッドアリオンを見ても、4歳秋に初重賞制覇がG1(エリザベス女王杯)となったおばのエリモシックを見ても、この一族は年齢を重ねて強さを身に着けていく傾向があるから、クラレント&レッドアリオン兄弟も今後が楽しみだろう。

それにしても、広い新潟コースで12頭立てとなれば、馬場をいっぱいに使っての追い比べになるかと思いきや、そうはならないものなんですね……。

1番人気に推されたカフェブリリアントは、直線でシャイニープリンスヤングマンパワーの狭い間に入って伸びきれず、サトノギャラントは良い手応えが上がってきたものの、前がになって追い出せずに掲示板外に敗れてしまった。

前に行けばになることはなく、詰まったりするのは差し馬だから起こること、とは言えるのだろうが、それにしても全力を出し切れずにレースを終えるのは、馬も人もストレスが溜まるだろう。

前走(中京記念)のレッドアリオンがまさにストレスの溜まるレースだったろうから、今回の関屋記念で敗れた馬についても、次走以降ではその鞍上の心意気に注目しながら予想をしたいものだ。