人も馬も“I❤️新潟”
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
レースの1000m通過は
58秒8だったが、これは
アーデントが後続をやや離して逃げたためで、2番手の
マイネルミラノは
60秒を切るぐらいだったか。しかし、今年の
新潟記念はここからペースが緩まず、
稍重馬場と
マイネルミラノ&
柴田大騎手の手によって
厳しさの度合いが増していった。
1200mを通過した後、
12秒0-
11秒6-
10秒5というラップが刻まれ、2番手に付けていた
マイネルミラノが早めに先頭に立つ。残り600mを切った地点では早くも鞍上の手が動く馬が続出して、
なし崩し的に脚を使わされた馬が多かったことが見て取れた。
最後の1Fは
13秒0もかかったのに、走破時計が
1分58秒2(稍重)だったから、いかに
1800mまでが速かったかが分かるだろう。
マイネルミラノの1800m通過は
1分45秒2で、これは昨年の
毎日王冠の勝ち時計(勝ち馬
エアソミュール)と同じ。今年の
エプソムC(1分45秒4:
エイシンヒカリ)よりも速い。
柴田大騎手は
してやったりと思ったことだろう。
ところが、直線に入って
マイネルミラノを追いかけてきた馬が1頭いた。
“I❤️新潟”の
M.デムーロ騎手が操る
パッションダンスで、道中で
マイネルミラノの直後に付けていた同馬は鞍上のムチに応え、
マイネルミラノとの差をどんどん縮めていった。
M.デムーロ騎手は残り300mほどのところでは
右ムチによって
パッションダンスを追っていたが、
マイネルミラノの2馬身ほど後方まで来ると今度はムチを
左手に持ち替え、
パッションダンスを
マイネルミラノの右側へ誘導していく。そして、残り100mを切ると今度は再び
右手にムチを持ち替え、
マイネルミラノに馬体を併せに行って、これを捕え切った。
右へ左へとステップを踏みかえながら伸びた
パッションダンスも立派だったが、寸分の狂いなく進路を選んで誘導していった
M.デムーロ騎手の騎乗は圧巻だった。
柴田大騎手(
マイネルミラノ)も完璧と思える騎乗をしていたが、それを上回る馬&騎手がいたということで、今回は
相手が悪かったとしか言いようがないだろう。
ディープインパクト産駒は昨年の
マーティンボロに続く
新潟記念連覇となったが、昨年が①~③着を独占したのに対して、今年は5頭が出走していながら掲示板に載ったのが
パッションダンスだけ。その一方、
ステイゴールド産駒の
マイネルミラノが②着に粘り、
オペラハウス産駒の
ファントムライトが③着に食い込んだあたりを見ると、
切れ味勝負の舞台ではなかったことが分かる。
パッションダンスは
ディープインパクト産駒だが、母系に
リファールや
ニジンスキーの血を持ち、爪で苦しんできた馬ということもあって、今回の
馬場が向いた面もあったのだろう。そして、一昨年の
新潟大賞典を制していて、この馬も
“I❤️新潟”だったということだろう。7歳にして再び重賞を勝つのだから偉い馬だ。
M.デムーロ騎手は
新潟記念を優勝した後、最終レースの
雷光特別も
アースエンジェルで制して、
17勝で夏の
新潟リーディングを獲得した。2位の
戸崎騎手に6勝差を付けたのだから文句の付けようがない、と言いたいところだが、
ちょっと珍しいなと感じることもあった。
今夏の
新潟での
M.デムーロ騎手は、
芝で[15.11.6.19]と多くの勝ち鞍を挙げた一方、
ダートでは[2.4.0.18]という成績だった。2位の
戸崎騎手が11勝だったので、
M.デムーロ騎手は
芝のレースだけでリーディングを獲得できたとも言える。これだけ
芝に寄った成績で
リーディングを獲る騎手も珍しいと思うので、正確には
“I❤️新潟(芝)”じゃなかったかと思ったわけです(笑)。
秋競馬での
M.デムーロ騎手は、
芝での活躍はもちろん、
ダートのレースでもどんなレースを見せてくれるのか、楽しみにしたいものだ。
今回の
新潟記念で優勝した
パッションダンスは単勝が9.1倍だったが6番人気で、
1~5番人気の馬は1頭も掲示板に載れない結果になった。
ミュゼスルタン、
アヴニールマルシェという
3歳馬は、⑮着(
アヴニールマルシェ)と⑯着(
ミュゼスルタン)に大敗した。両馬とも2000m以上では好走歴がなく、
古馬の厳しい流れに苦汁を飲まされた格好となった。
同じ3歳馬の
スピリッツミノルは札幌の
丹頂Sで最下位(⑭着)となり、
現3歳世代は古馬混合の芝OPで[0.2.3.22]という成績が残されている。勝ち馬が出るまでは、現3歳世代については静観するのが賢明なのかもしれない。
マジェスティハーツ(⑩着)は道悪馬場では連対歴がなく、
メドウラーク(⑨着)の過去5勝と
アルフレード(⑦着)の過去3勝も良馬場の芝だから、
道悪馬場の影響があったのだろうか。
いや、しかし、今回はその馬場も味方に付けて、
厳しいレースに持ち込んだ
マイネルミラノ&
柴田大騎手のファインプレーを讃えるべきだろう。ジョッキーの戦略も含めて、
今年の新潟記念には勝者が2頭(と2騎手)がいたと記しておくのが正しいのではないだろうか。