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久々の小倉2歳S出走に、橋口師の思いを感じた
文/編集部(T)、写真/森鷹史


小倉は土曜の開催後に雨が降る予報で、どこまで馬場が悪化するかが不透明。例えば金曜にまとまって雨が降り、週末は降らないという予報だったら「どこまで馬場が回復するか」と予想もしやすいのだが、「こういう時は困る」という方は多いのではないだろうか。

天気予報を見るとまとまった雨が降りそうだったので、「もしかしたら1レースは不良馬場もあるかも」と思ったが、蓋を開けてみると1レースは重馬場でのスタートとなった。

そういえば、「これくらいの雨ならまだ良馬場」や、「けっこう降ったので重馬場かな」などと個人的に予想しても、最近は少しズレてきている気がする。JRA馬場造園課の方々も努力を重ねていて、近年の馬場事情は大きく変化しているので、自分としても認識を修正する必要があるようだ。

それはともかく、結果的に小倉2歳Sは稍重での開催となった。そこで圧倒的1番人気に推されたシュウジは、デビュー戦が中京芝1400m、2戦目が中京芝1600mで、芝1200mを一度も使わずにここに参戦。90年以降の小倉2歳Sで前走が芝1600m以上の1番人気馬は皆無で、近年では異色の存在だったといえるだろう。

ただ、シュウジ自身は過去2戦が前半600mを35秒台で入っての逃げ切りで、前半600mを32~33秒台で入る小倉2歳Sに対応できるのか?という不安を指摘する向きもあった。

小倉2歳Sは勝ち馬からアストンマーチャン、エピセアローム、それ以外ではベルカントなど、スプリント路線の強豪馬を出してきた重賞で、コテコテのスプリンターが活躍するイメージがあっただけに、初めてのスプリントに戸惑う可能性は確かにあっただろう。

ところが何のその。スタートで少し出負けしたシュウジだったが、鞍上の岩田騎手が急かすことなくスッと好位へ。4コーナーで逃げたオフクヒメが膨れたところでさらにその外を回し、直線で突き抜けた。出遅れ、控える競馬も難なくクリアしたセンスを見せつけられると、もはや脱帽するしかない。

②着サイモンゼーレにつけた差は0秒4で、これは過去10年としては06年のアストンマーチャンと並んで最大タイの着差となる。スプリント戦でこれだけの着差をつけたことも、素直に評価すべきだろう。

ところで、シュウジを管理する橋口師は、九州・宮崎県出身。同師にとって小倉はいわばホームといえる競馬場で、例年数多くの有力馬を出走させるが、小倉2歳S(前身の小倉3歳Sを含む)の出走は意外にも00年ツルマルボーイ以来だった。

小倉開催は来年の年明けにも予定されているが、来年引退を控える同師にとって、本場としての開催はこの日が最後。マイルで勝った馬をここに持ってきたことには師の“思い”を感じるし、橋口師ならではの采配だったと言うこともできそうだ。

ラストチャンスから1年前にダービーを制した時にも感じたが、最後の小倉重賞(今年の番組通りなら、橋口師が現役で最後に迎える小倉の重賞は来年の小倉大賞典)から1つ前にも勝つのだから、さすがというほかない。同師は今年夏の小倉リーディングも獲得しており、特に感慨深い夏になったのではないだろうか。

シュウジ自身は半兄がこのコースで重賞(13年北九州記念)を勝ったツルマルレオンで、父がキンシャサノキセキ。兄も父も初めて重賞を勝ったのは5歳になってからで、まだまだ成長を見込めるだろう。

シュウジ橋口師が管理するのは来年2月までと思われるが、それ以降もこの馬が活躍するたびに師の名前を思い出すはず。できるだけ長く、そうあってほしいと思う。