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“何が何でも”行き切った騎乗が最適解だった
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也


サマースプリントシリーズが創設された06年以降、セントウルSは一貫してシリーズ最終戦として開催されてきた。そこまでに優勝が決まっていて、“消化試合”となった年もあったが、今年はCBC賞勝ち馬ウリウリがここに参戦。鞍上の岩田騎手サマージョッキーズシリーズで上位につけており、『勝てば』ダブルチャンピオンというレースとなった。

一方で、セントウルSスプリンターズSの前哨戦としての側面を持つ。今年もストレイトガール、ハクサンムーンといった本番を見据える馬が休み明けでここに出走。G1の前哨戦としても申し分ないメンバーが揃った。

戦前はそのハクサンムーンをはじめ、ルチャドルアスール、ホウライアキコ、メイショウイザヨイなど、テンのスピード自慢が多く、ハイペースを予想する向きが多かったように思う。

しかし蓋を開けてみると、前半600m通過が34秒0で、これは過去10年で2番目に遅いもの。このメンバーでこれだけペースが遅くなるとは、誰が予想しただろうか。そんな中でハナを奪い、そのまま押し切ったのが3歳馬アクティブミノルだった。

戦前、アクティブミノルが行き切ると予想する向きはあまりなかったように思うが、スタート直後の映像を見直すと、藤岡康騎手が激しく手綱をしごいて“何が何でもハナ”と主張しているように見える。

他馬がその勢いに気圧されたわけでもないだろうが、前に行きたい馬が多いことは他のジョッキーたちも認識していただろうから、「競りかければ共倒れ」と考えても不思議はないはず。結果的に、隊列はすんなりと落ち着いた。

アクティブミノルの戦績を改めて見直すと、これまで芝1200mでは逃げて2戦2勝で、行き切れるかがひとつのポイントではあった。それだけに、この騎乗が最適解だったのだろう。

藤岡康騎手は今回のセントウルSを含め、これまでJRA重賞を14勝している。それを振り返ると、4角2番手以内が6勝、4角10番手以下が6勝で、やや極端な競馬をした時に好成績を残している。いくら開幕週の馬場でも、これだけ前に行く馬が揃った中でハナを主張するのは簡単ではないと思うが、ある意味これは傾向通りだったといえるのではないだろうか。

アクティブミノルはこの勝利でスプリンターズS優先出走権を得たが、藤岡康騎手にはビッグアーサーという存在もいるだけに、同騎手が本番でどの馬を選択するか、注目したい。

一方で、最終的に1番人気に推されたウリウリは大外枠から出遅れ、ハナ差届かず②着。前述したサマーシリーズのダブル優勝はならなかった。

余談だが、出遅れながら道中で最内から進出したシーンを見てシャダイカグラ(※89年桜花賞で大外枠から出遅れるも、武豊騎手が道中で内々に誘導し、馬群を捌いて差し切った)を思い出した方は、ベテランとお見受けします(笑)。

それはともかく、ウリウリにとっては枠も展開も向かなかっただけに、及第点以上の評価を与えても良さそう。過去10年のスプリンターズSでは前走セントウルS②着馬が3勝していることも含め、ディープインパクト産駒初のスプリントG1制覇に向けて、こちらも視界は悪くなさそうだ。

また、ストレイトガールは④着に敗れたが、勝負所で戸崎騎手がムチを入れていたように、久々のスプリント戦に戸惑った可能性もありそう。最大目標と伝えられるスプリンターズSではペース慣れも見込めるだけに、まだ見限るわけにはいかないだろう。

スプリント路線は相変わらず混沌としているが、それだけに本番はどの馬にもチャンスがありそう。熱戦を期待したい。