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覚醒した良血馬がついに本領発揮、大一番でも大駆け注意!?
文/編集部(W)、写真/稲葉訓也


目覚めた良血馬がついに本領発揮。それにしても、今年4月の忘れな草賞を終えた直後、誰がこの逆転劇を予測できただろうか。

忘れな草賞桜花賞除外されて回ってきたミッキークイーン、重賞で好走歴のあったロカの一騎打ちとなり、ミッキークイーンがこれを制し、オークス制覇に繋げた一戦だ。その中、タッチングスピーチは4番人気に推されながらも掲示板にすら載れず、⑧着と完敗を喫した。

チューリップ賞(⑨着)は出遅れや初の道悪がこたえたもので、参考外でも良さそうな一戦だったが、忘れな草賞は力負け。母リッスンは英G1勝ち馬で、近親にはG1・4勝のヘンリーザナヴィゲイターがいるという良血だが、本当に良くなるのはまだ先だろう、そう感じた。

春に結果を残せなかったタッチングスピーチは休養へ。これが効いたのか、復帰戦となった8月の自己条件(500万)ではスイートピーS②&③着のトーセンナチュラルロッカフラベイビーフローラS④&⑥着のウインアキレアバンゴールなどを子供扱いし、上がり34秒2自己ベストを記録して大外一気で突き抜けた。

変貌の兆しはそれだけにとどまらない。9月16日(水)には栗東の坂路でも自己ベスト51秒4を叩き出したのである。春とは何かが違うタッチングスピーチがそこにいた。

そして迎えたローズS。スタートでミッキークイーンが出遅れ、タッチングスピーチも行き脚がつかず後方2番手から。2頭の馬連を買っていたので、天を仰ぐ位置取りだったが、レース映像で前半1000mが58秒台と表示された後は希望を持って2頭の行方を見守った。

逃げの手に出たレッツゴードンキは残り1Fを過ぎてもまだ先頭。さすがは桜花賞馬という粘りを見せたが、阪神芝外1800m重賞で逃げた馬は[1.2.1.25](①着は07年ローズSダイワスカーレット)という逃げ切りが至難のコースで、最後に脚色が鈍る。

一方、外から伸びたのがトーセンビクトリータッチングスピーチミッキークイーンの3頭で、そのうち、タッチングスピーチの脚色が勝って先頭でゴールを駆け抜けた。上がりはまたしても自己ベストを更新する33秒9忘れな草賞では1秒3差を付けられたミッキークイーンに0秒2差を付けて逆転Vだ。

なお、4角ではタッチングスピーチミッキークイーンには2馬身ほどの差があったのだが、直線前半で一旦その差がなくなり、残り1F手前でルメール騎手のムチが入ってから、タッチングスピーチミッキークイーンを突き放すという形だった。

一瞬の加速力ではミッキークイーンが上だが、タッチングスピーチはおそらく母父サドラーズウェルズの影響で、長くいい脚を使えるタイプのディープインパクト産駒なのだろう。それにしても、追えばどこまでも伸びそうな末脚だった。そういえば、エリザベス女王杯で③着だったピクシープリンセス(父ディープインパクト母母父サドラーズウェルズ)もそんなタイプだった気がする。

タッチングスピーチは流れが速いとモタつく面があり、秋華賞に向けては流れに乗って上手く立ち回れるかがポイントになりそうだが、有力候補の一角に浮上したのは確かだろう。

ちなみに、父サンデーサイレンス×母父サドラーズウェルズ系の配合馬にはヘヴンリーロマンス(05年天皇賞・秋で14番人気①着)、ショウナンパントル(04年阪神JFで8番人気①着)などがいて、いずれもそのG1制覇の際は人気薄で、ゼンノロブロイ(②着)、ラインクラフト(③着)といった本命馬を下して優勝している。今回のローズSの大駆けを見ても、大一番の本命馬にとってこの血統馬は脅威の存在と言えるのではないだろうか。

その秋華賞の本命候補であるミッキークイーンは、秋の始動戦とすれば格好はつけたのではないだろうか。こちらは本番に向けてスタートと、広いコース向きと思われるだけに小回りへの対応がポイントになりそう。

重賞初挑戦で③着と好走したトーセンビクトリーは母トゥザヴィクトリー、全兄トゥザワールドで、良血馬が軌道に乗ったという点ではタッチングスピーチと共通している。G1馬2頭(ミッキークイーンレッツゴードンキ)に割って入った実力は疑いようもなく、G1ではなかなか勝ち切れないという一族の呪縛と解く可能性は十分ありそうだ。