ここから古牝馬の頂点に君臨する可能性も十分!?
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
G1馬3頭を含む、G1③着以内の実績馬計6頭が集った今年の
オールカマー。これだけ揃えば、このレースとしては
超豪華メンバー…のはずなのだが。
その面々を見てみると、5歳牡馬
ロゴタイプは
皐月賞以降、約1年半勝利なし。4歳牝馬の2頭、
ショウナンパンドラは
秋華賞後4戦だけとはいえ③着が最高で、安定していた
オークス馬ヌーヴォレコルトもここにきて⑥⑤着と失速気味である。
さらに、残るG1好走馬3頭も、
不振の続く
オーシャンブルー(
有馬記念②着)に、波の激しい
サトノノブレス(
菊花賞②着)。
マイネルフロストは
ダービー③着後、オープン特別①着1回しか馬券圏内がない。各馬とも確かにG1好走実績は持つものの、
ここらでひとつ、なにかきっかけが欲しいタイミングで迎えたこの一戦だ。
しかし前向きに捉えれば、この中山で行われる
オールカマーは、G1馬3頭がその
「きっかけ」を掴むには最適なコースで行われるレースだった。
ロゴタイプは中山で
[3.2.1.0]と馬券圏外がなく、
皐月賞後も
中山記念③②着に、
中山金杯②着。
ヌーヴォレコルトは、今年の
中山記念でその
ロゴタイプを下して
1戦1勝。そして
ショウナンパンドラは、中山では
フラワーC⑤着のみだが、今回と似たコース形態の
前走・宝塚記念で
③着と大健闘を見せていた。
もっとも、G1馬がここで②~③着になったところでどうなんだ、という面もあり。再び大舞台で輝きを放つための足がかりとするには、ただひとつの椅子、
①着の座をぜひとも手にしたい。
レースは
マイネルミラノの先導ではじまり、前半は3~4馬身のリード。G1馬の中ではまず
ロゴタイプが3番手につけ、これを前に見て
ヌーヴォレコルトが内の5番手あたり。そして
ショウナンパンドラは2頭からはやや離れた中団を確保した。
前半の1000m通過は60秒8のスローペース。
マイネルミラノが向正面で後続を引きつける形になり、このタイミングで逆に好位の
ロゴタイプや
ヌーヴォレコルトは少々掛かり気味。対して
ショウナンパンドラは中団で落ち着き、ラストスパートへ向けて脚を溜められていそうな印象だった。
終わってみれば、この道中の差が結果に表れた、ということになるだろうか。
ロゴタイプは直線で先行勢の外に出したものの、そこからの伸びがひと息。その後ろから
ヌーヴォレコルトが内に突っ込み、一気に突き抜けたように見えたのも、ほんのわずかのことだった。
残り200mを切って、
ロゴタイプの外から襲いかかった
ショウナンパンドラの末脚の鋭いこと。内の
ヌーヴォレコルトもいい脚を繰り出してはいたのだろうが、これを一瞬のうちに交わし去って、最後は1馬身半の差をつける完勝劇となった。
これで
ショウナンパンドラは、前走の
宝塚記念に続いて
ヌーヴォレコルトに先着。コースが違うだけに、
エリザベス女王杯と同距離で……、と単純には言えないが、少なくとも互角以上の評価をすべき存在になった。近親の
ステイゴールドや
フェイムゲームの活躍を見れば、
3歳・秋華賞でのG1制覇が早すぎたくらいで、
ここから古牝馬の頂点に君臨する可能性も十分にあるだろう。
一方、
ヌーヴォレコルトにとっては、中山で勝ち馬に34秒1の脚で上がられては致し方ない。
ショウナンパンドラの末脚があまりに鋭かったために目立たないが、自身も③着以下を2馬身突き放しており、決して悪い内容ではなかった。しかし、昨秋のG1・2戦連続②着でも、よく走ってはいるけれど……という競馬だった。強いけれども物足りない、そんな印象を払拭する走りがこの秋のG1では期待される。
そしてもう1頭のG1馬
ロゴタイプは、最後に
ミトラに交わされ④着敗退。得意の中山でも2200mは長かったようで、やはりベストは1800m前後か。ただ、
皐月賞馬が
中山記念の常連さんというのは少々寂しい。父
ローエングリン同様に逃げてしまうか、あるいは終い勝負に徹するか、そろそろ正攻法を捨てた思い切った競馬を見てみたいところだ。