異色の神戸新聞杯勝ち馬が、本番も席巻するか?
文/編集部(T)、写真/森鷹史
二冠馬
ドゥラメンテが離脱して以降、ある程度予想された状況ではあったが、
菊花賞戦線が混沌としている。
「例年にない好メンバー」と言われた先週の
セントライト記念は1番人気の
ダービー②着馬
サトノラーゼンが⑦着に沈み、勝ったのは
皐月賞③着はあるものの、
ダービー⑭着馬の
キタサンブラック。②着
ミュゼエイリアンも
ダービー⑩着馬だった。
ダービー③着馬
サトノクラウンは
天皇賞・秋挑戦とも伝えられていて、
神戸新聞杯は不参戦。
ダービーで掲示板に載った馬のうち、唯一④着馬
リアルスティールのみがここに参戦してきた。
過去10年の
神戸新聞杯勝ち馬を振り返ると、三冠馬となった
ディープインパクトや
オルフェーヴルを含め、10頭すべて春シーズンのトライアルや本番に出走していた馬。それだけに、
「なんだかんだで、リアルスティールが勝ち切って菊に進むんだろうなあ」という雰囲気がオッズからも感じられた(単勝は1.9倍)。
一方、いわゆる
“夏の上がり馬”はどうだったか。今年7月~先週までで、芝2000m以上の3歳以上・1000万以上は31レース開催されて、3歳馬は4勝。今回はそのうち、
リアファル(
マレーシアC①着)、
ティルナノーグ(
信濃川特別①着)の2頭が参戦してきた。
ただ、
ティルナノーグは2~3歳春までの重賞戦線にも参戦していたので、
“夏の上がり馬”といえそうなのは
リアファルのみという状況だった。
まさに
「求む、菊の主役!」といった感じ。個人的にも軸が堅いレースは好きなので(笑)、今回の
神戸新聞杯は
菊花賞に向けて、期待と不安が交錯しつつ見ることになった。
ハナに立ったのはその
リアファル。初芝の前走・
マレーシアCは重馬場もあったが
前半1000m通過が64秒3という超スローペースでの逃げ切りで、恵まれての勝利という見方もあっただけに、
真価を問われる一戦でもあった。
阪神芝外2400mでの開催となった過去8年の
神戸新聞杯で、逃げた馬は[0.1.0.7]、それどころか4角3番手以内の馬の成績が[0.2.2.25]。
先行した馬が押し切るケースが皆無だっただけに
「どうか?」とも感じたが、
リアファルの鞍上
ルメール騎手はさすがだった。好スタートから無理に抑えることなく先頭に立って
1000m通過が62秒4とスローに落とし、②着
リアルスティール以下の追撃を問題にせず、押し切った。
逃げた馬に
34秒1の上がりを使われれば、
リアルスティールがいくらメンバー最速の上がり34秒0で伸びても為す術なしだろう。
ルメール騎手の完璧なレース運びだったといえそうだ。
春シーズンの二冠は同時にJRAジョッキーとなった
M.デムーロ騎手の後塵を拝したが、
ルメール騎手にとっても最後の一冠は譲れないところ。外国人騎手移籍元年となった今年、移籍した二人が三冠を分け合うとしたら、ある意味今年を象徴するクラシックとなるのかもしれない。
では、
リアファルにとって、本番の3000mという舞台はどう出るか。血統を見ると、半兄
クリソライトが
ジャパンダートダービー勝ち馬、母
クリソプレーズの全弟が
ジャパンCダート勝ち馬
アロンダイトで、ダート指向が強い。
リアファル自身も前述したように2走前の
マレーシアCが初芝で、
リアルスティールが
ダービーを走った前の週にダートOP(
鳳雛S)で③着に好走していた。
ところが、そんな馬が秋緒戦の芝重賞で
リアルスティールを下すのだから面白い。例えるなら、高校まで野球をやっていた選手が、Jリーグで得点王になるようなものか。そう考えると、
かなり凄い気がしてきますね(笑)。
近年でダートデビューの
菊花賞馬といえば、06年
ソングオブウインド、97年
マチカネフクキタル、95年
マヤノトップガンがいて、90年
メジロマックイーンもダートでデビュー勝ちしている。
ダートもこなすスタミナがあることは、決してマイナスではないだろう。
今回の結果を受けて、
菊花賞の軸は
神戸新聞杯組の中から選んでいいかどうか、皆さんはどういう印象を持っただろうか。
リアファルが強いと見るか、
リアルスティールが逆転可能と見るか。もしかしたら
ダンスインザダークや
リアルシャダイの血を持つ馬を探し始めた穴党の方もいるかも?
いずれにせよ、今年の
菊花賞はいろいろな意味で興味深いレースになりそうだ。