今も進化を遂げている証となったJRA重賞300勝目
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
黒い布を被せられてゲートに入った
ナムラビクターが、その布を取られた瞬間の顔は、
宝塚記念の時の
ゴールドシップとそっくりだった。
「ゲッ! マジかっ!?」という表情……。そして、大きく出遅れたのも
ゴールドシップと同じだった……。
それでも、
ナムラビクターは最後に
③着まで追い込んできたから驚いた。
斤量58kgを背負い、
メンバー中2位の上がり36秒7を計時したのだから、やはり力がある。気難しさを見せながらも、
驚きの末脚だった。
しかし、今回、それ以上に驚かされたのが優勝した
アウォーディーの強さだった。前走の
オークランドRCTも強い内容だったが、今回はそれ以上の内容で快勝した。
2枠2番という内枠だったので、道中で砂を被ったらどうか……などと不安に思ったが、まったく問題にしなかった。
ヘヴンリーロマンスの仔はダートの方が合うんですかねぇ。
鞍上の
武豊騎手は、前人未到の
JRA重賞300勝達成となった。
重賞だけで300勝もしているのだから、そりゃもうビックリだが、通算では
3758勝目で、つまり、だいたい
12勝のうちの1勝が重賞という事実にも驚かされる。いやはや、凄いですね。
せっかくだから、
JRA重賞300勝の内わけを並べてみよう。
【武豊騎手のJRA重賞300勝】
| 勝利数 |
レース名 |
| 8勝 |
札幌記念 阪神大賞典 |
| 7勝 |
大阪杯 京都大賞典 弥生賞 シンザン記念 |
| 6勝 |
天皇賞・春 京都新聞杯 ローズS アーリントンC きさらぎ賞 チャレンジC |
| 5勝 |
ダービー 天皇賞・秋 桜花賞 阪神牝馬S セントウルS 北九州記念 ラジオNIKKEI杯2歳S |
| 4勝 |
菊花賞 宝塚記念 エリザベス女王杯 JCダート フェブラリーS 京都記念 東京新聞杯 武蔵野S デイリー杯2歳S |
| 3勝 |
皐月賞 ジャパンC オークス 秋華賞 安田記念 NHKマイルC 高松宮記念 京王杯SC 神戸新聞杯 目黒記念 フィリーズレビュー 日経新春杯 金鯱賞 京都牝馬S 京阪杯 マーメイドS クイーンC 小倉大賞典 小倉記念 シリウスS プロキオンS ファンタジーS アンタレスS ガーネットS |
| 2勝 |
有馬記念 マイルCS スプリンターズS 毎日王冠 中山記念 青葉賞 マイラーズC ニュージーランドT フローラS チューリップ賞 毎日杯 札幌2歳S 七夕賞 富士S 共同通信杯 京都金杯 ユニコーンS フラワーC エプソムC アンタレスS CBC賞 東スポーツ杯2歳S 中日スポーツ賞4歳S |
| 1勝 |
ヴィクトリアマイル 阪神3歳S スワンS スプリングS 阪神カップ 京王杯2歳S オールカマー 平安S 函館記念 函館2歳S 東海S 中日新聞杯 中山牝馬S 中京記念 新潟記念 小倉2歳S エルムS クイーンS シルクロードS ダービー卿CT ダイヤモンドS ファルコンS マーチS レパードS 愛知杯 関屋記念 阪急杯 鳴尾記念 京都4歳S クリスタルC ペガサスS 札幌スプリントS |
こうして並べてみると、本当に
たくさん勝っていることがよく分かります(笑)。
調べてみると、この300勝のうち176勝が
1番人気に応えてのもので、今回の
3番人気では26勝目となる。
人気別での勝利数は次の通りだ。
【武豊騎手のJRA重賞300勝】
| 人気 |
芝 |
ダート |
| 1番人気 |
156勝 |
20勝 |
| 2番人気 |
57勝 |
5勝 |
| 3番人気 |
22勝 |
4勝 |
| 4番人気 |
17勝 |
1勝 |
| 5番人気 |
6勝 |
1勝 |
| 6番人気 |
7勝 |
1勝 |
| 7番人気 |
1勝 |
1勝 |
| 8番人気 |
1勝 |
0勝 |
9番人気以下を載せていないのは、勝ち鞍がないからだ。これまでのJRA重賞勝利の最低人気は
8番人気なのだ。さて、これは何か、思い出せるだろうか。
第1ヒント:
昨年のレースです第2ヒント:
勝ち馬は穴ぐさ💨でした(笑)第3ヒント:
東京芝1800mの重賞です正解は昨年の
毎日王冠での
エアソミュールで、同馬は
8番人気・単勝13.1倍だった。
ちなみに、単勝オッズが
15倍以上で勝利したことは3度あり、2014年
チャレンジCの
トーセンスターダム(15.2倍)、2012年
セントウルSの
エピセアローム(16.5倍)、1997年
アンタレスSの
エムアイブラン(16.9倍)だ。20倍を超える馬での重賞勝利がないところが、逆に
武豊騎手の人気を物語っているような気がする。
今回の
アウォーディーは
2枠2番だったが、実は
JRAのダート重賞における
武豊騎手については、こんなデータがあったりする。
【JRAダート重賞での武豊騎手】
| 枠順 |
着別度数 |
| 1枠 |
[0.1.5.9] |
| 2枠 |
[5.1.2.15] |
| 3枠 |
[3.1.1.5] |
| 4枠 |
[7.5.1.10] |
| 5枠 |
[5.2.0.18] |
| 6枠 |
[4.1.1.7] |
| 7枠 |
[6.4.1.9] |
| 8枠 |
[3.1.1.9] |
なんと
1枠では未勝利で、馬番2番での勝利も過去に一度しかなかった(1997年
エルムS・
バトルライン)。
2枠2番での
JRAダート重賞制覇というのは珍しいことだったのだ。
前人未到の記録を塗り替え続けている
武豊騎手だが、インタビューさせてもらうと、
「もっと上手くなりたい」という話をよくされる。その意味ではこうして
内枠で
ダート重賞勝利を飾り、今回は、
今も進化を遂げている証となったのではないだろうか。
まだ勝ち鞍のない
朝日杯FSでの優勝、そして
凱旋門賞制覇と、
武豊騎手には
パーフェクトな活躍をしてほしいと思っている人はとても多いことだろう。
通算勝利数も
重賞勝利数も、誰も手の届かないところまで伸ばしていってほしいものだ。