混沌とした路線を断つ、“マイル職人”となるか
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也
3頭の
NHKマイルC勝ち馬(
カレンブラックヒル・12年、
マイネルホウオウ・13年、
クラリティスカイ・15年)をはじめ、
ダノンプラチナ(14年
朝日杯FS)、
ロゴタイプ(12年
朝日杯FS)と、
5頭のマイルG1馬が集結。これは今年で18回目を迎える
富士Sではもちろん最多となる。
また一方で、
クラリティスカイ、ダノンプラチナを含め、
ヤングマンパワー、ヤマカツエース、アルマワイオリ、グランシルクと、
マイル重賞で連対実績のある3歳馬も延べ6頭が出走してきた。
マイルCSの前哨戦としては、かなりハイレベルなメンバー。そんな中で
単勝2.4倍と抜けた1番人気に推されたのが、4歳馬
サトノアラジンとなった。
「○○が△△に先着(勝利)しているから、○○の方が強い」というのは、競馬に限らずよく聞く論法。もちろん競馬はコースや相手が違うので、それだけでは語れないが、力関係を示すには非常に分かりやすい。
さらに、競馬の場合は一対一ではないので、
「○○が△△に先着していて、さらにその○○に先着した××はもっと強い」となることがある。特に重賞戦線では同じようなメンバーで何回も対戦するケースが多く、
「○○が△△に先着していて、○○に先着したのが××。ただ、△△は××に先着していて……」ということにもなる。こうなると(多くのケースでこうなるのだが)、こんがらがってわけが分からなくなる(笑)。
サトノアラジンは前述のG1馬や3歳馬とはほとんど未対戦。そして、前走の
エプソムC(②着)で先着を許した
エイシンヒカリが
毎日王冠を勝ち、③着
ディサイファが
札幌記念勝ち、
毎日王冠で②着に好走した。元々評価の高い馬ではあったが、重賞未勝利馬だけに
斤量56kgで出られることも含め、このこともさらに信頼度を高める一因になったのだろう。
その評価通り、中団やや後方から進めた
サトノアラジンは、直線で外に持ち出して脚を伸ばす。ここまでは鞍上の
ルメール騎手も計算通りで、実力を発揮しての結果だっただろう。ところが、さらにその外から伸びた
ダノンプラチナ&
蛯名騎手が先に先頭に立ち、最後まで抜かせなかった。
考えてみれば、
ダノンプラチナは古馬とは未対戦だったが、
朝日杯FSで
クラリティスカイを下していて、その
クラリティスカイは前述の3歳馬たちに軒並み先着している。前述した論法を使っても、3歳馬の中では最上位と見ることができた。
しかも、
ダノンプラチナはここまで
マイル戦で3戦無敗だった。
「○○が△△に先着して……」などとやっている横で、
「ごちゃごちゃ言ってるけど、自分はマイルで負けてないんだから一番強いんだけど」と言われたようなもの。もちろん言われていないが、そんな気がした(笑)。
レース後、
蛯名騎手は
「スタートで寄られて後方からになったが、朝日杯FSも後ろからだったのでリズムを崩すよりはいいと思った」とコメントしている。先行して押し切った未勝利戦と
ベゴニア賞、後方から差し切った
朝日杯FSと
富士S。どのような戦法でも、どんな不利があってもマイル戦で結果を出し続ける、まさに職人のようだ。
さまざまな舞台で結果を出すことも価値が高いが、自分のテリトリーできっちり勝ち続けることも難しいもの。現在はまだ混沌としているマイル路線だが、
「○○が△△に…」などと考えなくても、
「ダノンプラチナはマイルで負けてない」の一言で済む時代が来るだろうか。
さらに
蛯名騎手は、
「今後はいろんな競馬ができるようになる」ともコメントしている。そのことによっていろいろな距離をこなせるようになるか、マイルでの安定感をさらに増すかはまだ分からないが、
大きな前進となることは間違いないだろう。
ダノンプラチナの次走は
マイルCSになるか、香港遠征となるかは未定とのこと。香港国際競走の登録はまだ発表されていない(登録期限は26日まで)が、戦績から考えると
香港マイルが有力か。これほどの安定感を見せる
ダノンプラチナなら、どちらでも勝負になっていいはずだ。