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過去の優勝馬3頭を上回る活躍も十分!?
文/浅田知広、写真/川井博


創設からわずか3年にして、出走馬からアユサンレッツゴードンキと2頭の桜花賞馬が誕生したアルテミスS。早くも、クラシックへ向けた重要な一戦としての地位を確立しつつある。

とかなんとか、アルテミスSを紹介すればこんな感じか。しかしアユサンにしても、レッツゴードンキにしても、アルテミスS②着馬だった、というのが、どうも「アルテミスSすげぇ」てな感じにならない要因だろうか。

ちなみに勝ち馬は、コレクターアイテムマーブルカテドラルココロノアイココロノアイ阪神JF③着で、今年のチューリップ賞を制したが、「桜花賞馬2頭!」の②着馬に比べると物足りない。

そんな中身ではあるものの、今年も出走馬の中から、クラシックホースが誕生する可能性も十分にあるこの一戦。その筆頭格は1番人気に推されたメジャーエンブレムで、新馬500万の連勝が非常に強い内容だった。

そして2番人気は、母ダンスインザムードというだけでも注目されるカイザーバル(父エンパイアメーカー)。こちらは新馬勝ち直後だが、②着に4馬身差をつける快勝で素質の一端は見せていた。この2頭から離れた3番人気は、前走未勝利勝ちのビービーバーレル。ほぼ一騎打ちムードのレースだったと言えそうだ。

しかしレースは、その2頭が道中で掛かり気味に位置取りを上げていく、なにやら怪しげな展開になった。先手を取ったのは4番人気のエスティタートだったが、大外のメジャーエンブレムは前に壁がなく、300m通過地点あたりから掛かって3角で先頭へ。また、スタート直後は後方から4番手にいたカイザーバルは、いまひとつ行き脚が悪く、ここで軽く押っつけたら一気に3角3番手である。

もっとも、公式発表の「コーナー」通過順ではメジャーエンブレムが「1-1」、カイザーバルは「3-3」といたってシンプル。スタートから3角までが長いコースでは、向正面の通過順も入れてくれないものだろうか。

ともあれ、人気2頭が先頭と3番手で4コーナーを通過。直線入口では外からカイザーバルが脚を伸ばし始めており、もしコーナー通過順と4角からの映像だけを見たら、何事もなくそのまま一騎打ちになるものと思っただろう。

しかし、あれやこれやとあった上でのこの態勢。結果的に、その過程はカイザーバルのほうに響いており、一騎打ちどころか並びかけるところまで行かずに後退してしまった。

一方、メジャーエンブレムは徐々に後続との差を開き始めたのだが……、なにやら大外に、黄色いメンコをつけてフラフラしつつも伸びてくる馬が1頭。スタートでダッシュがつかず、そのまま後方に控えていた12番人気・単勝82.8倍のデンコウアンジュだ。

前ではメジャーエンブレム以外がひと伸びを欠いたこともあり、デンコウアンジュは残り300mで3番手。その脚色から勝ち負けまで持ち込めるのは明らかで、場内は歓声、声援から一転、「もう馬券はハズレたけど、これどうなるんだ」というざわざわ、どよどよといった雰囲気。最後は内外離れてのゴールになったが、外のデンコウアンジュがクビ差、メジャーエンブレムを差し切っていた。

まずメジャーエンブレムは、負けたとはいえ「アルテミスS②着は桜花賞馬への道」くらいに思ってもいい内容だろう。しっかり賞金も加算して、あとは阪神JF桜花賞と進むのみだ。

一方、キャリアの浅い2歳馬の戦いで「大金星」と言っていいのかどうか、驚きの勝利を挙げたデンコウアンジュ。デビュー2戦目の前走で京都の未勝利戦を勝ち上がり、今回は初の関東への輸送でマイナス18キロでの出走だった。

2戦続けての出遅れ、そしていまひとつ集中力を欠く走りも含め、全部ひっくるめて「まだまだ若い」。それでいてこの競馬なら、気性面が成長してくれば、過去のアルテミスS優勝馬3頭を上回る活躍も十分にある。もちろん、大舞台で再びメジャーエンブレムを下す可能性もあるだろう。

血統面では母のいとこに、福山で活躍したナリタブラックや、珍名馬コレデイイノダの名前も見られる。そして父メイショウサムソンの産駒は、これがJRA重賞初制覇となった。そんなことを調べつつ、ふと「馬名の意味由来」を見れば「冠名+天使(仏)」。3連単51万馬券が当たった人には、まさに天使だったよなあ……。