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ついにそのベールを脱いだアルビアーノ
文/編集部(M)、写真/森鷹史


常に上位人気に推されてきた馬に対しては似つかわしくない表現かもしれないが、ついにアルビアーノベールを脱いだ。そう言いたくなるようなレースぶりだった。

アルビアーノフラワーCを無傷の3連勝で制し、NHKマイルCで②着となっていたから強くないわけはなかったのだろうが、フラワーCで破った馬たちの中からその後に芝1000万以上で勝った馬が1頭だけしか出ておらず、NHKマイルCもスローの流れだったために、本当に強いのかどうか、半信半疑な気持ちを抱いていた。

今回は初の関西遠征に加えて初のふた桁馬番で、同型の先行タイプも複数いたので、どのような競馬をするのかと思っていたが、馬群の中にすっぽりと収まり、折り合いを欠くこともなく、歴戦の古馬のような振る舞いで差し切ってみせた。

過去4度の連対歴が東京中山で、直線に登り坂が待ち受けているコースは問題ないタイプだが、京都芝の外回りコースは直線に登り坂はないものの道中に登って下る坂があり、この存在が彼女にとっては難敵になると思っていた。

どんな距離でもそうだが、京都の下り坂はゆっくり下るのが鉄則だ。ただ、飛びの大きさやその走法によっては、まったく合わないタイプも存在する。

アルビアーノは先行型で、逃げる形ならまだしも、控えたら行きたがる上に下り坂でさらに加速が付き、ハチャメチャになる可能性もあるんじゃないかと思っていた。ところが、そんな疑念はまったくの杞憂だった。下り坂が不安どころか、むしろ得意だったかのような走りだった。

鞍上の柴山騎手によると、「リズムを重視したら、中団になった」とのことだが、道中でのアルビアーノは何度も差す競馬をしてきたかのような落ち着きぶりで、3~4コーナーの下り坂では落とし物を探すかのように下へ下へ走ることもなく、直線入口ではむしろ少し気合を入れられていた。

芝での過去5戦では先行していたので仕方のない面があるのだろうが、最速の上がり3FはNHKマイルCでの34秒4で、どこまで切れる脚を使えるのかについても未知数だった。ところが、道中で脚を溜めた今回は、レース上がりが34秒1と速くなる中、上がり33秒5の末脚を披露して快勝した。

斤量52kgが良かったこともあるのだろうが、アルビアーノは500kgを超える大型牝馬で、斤量が増えても、即座にそれが響くようにも思えない。マイルCS斤量54kgでの出走で、今回同様に流れに乗れれば33秒台の上がりは使えるのではないだろうか。

距離が200m延びてもそれは問題なさそうで、アルビアーノにとって次にクリアすべき課題は、中2週という出走間隔ではないか。

アルビアーノはデビュー戦(①着)以外の4連対が中4~6週の時で(今回のスワンSも中6週)、もっとも間隔が詰まった中3週での関東オークスで④着に敗れている。関東オークスの敗因は距離(2100m)や初ダートの可能性が高いのだろうが、父(Harlan's Holiday)がストームバード系で、祖母の父がダンチヒという馬だけに、間隔が詰まって嫌気を差さないかというのはちょっと気になる。

スワンSで勝利を飾った後は栗東トレセンに入り、栗東滞在マイルCSへ向かうようなので、中2週で栗東トレセンの環境に慣れ、どれだけ疲れを癒して本番へ向かえるか。アルビアーノアメリカ産のマル外馬で、環境の変化にも動じませんでしたという結果になっても不思議ないが……。

1番人気で②着に敗れたフィエロは、外枠でメンバー中最速の上がり33秒2を計時したから、負けて強しの内容だった。ただ、これで重賞では[0.3.2.3]で、またも初タイトルはお預けとなってしまった。

昨年のマイルCSでハナ差②着になった内容を思い返しても、フィエロが重賞級であるのは間違いないところ。何かのきっかけひとつで変わりそうだが……マイルCS重賞未勝利ながら制した馬は95年のトロットサンダーまで遡る(90年以降で該当馬は1頭だけ)。フィエロはデータを覆してG1タイトルを手にすることができるだろうか。