“次”への可能性も感じさせた、似たもの同士の父子制覇
文/編集部(T)、写真/川井博
もうすぐ8ヵ月になる娘と外に出かけることが増えたが、その娘の評価が
完全に分かれている。評価といっても勉強や運動などではなく、顔の話。いわく
「父親似」、
「母親の方が出ている」と、出会う人によってほぼ半々となっている。
男の子ならともかく、女の子の父親としては
「他の何が似ても、顔だけは似て欲しくない」と思うのだが(笑)。実際は、祈るような気持ちで成長を見守るしかないのだ。
その点、今年の
アルゼンチン共和国杯を制した
ゴールドアクターとその父
スクリーンヒーローは、
“いい意味で”かなり似ているのだろう。すでにレース前から話題になっていたが、このレースの見どころのひとつに
“父子制覇なるか”があった。
ゴールドアクターと
スクリーンヒーローは、これまでの戦績もよく似ている。前走で
オクトーバーSを走り、
支笏湖特別を勝っていて、
4歳での臨戦だったことなどでも共通している。
それだけに、ひとつ懸念していたのは、
この日の馬場。
スクリーンヒーローはダートでの勝ち鞍こそあったものの、結果的に
道悪芝では好走できなかった(09年
阪神大賞典が重馬場で④着)。
ゴールドアクターもこれまでは稍重の芝で④②②着と勝ち切れておらず、今回は
初の重馬場だった。
「ここだけは似て欲しくない」という、自分の思いを
スクリーンヒーローも持っていたかどうかは知らないが(笑)、結果的に
ゴールドアクターは、この点もクリアして快勝してみせたのだから見事なものだ。
ゴールドアクターが記録した今回の上がり3Fタイムは
34秒1。これは90年以降に重~不良馬場で開催された東京芝の重賞で、
勝ち馬が記録した上がりタイムとしては最速となる。良馬場の
菊花賞を3分1秒7という好タイムで③着に好走しているように、本来は
軽い馬場に対する適性が高いと思われていただけに、ここで勝ち切ったことは、高い能力の証明でもあるだろう。
ちなみに、この勝利は
ゴールドアクターを管理する
中川師にとってのJRA重賞初制覇だったが、
スクリーンヒーローの
アルゼンチン共和国杯勝ちもまた、同馬を管理する
鹿戸雄師にとってのJRA重賞初制覇だった。この点でも父子は似ている。
アルゼンチン共和国杯といえば、かつてはなかなか
G1に繋がりづらい重賞というイメージがあった。グレード制が導入された1984年以降、このレースを勝った後にG1を制した馬はなかなか出てこなかった。
その流れが変わったのは近年のことで、07年にこのレースを制した
アドマイヤジュピタが翌年の
天皇賞・春を制覇。その後、このレースを勝った後にG1勝ちを果たした馬が3頭出ている。そのうちの1頭が
スクリーンヒーローだ(もう1頭は10年の勝ち馬
トーセンジョーダン)。
スクリーンヒーローは結果的に、
初めてのG1タイトルを鹿戸雄師と父のグラスワンダーにもたらした。
では、
ゴールドアクターは
中川師と
スクリーンヒーローに初G1タイトルをプレゼントできるか。次走がもし
ジャパンCだとしたら、
ラブリーデイという強力なライバルが大きな壁になるだろう。
ただ、
スクリーンヒーローも
ウオッカ、ディープスカイ、メイショウサムソンという
ダービー馬たちをはじめ、
マツリダゴッホ、オウケンブルースリ、アサクサキングスなど、錚々たるG1馬たちを下してのG1初制覇だった。ここまで似ているのだとしたら、
十分チャンスもありそうに思えてくるが……果たして!?