上がり35秒台で差した4歳馬2頭は本番でもお忘れなく
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
今年は不良馬場で迎えた
みやこS。芝に比べ、馬場が悪化しやすいダートコースだが、中央競馬ではダート重賞の数自体がさほど多くない。さて、重賞ではいつ以来の不良馬場かと調べれば、昨年7月の
エルムS以来だった。その
エルムSの①②着馬はといえば、今回4番人気の
ローマンレジェンド、そして3番人気の
クリノスターオーである。
ちなみに、オープン特別も含めると、その
エルムS以降は1度だけ。それが今年8月の
BSN賞で、こちらの勝ち馬は今回の1番人気
ダノンリバティ。単勝10倍を切った4頭(ほかに2番人気
モンドクラッセ)のうち3頭が、
直近2回のダート不良馬場のオープン・重賞連対馬で占められた。
もちろん、馬場以外の要素で予想しても、おおむねそんな感じの人気順になりそうなメンバー構成ではある。それが不良馬場でも問題なしと、安心して買われた面も当然あるだろう。ただ、なにせオープン~重賞での例が少ないだけに、そんなことでいいのか、という
疑問も少々抱えてのレースになった。
ハナを切ったのは、もちろんお馴染み
エーシンモアオバーで、道中のリードは3馬身。人気馬では
モンドクラッセ、
クリノスターオー、
ローマンレジェンドが2~4番手につけ、
ダノンリバティは
BSN賞と同様に中団に待機した。
快調に飛ばす
エーシンモアオバーの1000m通過タイムは、芝並みの
59秒5。しかしこれは、果たして速いんだか遅いんだか。8Rに行われた同じ
ダート1800m戦(1000万)は、
みやこSに近い1000m
59秒3で、完全な
「行った行った」の競馬だった。ただこのレース、その
59秒3で「大逃げ」を打った馬がぎりぎり逃げ込む展開で、決してスローペースの前残りではなかったのだ。
それが重賞のメンバーになってどうなるのか。
カメラが後方に移ると、
ロワジャルダンに3角手前でムチが飛び、
カゼノコも押っつけながら前との差が詰まらない。一方、前では
ダノンリバティが早めに好位の外まで進出。さらに2番手の
モンドクラッセや、その直後の
ローマンレジェンドがまったく楽な手応えで、やはり前が残るのか、という展開にも見受けられた。
こうなると、
脚抜きの良い馬場で、芝にもダートの不良馬場にも実績がある
ダノンリバティが有利なのか、と思いきや。人気どころで真っ先に手応えが悪くなったのが、その
ダノンリバティなのだからわからないものである。
そのわからないついでに、3角では後方で後退しかけていた
ロワジャルダンが、いつの間にか
ローマンレジェンドの内に併せて、残り200mでは差し切ろうかという脚色を見せているではないか。そして外からは、さらに後方にいた
カゼノコの末脚炸裂。最後はこの追撃を
ロワジャルダンがアタマ差でしのぎ、初の重賞タイトルを手中にしたのだった。
終わってみれば、重賞でも1000m
59秒5は速かった。それに加えて、この馬場で後方から上がり35秒台の脚を使えた馬が上位に来た、ということになるのだが。まあ、3コーナーの手応えからすれば、まったく予想のつかないワンツーである。
こうしてあれこれありつつ勝ち切った
ロワジャルダンは、これで
ダート10戦6勝②着2回。昨年は3歳オープンの
伏竜Sで
ランウェイワルツ(昨年の
みやこS②着馬)の②着もあったが、骨折で出世が遅れた形だった。09年の
JCダート③着馬
ゴールデンチケットの全弟でもあり、その
JCダート改め
チャンピオンズCで、
兄を上回る成績を残す可能性も十分にあるだろう。
同じく4歳の②着
カゼノコは、勝ち馬より2キロ重い58キロを背負いながらも、G1馬(
14年ジャパンダートダービー)の底力を発揮した。今年2月の
川崎記念では
ホッコータルマエとも一騎打ちを演じているだけに、
本調子を取り戻したとなればチャンスはありそうだ。
もっとも本番は、ここに
JBCクラシック組の
コパノリッキー、
ホッコータルマエなど年長の実績馬が加わってくる。さらに、
JBCレディスクラシックを圧勝した
ホワイトフーガや、来週の
武蔵野Sを予定している
ノンコノユメ、
モーニンといった3歳馬も注目されるだろう。
その中に入ると、
ロワジャルダンと
カゼノコの4歳2頭は、
少々地味な存在になってしまうだろうか。ただ、この
みやこSは、
創設以来5回のうち4回で、本番の連対馬を輩出している相性の良い前哨戦だ。そして、毎年のように穴馬が1頭くらいは来るのが、
JCダート~チャンピオンズCというレースでもある。そんな穴候補にこの2頭、覚えておくと1ヵ月後にいいことがあるかもしれない。