道悪の福島記念はホントに荒れず驚きの結果に
文/浅田知広、写真/森鷹史
「福島記念」と聞いただけでもう
「わけがわからんレース」という印象で、それに加えて今年は重馬場。いったいどうなってしまうのだ、と思ったのだが。
過去20年、このレースが道悪で行われたことは5回あり、そのうち4回の優勝馬はなんと1番人気。残る1頭も4番人気と、実は
道悪になると、優勝するのは人気馬なのである。近年では11年
アドマイヤコスモス(重・新潟代替)、12年
ダイワファルコン(稍重)が、ともに1番人気で優勝していた。
いやいや、ハンデ戦でこんな結果はおかしくないか。そう思って今度は、95年以降の芝のハンデ重賞・重~不良で調べてみると、該当したのは全部で29レース。そのうち、
半数を超える16レースの勝ち馬が3番人気以内で、残る
13レース中10レースは7番人気以下。
4~6番人気は約1割の3勝しかしていないという、平穏か荒れるか両極端という結果が出てきた。
さて、そんなデータを踏まえて今年はどうなるのか。
福島記念そのものが道悪では荒れていない、という結果からすれば、昨年の優勝馬で1番人気の
ミトラが、その筆頭候補になるだろう。12~13年の
ダイワファルコンに続く連覇となるのかどうか。これに
ヤマカツエース、そして
マイネルミラノがさほど差なく続く1~3番人気だった。
一方、「7番人気以下」のほうは、昼の段階で5番人気から12番人気までが単勝12~18倍台。最終的には少しばらけたが、こっちが来てしまうと、せっかく調べたデータも馬券のヒントとしては使いづらい、といった様相だ。
ちなみに先週の
アルゼンチン共和国杯も重馬場で、1番人気の
ゴールドアクターが勝つ堅いパターンだが、あちらはもともと、そんなに荒れる印象はないレース。
福島記念は違う(荒れる)んじゃないの、と思いつつスタートを迎えたのだった。
先手を奪ったのは、外から15番人気の
フィロパトールと、これに続いて13番人気の
アンコイルド。内から逃げる可能性もあった3番人気の
マイネルミラノは3番手で1コーナーに入り、ほらやっぱり荒れそうじゃないか、という序盤の展開である。
しかし一方で、1番人気の
ミトラは課題の折り合いもクリアして好位を追走。そしてこれをマークするように2番人気の
ヤマカツエースも続き、こちらはこちらで悪くなさそうだ。
そうこうしているうちに、3コーナー手前で馬群が一気に固まり、その直後にじわじわと
ミトラが3番手まで進出。そして
ヤマカツエースも外からまくり気味に上がって行き、さらに
ミトラの直後には、ハナを切れなかった
マイネルミラノ。直線に向くと、真ん中に
ミトラを挟んで、内に
マイネルミラノ、外に
ヤマカツエースと1~3番人気がずらりと前を固める態勢に。さすがにこれは、後からなにが来たって
大波乱なんてあり得ない展開だ。
結局、この争いから
マイネルミラノは脱落したものの、そのまま
ミトラと
ヤマカツエースの一騎打ち。最後は外の
ヤマカツエースがひと伸びしてこの争いに決着をつけ、いや、
道悪の福島記念はホントに荒れないんだ、というまったく驚きの結果だった。
ともあれ、
ヤマカツエースは春の
ニュージーランドT(稍重)に続く重賞2勝目。当時の
インプレを読み返せば
「NHKマイルCでは東京の馬場がカギになるが、ひと雨あるようならもちろん有力」とあった。その
NHKマイルCは良馬場で
⑬着、前走の富士Sも
⑬着大敗を喫したが、その間に洋芝の
函館記念で
③着、
札幌記念では
僅差④着と健闘していた。そして今回、重馬場になって再びの重賞制覇。今のところは、なんともわかりやすいタイプだ。
ただ
「道悪と北海道のスペシャリスト」では、活躍の場が限られる。まあ、そんな個性派も悪くないが、馬券を買う側にとっても
「わかりやすいけど、みんな知ってるから儲からない」というパターンになってしまう。まだ3歳だけに、ここからもうひとつ速い脚を使えるようになるのかどうか、今後の成長にも期待したい。
一方、敗れた
ミトラ。昨年制したこのレースが初の2000m戦で、その後も中距離で
②⑤③着ときて今年は
②着。脚部不安もあってあまりレースを消化できなかったが、少しくらい折り合いに不安はあっても、この条件できっちり結果を出し続けている。
有馬記念の2500mとなれば話は別だが、今年②着の
アメリカJCCあたりは再びチャンスもあるだろう。
いやしかし。こうして終わってから①②着馬について書いてみると、別に
「驚き」でもなんでもないんだよなあ、と。もちろん、人気馬なのだから当たり前といえば当たり前。しかしそれでも、あれこれ考えさせられてしまうのが、また
福島記念の
やっかいなところなのだ。