“マツクニ・ブランド”から名馬候補がまた1頭誕生した
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也
近年は
2歳路線に大きな変化が起きている。最近に開催条件などの変化があった重賞といえば、今年で4回目を迎えた
アルテミスS、昨年から重賞となった
サウジアラビアロイヤルC(昨年は
いちょうSとして開催)、
京都2歳S、そして昨年から
ラジオNIKKEI杯2歳Sに代わって重賞となった
ホープフルSがある。
この状況、友人に言わせれば
「JRAは“番組の充実をはかる”とよく言うけど、充実じゃなくて乱立じゃないか?」となるのだが、今年の2歳重賞が軒並み少頭数となっている現状や、今年のクラシック戦線を見ると、
その意見にも一理あると思わざるを得ない。
今年の牡馬クラシック3レースで③着以内に入った馬を見ると、二冠馬
ドゥラメンテをはじめ、
9頭中8頭が2歳重賞に不出走だった馬。前述したように昨年から重賞が増設されたにもかかわらず、
2歳重賞に出た馬がなかなか結果を残せていないのだ。
そんな中で、唯一気を吐いたのが
ダービー③着馬
サトノクラウン。同馬がデビュー2戦目で初重賞制覇を飾ったのが、昨年の
東京スポーツ杯2歳Sだった。
過去10年の
東京スポーツ杯2歳S勝ち馬を見ると、10頭中6頭(
フサイチリシャール、ナカヤマフェスタ、ローズキングダム、サダムパテック、ディープブリランテ、イスラボニータ)がG1馬になっていて、9頭が後にG1で③着以内に入っている。
“2歳重賞乱立”の時代にあっても、
このレースだけは価値を失っていないようだ。
そして、今年勝ったのは
スマートオーディン。デビュー2戦は出遅れや不利などがあって差す形になっていて、今回も行き脚がつかずに後方2番手から。直線入口でフラつき、ゴール前で内にヨレる面を見せつつも、鋭く差し切った。
今後に向けての課題は、今回も垣間見せたような
気性面の成長か。父が
NHKマイルC勝ち馬
ダノンシャンティだから、距離延長への対応もカギを握りそうだ。
スマートオーディンを管理するのは
キングカメハメハなどが辿った
“変則二冠”ローテで知られる
松田国師だけに、今後どのような路線を歩むかにも注目したい。
松田国師といえば、自分が何度かお目にかかった時も再三仰っていたが、
「種牡馬作り」を厩舎の目標に掲げている。その言葉通り、
キングカメハメハ、タニノギムレットなど、同厩舎を巣立った種牡馬は
“マツクニ・ブランド”と言ってもいいほどの活躍を見せている。
そして、このレースでも出走11頭の父を見渡すと、現役時代に同厩舎所属だった馬が3頭もいた(
キングカメハメハ、ダノンシャンティ、トーセンファントム)。その中で、自身が管理する
スマートオーディンを勝利に導いたのだから、さすがといったところか。
スマートオーディンが
“マツクニ・ブランド”の流れに続けるだろうか。
一方、②着
プロディガルサンは切れ負けの形になったが、それだけに距離延長への対応力はありそう。⑧着に敗れた
ロスカボスはデビュー2戦が大きく出遅れながらの差し切りだったが、今回はこれまでにない
「お行儀の良い」スタートを切ったことで、馬がリズムを崩した面もあったのだろうか。
東京スポーツ杯2歳Sは敗れた馬からも後の活躍馬が出ていて、昨年の
ダービー馬
ワンアンドオンリーをはじめ、
マイネルホウオウ、ジャスタウェイなどがこのレースで馬券圏外に敗れている。
勝った馬も敗れた馬も、まだまだ2歳で、伸びしろを十分に残している。
“あのレースを経験したことで後のG1制覇に繋がった……”となる可能性は、十分にあるだろう。ここに出走した馬たちは、それぞれ今後も注目する価値があるのではないだろうか。