上位2頭は同列に扱っていくのが良さそうだ
文/編集部(M)、写真/森鷹史
先に抜け出した
サトノルパンに、断然の
1番人気に推された
ビッグアーサーが襲い掛かった。最後は文字通りの
“首の上げ下げ”になり、勢いは
ビッグアーサーが優勢に見えたが、
サトノルパンの頭が下がったところがゴールだった。
アタマ差で
サトノルパンが
重賞初制覇を果たした。
好位のインに付けて抜け出した
サトノルパンは、終始スムーズなレースをしたように見えたかもしれないが、
決してそうでもなかった。スタート直後に前にいたのは
ビッグアーサーの方で、
サトノルパンは
出負けする感じだった。
ところが、3コーナー手前で内から
サトノルパンがスルスルと上がって行き、
ビッグアーサーの前に出る。3~4コーナーでは、内ラチ沿いの前に
サトノルパンがいて、それをマークするように
ビッグアーサーが続いた。
直線に入ると、
サトノルパンがいち早く仕掛けたのに対して、
ビッグアーサーは他馬を捌くのにやや手間取った。結果的に
その差が明暗を分ける形になった。
VTRを眺めると、
レースは不思議なものだなあと実感する。
サトノルパンはスタートだけを見ると、
決してベストとは言えなかった。それでもそのことが災いせず、むしろスタートでちょっと遅れたことでその後にスムーズに流れに乗れたようにさえ見える。
サトノルパンは
勝つべくして勝ったと言えるのかもしれない。
ビッグアーサーはツイてなかった……。
今回と同じメンバーでもう一度レースをしたら、それでも
ビッグアーサーが
1番人気に推されそうだ。しかし、今回の
サトノルパンも、ただツイてただけで勝利したわけではないだろう。レースのラップとタイムを見て、そう感じた。
34秒0-44秒9-56秒1という流れを好位に付け、
上がり33秒1でまとめた
サトノルパンが強くないはずがない。
京阪杯は
1分8秒台前半の決着も珍しくないのだが、
サトノルパンは
1分7秒4で走破した。これは
京阪杯が芝1200mに替わってからの
1位の時計になる。
もちろん
上がり32秒8で猛追した
ビッグアーサーの強さも本物だろう。③着以下に3馬身半以上の差を付けたこの2頭は、
今後のスプリント戦線で同列に扱っていった方が良いのではないだろうか。
レース後の正直な感想は、
「ここもディープインパクト産駒が持っていくかぁ」だった。およそ30分前に終わった
ジャパンCが
ディープインパクト産駒のワンツーとなったが、過去にも同じ事例はあり、そっちは驚かなかった。
芝1200mの重賞であるこっちはそう簡単じゃないだろうと思っていたのだが、
ジャパンCの半分の距離の重賞も
ディープインパクト産駒(
サトノルパン)が勝利して、唖然とさせられた。
サトノルパンは父
ディープインパクト×母
エリモピクシーという配合で、ご存知の通り、
リディル、
クラレント、
レッドアリオンの弟にあたる。
リディルは
スワンSと
デイリー杯2歳Sを勝ち、
クラレントは
関屋記念など重賞を6勝、
レッドアリオンも今年の
マイラーズCと
関屋記念で優勝していて、今回の
サトノルパンで
4きょうだいが重賞を制覇する快挙となった。
ディープインパクトが凄いのか、それとも
エリモピクシーが凄いのか。
ディープインパクト産駒はこれでJRAの重賞が
105勝目となった(今年の
ジャパンCが104勝目)。2400mの重賞では10勝を挙げているのに対して、1200mの重賞は3勝目、しかも
男馬で1200m重賞を制したのはサトノルパンが初めてなので、珍しさで言えば
ジャパンCよりも
京阪杯の方が上だろう。
これまで
JRAのG1では
28勝(障害を除くと27勝)を挙げていて、1600mで13勝、2000mで4勝、2200mで2勝、2400mで7勝、2500mで1勝だ。1200mの
スプリンターズSと
高松宮記念では、それぞれが[0.0.1.3]で、
菊花賞では[0.2.1.16]、
天皇賞・春では[0.1.0.6]という結果が残されている。
ディープインパクト産駒は、
短距離G1と長距離G1のピースが残っているわけだが、
ディープインパクト自身が
菊花賞と
天皇賞・春を勝っていて、
時間の問題なのは長距離G1の方だと思っていた。しかし、
サトノルパンのような存在が出てくるとなると、その見立ても改める必要がありそうだ。凄い種牡馬ですねぇ。
国内の芝1200mのG1は、次は来年の
高松宮記念になり、ちょっと先のように感じるが、実は
あと4ヶ月でやってくる。
サトノルパンも
ビッグアーサーも、今後の一戦一戦が大事になっていきそうだ。