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人馬ともに中山を味方につけての大激走
文/編集部(T)、写真/森鷹史


何はなくとも、まずはラップを見るところから始めなければいけないだろう。今回のターコイズSのラップは、以下の通りとなった。

12.6-11.2-12.1-12.5-12.7-12.0-11.1-11.5

8ハロンのうち、12秒を超えるラップが5つで、前半600m通過が35秒9800m通過は48秒4。中山芝1600mの重賞で前半800mが48秒4より遅くなったのは、90年以降では一度のみ(09年フェアリーSで48秒6)。古馬混合戦では初で、昨今の“スローペース症候群”の中にあっても、「ど」が付くほどの記録的なスローとなった。

そうなると、当然前に行った軽ハンデ馬が有利となる。2番手にいた11番人気シングウィズジョイ(53kg)が押し切り、その後ろで進めた16番人気ダンスアミーガ(53kg)が②着、逃げた15番人気のオツウ(52kg)が③着に粘り、3連単の配当が295万円を超える大波乱となった。

ちなみに、重賞でふた桁人気馬が馬券圏内を占めたのは13年愛知杯以来で、やはり年末の牝馬ハンデ重賞だった。この時期の牝馬重賞が荒れやすい理由として、ハンデ戦ということだけでは説明しづらい感じもする。古馬牝馬G1は来年のヴィクトリアマイルまで半年近くの時間があり、明確な目標を定めづらいこともあるのだろうか。これは1月開催に移った愛知杯の傾向も見てみたいところだ。

そして、今回シングウィズジョイに騎乗していたのは現時点でリーディングのトップを走る戸崎騎手だ。今年は中山芝1600mの特別競走で前半800m通過が48秒0以上だと②①①②着。この4戦すべてで4角4番手以内の競馬をして、フェアリーSではローデッドを8番人気②着に導くなどしている。

今年、特に中山ではスローペースが目立つが、戸崎騎手かなり前を意識しているように見える。それは、同騎手の中山1600mにおける成績を昨年と今年で比較してみると明らかになる(2015年は12月20日まで)。

2014年
[4.1.2.22](複勝率24.1%)
4角5番手以内…12回(全騎乗29回)

2015年
[8.10.4.16](複勝率57.9%)
4角5番手以内…20回(全騎乗38回)

成績も飛躍的に伸びているが、2014年ではこのコースでの全騎乗回数に対して4角5番手以内の競馬をしたのが44.4%なのに対し、2015年では52.6%と、勝負所で前にいる傾向が強まっている

今回は序盤から2番手につけられたが、前述のローデッドの場合は道中の位置取りが「14-2-4」というもので、レース序盤は中団~後方にいても、ペースが遅いと見れば積極的に前へ進出するケースも散見される

乗っている馬の脚質が違うので一概には言えない部分もあるが、このような積極性が、スローペースでの前残りが多い近年の傾向にマッチしたという面もあるのではないだろうか。

そして、中山を味方につけたという面ではシングウィズジョイも同じだろう。中山は今回が初めてだったが、穴ぐさ💨コメントにもあったように、休み明けを除く阪神&中京が②①②④①着だった。

「そういえば……」と思って調べてみると、シングウィズジョイの母シングライクバードも中山&阪神が休み明けを除くと②③③②①着で、08年フラワーCで③着に好走。祖母シングライクトークも中山&阪神で③①①①②②着、曾祖母フリートークも中山は不出走だったが、阪神は桜花賞で1戦して③着に好走している。代々急坂を大得意にしている一族だったのだ。

シングウィズジョイはまだ3歳。シングライクバードシングライクトークはともに5歳一杯まで現役を続けており、息の長い活躍をする一族でもあるだけに、今後も急坂コースでは注意したい。