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見事に雪辱、今後のレース選択も楽しみに
文/浅田知広、写真/森鷹史


06年に創設され、今年で10回目を迎えた阪神C。1400mがベストの馬にとってはG1のようなもので、札幌記念と並ぶ古馬G2最高賞金……、だったのだが、昨年までは。

今年は他の多くのG2が数百万円上がったのに対し、この阪神Cは6500万円に据え置き。毎日王冠など7レース横並びの、2位タイに少々格下げになってしまった。昨年から2歳G1級の賞金になったホープフルSが2年目の今年、まさにG1級のメンバーが揃って、G1昇格の構想も現実味を帯びてきたのとは対照的だ。

ちなみにここ6年はというと。第4回からキンシャサノキセキサンカルロ、そしてリアルインパクトと、いずれもG1で好走実績を持つ馬が連覇を達成。距離適性云々以前に、G1で勝負になるくらいの馬しか勝てないという点で、高額賞金G2にふさわしかった、とも言えるだろう。

ただ、今年は賞金据え置きのせい、というわけでもなかろうが、彼らに並ぶほどの実績を持つ人気馬は見当たらず。まず1番人気のビッグアーサーは、勢いこそあれG1どころかG2すら未経験。2番人気のウリウリはG2で②着まで。そして3番人気のロサギガンティアは、G2勝ちこそあれ3歳1800mのスプリングS、といった具合である。

ほかには、昨年のマイルCSを制したダノンシャークをはじめ4頭のG1連対馬が出走していたが、近走内容などからいずれも4番人気以下だった。それでもまた実績馬が勝つなら波乱……、というパターンに期待したのだが。

好スタートから先手を奪ったのは3歳のアクティブミノル。これにテイエムタイホーなどが続いて、人気どころはビッグアーサーが初距離のせいか好位のインで掛かり気味。その外で、1400m以上の経験が豊富なロサギガンティアも、少々行きたがっていた。一方、ウリウリは後方のインでいつもの末脚勝負だ。

最初の1ハロンが12秒5と遅かった分もあり、前半の600m通過は34秒8と遅めの流れ。前が残りそうだが、道中の折り合いが末脚にどう影響するか、という展開になった。

そして直線に向くと、まず外のロサギガンティアが先に抜け出した。そしてビッグアーサーは内をさばいたものの、距離か折り合いか、それとも格か、ゴール前強襲を見せた前走・京阪杯(②着)ほどの脚は見られない。かわって大外から伸びてきたのは、7月のCBC賞②着以来となるダンスディレクターだった。

残り200mを切ってからは、馬場の中ほどでロサギガンティアM.デムーロ騎手と、ダンスディレクター浜中騎手の激しい追い比べ。一瞬は外のダンスディレクターがわずかに前へ出たようにも見えたが、最後はクビの上げ下げでゴール板を通過。わずかに内のロサギガンティアが先着した。

12~13年とマイルCS組が上位を独占したこのレースだが、昨年は一転して別路線組。冒頭で挙げた実績面やら、距離ばかりを気にしてしまったが、さらにふたつ、忘れてはならない材料があったのを思い出した。まず、このレース連覇を果たした3頭はすべて関東馬(過去9年[6.7.3.41]連対率22.8%)だったこと。そして7~8枠が計[4.7.4.38]連対率20.8%の好成績を残していたことだ。

結局、終わってみれば今年3頭しかいなかった関東馬の1頭、ロサギガンティアオレンジ帽の7枠で優勝。そして大接戦を演じた②着ダンスディレクター8枠だ。毎年難解な阪神Cの中では獲りやすい年だった、ような気もしなくもない。

ともあれロサギガンティアは、14年のスプリングS以来となる重賞2勝目。先にG1実績がないようなことを書いてしまったが、NHKマイルCでは、ミッキーアイルなどと大接戦の「④着」もあった馬だ。昨年は初の1400m戦ながら2番人気に推されたが、結果は着大敗。その後、この距離のオープン特別で③①着と実績を重ね、今回は見事に雪辱を果たす一戦となった。

これでここ3戦連続稍重で③①①着。2歳時の未勝利勝ちも稍重と、1400m巧者というより稍重巧者か、という戦績だ。ただ、NHKマイルC富士Sの僅差④着は良馬場で、軽い馬場がまったくダメということはないだろう。

同じフジキセキ産駒キンシャサノキセキは、6~7歳時にこのレースを連勝し、7~8歳時は高松宮記念連覇を達成。一方、ロサギガンティアはまだ4歳。デビュー当初の活躍から、少し中休みがあったところもキンシャサノキセキに似ており、今後これまで以上の走りをする可能性も十分にある。それがマイル路線になるのか、それとも未経験のスプリント戦になるのか。来春のレース選択も楽しみだ。