見事な「逃げ切り」で初の重賞タイトルを獲得
文/浅田知広、写真/森鷹史
先日に行われた
シンザン記念は、年によって出走頭数が大きく異なるレースで、18頭のフルゲートで行われた今年は、ゴール前で手に汗握る大接戦となった。
一方、その翌日に行われる牝馬限定・
フェアリーSは毎年フルゲート。この時期のマイル戦になって今年で8回目を迎えたが、過去7回はすべて16頭立て、除外・取消なしの満枠で行われていた。
もちろん今年の
フェアリーSも16頭立て。そして、いちばんの問題になったのは、
難コース(?)中山芝1600mでやっぱり枠順だった。2勝馬1頭(
クードラパン)でそもそも混戦模様なところに、
競馬週刊誌などで印が厚めだったその
クードラパンや、
リセエンヌなど、上位人気が予想された馬の多くが外枠を引いてしまったのだ。
ちなみに過去7年、
優勝馬7頭はすべて5枠(9番)以内。6~8枠で5番人気以内に推された馬も10頭いたが、
[0.2.2.6]と、まったく勝てていないのである。ヒモ候補としては捨てられないものの、とりあえずアタマは内枠。上位人気の中では唯一内めを引き当てた、
ビービーバーレル(3番人気)あたりに目をつけつつ発走を待った。
スタートは、ゲートに
不安を抱える6枠12番の1番人気
リセエンヌが出遅れ。一方、内では2~3枠の4頭が好ダッシュを決め、中でも
ダイワダッチェスが先手を取るかに見えたが、どうやら行く気がなかったようで、その隣から
ビービーバーレルが先導する形となった。
もっとも、外めを引いた人気どころも、2コーナーまでに前々につけられればさほど
不利にはならない……はずなのだが、前へのつけ方が大問題。好位置を取りに行った分なのか、
クードラパンはガツンと掛かって2番手へ。その後ろでは2番人気の
シーブリーズラブも苦労しながら抑えているなど、折り合いを欠く馬も多数見られた。また、1番人気の
リセエンヌは後方で落ち着いているように見えたが、そもそもスタートで少々
ロスを喫している。
とにかくごちゃついたレース展開の中、前を行く
ビービーバーレルのペースは600m35秒5。そこからさらに12秒台2連発とペースを落とし、1000mは59秒6のスローである。過去3年59秒7以上なのだから例年並みとも言えるが、
この3年のうち2回は逃げ切り勝ちだ。
こうなると、あとは仕掛けのタイミングだけ。あまり溜めすぎると、切れる差し馬勢にやられるケースもあるものだが、
ビービーバーレルの
石橋騎手はヘンな欲を出さずに、4コーナーから仕掛けていって勝負あり。いったんは2番手から
クードラパンが並びかけたものの、前半に掛かった分だけ、中山の急坂でなかなか踏ん張りは効きづらい。
残り200mを切ると、再び
ビービーバーレルが後続を突き放してセーフティーリード。そして、脚が上がった
クードラパンの内と外から襲いかかったのは、好ダッシュから好位に控えていた2~3枠
ダイワダッチェスと
ダイワドレッサーだった。
そんな同じ勝負服の②着争いを尻目に、
ビービーバーレルは最後までしっかりと脚を伸ばして快勝。昨年開業したばかりの
中舘厩舎に、
お見事「逃げ切り」で初の重賞タイトルをもたらしたのだった。
また、
父パイロの産駒もJRA重賞はこれが初勝利。ダート巧者が多い印象で、
シゲルカガによる
北海道スプリントCなど、地方での重賞勝ちはあったものの、
中央の初タイトル獲得は芝となった。
そんな血統背景も含め、4コーナーからのスパートで後続を突き放しに出たのは、
石橋騎手の好判断だったと言えるだろう。逆に言えば、
桜花賞の阪神外回りコースになると、いかに差し馬を抑え込むかが課題になる。480キロ台と馬格はあるだけに、パワーを要する馬場になれば注目の存在だ。個人的には、
関東オークス(川崎)あたりに出てくれればぜひ買ってみたい。
買うといえば。先に触れたように、今回も
ビービーバーレルを軸にして買っていたのだが。なんたることか「②~③着なら外枠もあるからね」などと、余計なことを考えたこの判断の悪さ。行くなら行くと度胸を決めた
石橋騎手のように、内なら内と決めてかかる
度胸も馬券には必要だ。