明け5歳馬でもバウンスシャッセの底力が一枚上だった
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
1994年に
日経新春杯と
京都記念の施行条件がまるまる入れ替わったことがあり、その発表を聞いたときには一瞬
「だったら京都記念を1月にやればいいじゃん」と思ってしまった。もちろん
「新春杯」を2月にやるわけにはいかないので、条件だけを入れ替えた結果である。
と、書き始めると、
日経新春杯のインプレかと勘違いされる方もいそうだが、こちらは前日の
愛知杯。
ターコイズS重賞昇格のあおりを受け、今年から1月になったこのレース。1月には中山開催だってあるのだから、
愛知杯は12月に据え置いて、新設重賞の
ターコイズSを1月にやればいいじゃないか。20年以上の時を経て、また同じようなことを思ってしまったのだった。
「新春」に比べるとわかりづらいが、
ターコイズ(トルコ石)は12月の誕生石。そのため
愛知杯が1月にやってきた、という形である。もっとも、
ダイヤモンドS(4月の誕生石)が今や冬の名物重賞と化しているのだから、
「新春杯」ほどこだわらなくてもいいような気も少々。ともあれ、今年は1月の
愛知杯だ。
繁殖入りも視野に入る古牝馬にとって、12月ではちょっと早すぎる感もあったが、この時期なら準備期間も含めてちょうど良いくらいだろうか。また、
秋華賞組を中心とした3歳勢と古馬との初対決(
女王杯出走級は別にして)という見どころが削がれるかとも危惧したが、今年は単勝10倍以下に4歳馬と5歳馬が2頭ずつ。
明け4歳馬対古馬勢という構図がしっかりできあがった。
ちなみに、12月の
愛知杯なら4歳馬、1月下旬~2月上旬の
京都牝馬Sでは明けて5歳馬の好走確率が高い、という傾向だ。
レースは、意外にも3頭しか出走馬がいなかった
「ターコイズS」組の
オツウが先導する形。人気どころでは、1番人気の
シュンドルボン(5歳)が好位につけ、その直後をぴったりマークするように2番人気の
マキシマムドパリ(4歳)。さらに直後の内に3番人気の
ハピネスダンサー(5歳)、4番人気の
アースライズ(4歳)と続いていった。
全体的にはやや縦長の展開となり、前半の1000m通過は59秒2。冬の開幕週で馬場状態は読みづらいが、9Rの500万・芝2000mは61秒2でも差し決着。いくらオープンとはいえ、遅くはないことだけは明白だった。
そんな流れの中で、結果的には
強気すぎる競馬になったしまったのが人気の
シュンドルボン。直線入口で早くも先頭に立ち、長い直線を持ちこたえられなかった。そして、
シュンドルボンを直線半ばでタイミング良く交わしたかに見えた
アースライズでも、まだワンテンポ速すぎた。
ゴール前、その外から併せ馬の形で追い込んできたのは、4角10番手以下の後方待機組・
バウンスシャッセと
リーサルウェポン。重賞2勝・トップハンデ55.5キロの
バウンスシャッセ(8番人気)と、1000万を買ったばかりでハンデ50キロの
リーサルウェポン(5番人気)。同じ明け5歳馬でも対照的な存在の2頭だったが、ここは
バウンスシャッセの底力が一枚上回る形。最後は混戦から1馬身1/4抜け出し、昨年の
中山牝馬S以来となる勝利を挙げた。
同じ5歳馬でも、昨秋までに条件戦を連勝して勢いが感じられた
シュンドルボンや
ハピネスダンサーでもなければ、このレースでは通用している「前走1000万組」の
リーサルウェポンでもなく、
マーメイドS以来の休養明けだった
バウンスシャッセ。それだけなら、まだ実績には注目できたが、レース前に発表された馬体重は、なんとプラス22キロの540キロ。明け5歳馬には注目していたものの、体重まで見て
「バウンスシャッセだけは要らんだろ」。もうごめんなさい、と言うほかはない。
バウンスシャッセはこれで、3歳時の
フラワーC、昨年の
中山牝馬Sに続くG3・3勝目。G1でも
オークスでヌーヴォレコルトからクビ+クビ差の③着もあり、条件さえ揃えばもっと強敵相手にも勝負になるだろう。報道によれば、現時点では
ヴィクトリアマイル直行か、その前に
福島牝馬Sか、とのことだが、超・強敵相手でも条件は向きそうな
中山記念でひと勝負、というのも見てみたいところだ。