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乱ペースに動じず、自分の競馬に徹しての勝利
文/編集部(T)、写真/森鷹史


14~15年の日経新春杯アドマイヤフライトフーラブライドが着順を入れ替えて②&③着に入ったように、このレースはリピーターが多い。今年の出走馬12頭のうち、日経新春杯に出走経験がある馬が6頭(サトノノブレス、ダコール、メイショウカンパク、アドマイヤフライト、メイショウウズシオ、コスモロビン)いたので、自分は「今年も似たような結果になるのか?」という点から予想を始めることにした。

が、途中で「これは厳しいかも……?」と思い直した。それはシュヴァルグラン、レーヴミストラルという4歳馬2頭がいたからだ。

そのうち、1番人気に推されたのがシュヴァルグラン。昨年夏まで芝1800~2200mでなかなか勝ちきれなかった馬が、芝2400mに距離が延びて3連勝。今回は昇級での重賞挑戦となった。

そのシュヴァルグランハンデは54kg。前走のオリオンS(準OP)もハンデ戦で54kgだったが、それが3馬身差の圧勝で、繰り出した上がりはレース全体のそれ(36秒1)より1秒5速い34秒6。まさにモノが違うといった内容で、準OP→重賞での斤量据え置きもある程度納得いくものだった。

一方、レーヴミストラルは後方一手の戦法をとる馬の宿命か、重賞では①⑨③⑧着と不安定な成績。とはいえ2走前のアルゼンチン共和国杯(ハンデ55kg、③着)から1kg重い56kgでの出走となった。

ただ、これにも納得せざるを得ない理由があった。アルゼンチン共和国杯を勝ったのはご存じゴールドアクターで、その後有馬記念を制覇。レーヴミストラルはそこで負けたにもかかわらずハンデ増となったのは、そのあたりもあったのではないか。

シュヴァルグランヴィルシーナの弟、レーヴミストラルレーヴディソールなど、兄姉から重賞勝ち馬が多く出ていて、血統も筋が通っているだけに、さすがにこの2頭は堅いのでは……?と感じたのだ。

果たして、今年は明け4歳馬の強さが際立つ結果となった。

レースを制したのはレーヴミストラル。その鞍上・川田騎手は、内心ガッツポーズをしたかもしれない。それはゴールする瞬間ではなく、3コーナー手前の時点だ。

今回のラップを見ると、前半1000m通過が62秒0、1200m通過が74秒4、残り1000mとなる1400m通過が87秒2。これは過去5年の日経新春杯ではもっとも遅いペースとなった。

このままでは前有利の展開か……と思われたところで、マクリ気味に先頭に立ち、後続を突き放したのがメイショウウズシオ。ここで一気にペースが速くなり、最後の5ハロンのレースラップは11秒6~12秒0が連続する形となった。

最後方から進めたレーヴミストラルにとって、これはおあつらえ向きの展開。直線で大外に持ち出されると、一気に差し切った。

レース後、川田騎手「馬のリズムを大事にした」という趣旨のコメントを残したが、明らかなスローペースだったレース前半でもいたずらに動かず、最後方で脚を溜める自分の競馬に徹した川田騎手のファインプレーもあったのだろう。

前に行ったサトノノブレスが③着、ダコールが④着に粘っているだけに、メイショウウズシオの動きがなかったら届いていたかは分からない。しかし、“勝つ時はすべてがうまくいくもの”ということを再認識させられる結果ではあった。

レーヴミストラルを管理する松田博師は今年2月で定年を控えており、残り数少ない重賞制覇のチャンスをものにしたのはさすがといったところ。今後はもう一度出走機会があるか、次走から別の厩舎でG1制覇に挑むのかは分からないが、いずれにしても今後の展望が大きく開ける勝利なのは間違いないだろう。

一方、これまでは最後方追走の競馬で連勝してきたシュヴァルグランだったが、今回は中団からの競馬で伸び切れず②着。ただ、これは人気を背負っただけに責められないところではないか。今回は2kgのハンデ差があったが、まだ勝負付けは済んでいないと見たい

ところで、冒頭で日経新春杯はリピーターが多い」と述べたが、今年も③着にサトノノブレスが入り、14年①着に続いて2度目の好走となった。今後もこの傾向が続くのか、来年以降も注目したいですね。