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G1連対馬が本領発揮、春の大一番も楽しみに
文/浅田知広、写真/森鷹史


重賞競走も数あるが、大ざっぱに「よく条件が変わるレース」(鳴尾記念など)と、「あまり条件が変わらないレース」(主にG1)に分けられる。この京都牝馬Sはその後者。第3回から京都の芝1600m、そして80年代前半から1月下旬~2月上旬と、当方が競馬を見始めてから変化のないレースだった。

ところが今年。ターコイズSの重賞昇格に伴って、ところてん式に施行時期が繰り下がり、距離も1400mへと短縮。ついにこのレースも条件が変わってしまった。

ちなみに、京都牝馬Sの①~③着馬は過去10年、同年のヴィクトリアマイル[0.3.0.12]。昨年9番人気で優勝したケイアイエレガントが、ヴィクトリアマイルで12番人気②着と激走したのは記憶に新しいが、参考になるんだかならないんだか。

過去10年の出走全馬は同年のヴィクトリアマイル[1.3.3.32]で、勝ったのはこのレースでは⑨着だったコイウタである。こんな数字を見ると「ヴィクトリアマイル路線」としては阪神牝馬Sに1600mの距離を譲り、こちらは1400mにするのも悪くはないのか、という気もしてくる。

ともあれ、1400mになった京都牝馬S。スタート地点に少々違和感を覚えつつゲートが開けば、内からダンツキャンサーレオパルディナフレイムコードと穴っぽいところが先行策。これを前に置いて、1番人気のクイーンズリングが好位を確保。距離こそ違えど一昨年の覇者ウリウリと、ウインプリメーラもその内で併走し、その直後にマジックタイムスナッチマインド。上位人気では唯一、ウキヨノカゼだけが後方追走になったが、他の各馬はほぼ好位から中団に固まって3コーナーへと向かっていった。

雨で悪化していく中での重馬場と、ペース判断は難しかったが、前半の800m46秒9で、上がりの800mが47秒7ならやや速め。ただ、なにせ見た目上も「重馬場らしい重馬場」になっており、展開やら切れやらよりも、要求されるのは渋太さ、粘り強さ、底力だ。

直線に向くと大外から内によれつつ、一気にスナッチマインドが先頭へ。良馬場ならおそらく、このまま堂々押し切る可能性もある競馬だったに違いない。しかし、内ラチ近くまで切れ込んだところで脚色はいっぱい。代わって馬場の中央から豪快に伸びてきたのはクイーンズリングだった。

さらにその後ろからマジックタイムが脚を伸ばし、ゴール前はもう一度順番が変わるか、という見せ場までは作ったものの②着まで。昨年の秋華賞②着馬、そしてこの距離ではフィリーズレビューを制していたクイーンズリングが、ふたつめの重賞タイトルを手中にした。

どちらかといえば追い込み型の印象もあった馬で、今回もスタート直後は10番手あたり。ただ、そこから押っつけて前々の位置を取りに行っての先行抜け出し。4歳で56キロ(②着マジックタイムは5歳54キロ)の斤量も楽ではなかったはずだが、ここはG1連対馬の力を見せつけたと言っていいだろう。エリザベス女王杯(⑧着)も直線の不利がなければ掲示板くらいはありそうだっただけに、ヴィクトリアマイルも楽しみになってきた。

②着のマジックタイムは2キロの斤量差もあったが、こちらは14年のクイーンC②着など良馬場以外では[1.2.0.0]。③着ウインプリメーラは初の1400mとしては上々だろう。そして久々に連対を外したスナッチマインドも、1600万を飛ばしての重賞挑戦で見せ場は十分。さらにウリウリも57キロを背負いながら内で脚を見せていた。さまざまな条件が重なって敗戦という結果になったものの、それぞれ悪くはない内容だ。

さて、スナッチマインドあたりは賞金加算必須だが、これがヴィクトリアマイルになったらどう変わるのか。本番とは違う距離に変わっても、先を見据えてあれこれ考える材料は提供された今年の京都牝馬Sだった。

そして次の古牝馬重賞は例年通り、穴党のみなさんお待たせのハンデ重賞・中山牝馬S。いや、ここ3年それほど荒れてはいないのだが、今年あたりはドカンと一発大波乱になりそうな気もするが、さて、どうなるだろうか。