デビューの遅れを挽回、パワーアップして一気に頂点へ!
文/石田敏徳、写真/川井博
第1レースの
未勝利戦(ダート1400m)の勝ちタイムが1分25秒2で、第3レースの
未勝利戦(ダート1600m)は1分35秒7。それぞれの勝ち馬はともに、前走の走破時計より3秒以上も速いタイム(!)を記録しての勝利だった。
土曜日に降った大雨の影響が残り
「不良」でスタートした東京ダートの馬場状態は午後になって
「重」に回復したものの、やっぱり時計は速め。コースがベラボーに走りやすいコンディションであること、ハイペース必至の
フェブラリーSも
レコード(1分34秒1)前後の決着になるであろうことは、午前中の時点で察しがついた。
この手の高速ダートの場合、
「前が止まらない」と考えるのは早計で、意外に差しが決まるもの。実際、前座のレースでも単調な“行った行った”は見当たらず、差し馬がけっこう上位に食い込んでいた。
でもなあ。と、
私は考えた。
(
レコード決着になると仮定した場合、
ノンコノユメはいったい、どれぐらいの上がりタイムを記録すれば届くんだ?)
ちなみに
ノンコノユメの持ち時計は昨年10月の
武蔵野Sで記録した1分34秒7。到底、届きそうになかった位置からまさに飛ぶような末脚(自身の上がりタイムは35秒2)で差し切ったレースだが、ハナ差でとらえた②着
タガノトネールとの勝ち負けは
「首の上げ下げのタイミングひとつで入れ替わっていた」というのが
私のジャッジだった。
58キロを背負っていた当時と比べ、斤量は1キロ軽くなるといっても、今日の馬場ではさすがに届くまい。そう考えて思い切りよく馬券から蹴飛ばしてしまったのが
大失敗。いや、当たらずとも遠からずではあったんだけど……。ん、勝った馬の話はどうなってんだ? 失礼。馬券の
愚痴はこれぐらいにして、早速、レースを振り返ってみよう。
揃ってスタートを決めた逃げ候補のうち、先手を奪ったのは
コーリンベリーだった。あまり行く気を見せなかった
モンドクラッセにかわって
スーサンジョイがこれに絡み、前半600mは34秒1で通過。その後、やや落ち着いたように映った流れだが、600m以降のラップが12秒0-12秒3だから、決して緩んだわけではない。
3連覇をかけて挑んだ
コパノリッキーは、前年(中盤が極端に遅かった)とは一変したこの引き締まった流れを好位のインに収まって追走。折り合いはスムーズで“形”としては悪くないように映ったが、そこからバテず伸びずの走りで⑧着に沈んだ。結果的には2年前(勝ちタイムは1分36秒0)と昨年(1分36秒3)より、2秒近くも速く決着した
高速マイル戦への適性は高くなかったということだろう。
対して、あまり速くなかったスタートを鋭いダッシュで挽回した
モーニンは好位の外を追走。残り600m地点から再び11秒台のラップが刻まれたなか、4コーナーから手綱を動かして前に迫っていった
M・デムーロ騎手の強気な騎乗に応えて直線に向くともう一段、加速し、残り200m地点で先頭に躍り出る。
「先頭に立つのが少し早くて、馬が物見をしてしまった。ノンコが来る!と思いました」そう振り返った
デムーロ騎手の予感通り、後方4番手という道中の位置取りから、馬場の大外をまっしぐらに伸びて
ノンコは来た。ただ、
「休養明けのためか、仕掛けてすぐに反応してくれなかった。馬がフーっとひと息ついてから加速する感じだった」(
C・ルメール騎手)という
ノンコノユメは、横一列の争いを制して②着を確保するのが精一杯。物見はしても脚勢はそれほど翳らなかった
モーニンはその追撃を寄せ付けずにゴールを駆け抜け、
レコードでの戴冠を果たした。
米国・フロリダの
トレーニングセールで購入されて日本へやってきた後、腰に力が入らなくなる症状(原因は不明とのこと)を呈してデビューは遅れた
モーニンだが、昨年5月に初陣を迎えてからは連戦連勝。無傷の重賞制覇に挑んだ先の
武蔵野Sでは使い詰めの
疲労もあったのか③着に敗れ、連勝は4でストップしたものの、その後、ひと息入れて態勢を立て直され、リスタートの一戦、
根岸Sの勝利に弾みをつけ、
G1の頂点に駆け上がった。
その
根岸Sの後、
「次回(フェブラリーS)は武蔵野Sのときと同じ、中2週の間隔で再度の東上になる。その点が心配」と話していた
石坂正調教師だが、
「(休養を挟んで)馬がパワーアップしていることを今日は改めて実感しました」と勝利の弁を述べた。今後は
「もう少し長めの距離も視野に入れる」そうで、
ノンコノユメとの再戦はもちろん、ホッコータルマエ、サウンドトゥルーあたりとの対決も楽しみだ。