レインボーラインが「よくわからない」大混戦を制す!
文/浅田知広、写真/森鷹史
アーリントンCといえば、その前身・
ペガサスS時代にオグリキャップやシャダイカグラが優勝。そして名称変更後の02年にはタニノギムレットが制するなど、その年、あるいは
春の主役級が登場することもある一戦だ。近年では、一昨年のミッキーアイルが
NHKマイルCを制覇。また、同年のG1直結ではないものの、3年前はコパノリチャード、4年前はジャスタウェイと後のG1馬が勝利を飾っている。
ただその一方で、レース前は
「なんだかよくわからない」という年もけっこうあるもので、昨年は1番人気ナヴィオン(④着)の単勝オッズが4.8倍。4年前の1番人気ダローネガ(⑨着)は3.7倍だった。そして今年の
アーリントンCも、登録馬を見た瞬間に
「よくわからない方の年だ!」。はじめに人気順を考えただけでも、まったくもってよくわからない。
馬券候補に入れるかどうかは別にして、
当方の予想と大きく違っていたのは、
ダンツプリウス(9番人気)と
ロワアブソリュー(7番人気)で、これは予想したよりも人気がない側。
ダンツプリウスは、コース形態の違う中山とはいえど、前走で
オープン・ジュニアCを制した馬。そして
ロワアブソリューは、
きさらぎ賞こそ3番人気で⑦着に敗退したものの、1ハロンでも距離が短縮されて変わり身がありそうなタイプだ。
一方、思ったよりも人気になっていたのは、
シンザン記念の⑤⑥着馬。
レオナルド(5番人気)と、
レインボーライン(4番人気)の2頭。ただ、
レインボーラインは、
M.デムーロ騎手になった時点で想定の範囲内である。
そしておおむねこんなもの、と思ったのは1~3番人気の
アーバンキッド、
ボールライトニング、
ヒルノマゼランあたり。順番はさておき、1番人気の
アーバンキッドで単勝4.5倍、まあ
「よくわからない年」なのは当日になっても変わりなかった。
そして。実際にレースを見ても、冗談抜きにゴール寸前まで
「わからない」一戦となった。先手を奪ったのは、前々走の
シンザン記念で③着に逃げ粘った
シゲルノコギリザメ(6番人気)。
レオナルドが2番手につけ、
ヒルノマゼランや
アーバンキッドが好位から中団。
ボールライトニングや、出遅れた
ロワアブソリューが後方を追走した。
前半の600m通過は、このレースとしては速い34秒4。その後ややペースが落ちたこともあり、3~4コーナー中間では
レインボーラインや
ダンツプリウスが外から進出。その2頭の内に併せるように
アーバンキッドも動いていった。
そんな外の動きを見ている隙に、直線入口で
レオナルドが先頭へ。そして外から
アーバンキッドがこれに迫り、残り250mあたりでは、この2頭の一騎打ちになりそうな脚色だ。
ところが、ゴール前の坂にかかるとこの2頭の伸びはいまひとつ。もともと3番手以下は何頭もが大きく横に広がっていただけに、ここからは
大混戦、頭の中は
大混乱。2頭の間を突いてなにか1頭(盛り返した
ヒルノマゼランだった)、そして外からは3~4頭くらいが併せ馬で押し寄せてきた(内から順に
ダンツプリウス、
レインボーライン、
ロワアブソリューだった)。
カメラの角度もあるため、いったいなにが先頭なんだか、と思っているうちに、各馬ごちゃごちゃっと、なだれ込むようにしてゴール板を通過。かろうじて、外3頭が①~③着であろうこと、その中で真ん中の
青い覆面(
レインボーライン)がアタマを取ったっぽいことは判別できたが、①~⑤着が同タイム、そして⑥着でもコンマ1秒の
大混戦。近年の重賞では間違いなく上位に数えられる
「よくわからない」ゴール前だった。
結果としては「思ったより人気」になった2頭が①④着(
レインボーライン、
レオナルド)。その間に「思ったより人気がなかった」2頭が②③着(
ダンツプリウス、
ロワアブソリュー)。やっぱり終わってみても
ごちゃごちゃである。一方で、
ハナ差の勝負は騎手の腕ということか、結局、
M.デムーロ騎手が
3週連続重賞制覇・4連勝。よくわからないレースの中で、一番わかりやすい買い方が当たりだったようだ。
ともあれ、そんな
大混戦を制したのは
レインボーライン。過去の重賞2戦は
⑨⑥着に終わっていたが、前々走で500万を制した阪神芝1600mに替わり、きっちり巻き返してきた。半姉アニメイトバイオは10年の
ローズSを制したものの、G1は
阪神JF・秋華賞でアパパネに次ぐ②着が最高成績。さて、弟の
レインボーラインはどんな結果を残していくのだろうか。
いまのところは、力が及ばなければあっさり着外という印象もあるが、前々走の500万では、②着馬の追撃をアタマ差で抑える勝負根性を見せている。G1通用の力をつけ、ゴール前が
大混戦になるようなら、再び
「よくわからないけど勝ったのはレインボーライン」という走りを見せてくれる可能性もありそうだ。