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「目指している世界が違う」と言わんばかりの勝ち方だった
文/編集部(M)、写真/川井博


①着ドゥラメンテ、②着アンビシャス、③着リアルスティールという4歳馬のワンツースリーとなった今年の中山記念

その3頭の誕生日は、ドゥラメンテが2012年3月22日、アンビシャスが2月17日、リアルスティールが3月1日で(4歳馬はこの3頭だけ)、つまり今回の出走馬11頭の中ではドゥラメンテいちばん遅い生まれだったのだが、「目指している世界が違う」と言わんばかりの勝ち方で他馬を負かした。

リアルスティールは2枠2番で、7枠9番のドゥラメンテや8枠10番のアンビシャスよりも好枠を引き当てた。それを活かすように内目を距離ロスなく走って脚を伸ばしたが、ドゥラメンテを捕えるには至らず、アンビシャスには差し込まれた。

アンビシャスは道中で引っ掛かった天皇賞・秋の反省もあってか、後方で折り合い重視となり、直線ではメンバー中最速の上がり33秒6で追い込んだ。中距離での能力の高さを見せるレースではあったが、アンビシャスリアルスティールの斤量が55kgだったのに対して、ドゥラメンテ57kg。まだ力の差が感じられた。

今回の中山記念は、カオスモスマイネルラクリマがいたもののペースが落ち着きそうだったので、戦前は、ドゥラメンテアンビシャス折り合いがポイントになるだろうと思っていた。ところが、F.ベリー騎手ラストインパクトが思わぬ先行策を採り、想像以上にレースが流れた。

1000m通過は60秒を切り(59秒4)、これはドゥラメンテが②着に敗れ、リアルスティールが制した昨年の共同通信杯の時(60秒0)よりも速かった。ドゥラメンテにとってはレースがしやすくなったのだろうし(もちろんアンビシャスにとっても)、逆に、ロゴタイプイスラボニータには向かなかったか。

道中でのドゥラメンテは中団の外目で、リアルスティールよりもやや前に位置し、3コーナーを過ぎて、自分から動いて行った。自分のリズムがこれで、他馬は眼中にないといった感じ。コーナーを逆手前で走って4コーナーで再び外に膨らんだが、直線に向くとさらに加速して一気に勝負を付けにかかった。

抜け出してからはソラを遣ったようで、最後にアンビシャスに詰め寄られたのはスタミナが切れたからではないだろう。今年の最大目標と言われる凱旋門賞に対しては、スタミナ面よりもやはり右回りが気にかかる。今年の凱旋門賞は例年のロンシャンではなく、シャンティイで行われるが、右回りであることに変わりはない。7ヶ月後にどんな走りを見せてくれるだろうか。

それにしても、M.デムーロ騎手のこのメインレースでの強さはいったい何なのだろう。2月14日に京都記念サトノクラウンで制してからは、京都牝馬SクイーンズリングフェブラリーSモーニンアーリントンCレインボーライン、そして今回の中山記念と、JRA重賞を5連勝してみせた。

今週の土曜日(2月27日)は阪神で騎乗して、メインレースの前までは8鞍騎乗して(すべて1~3番人気)、[1.1.1.5]という成績だった。アーリントンCレインボーラインは4番人気で、初めて1~3番人気ではなくなったのだが、あの大接戦をものにした。

日曜日(2月28日)は中山で騎乗して、5Rが2番人気⑬着(シャンドランジュ)、7Rが4番人気⑦着(リボンドグレープス)、8Rが2番人気⑯着(ステイリッチ)。掲示板にも載れていなかったが、メインの中山記念を制した。

今年のM.デムーロ騎手は2月28日終了時点でJRAで28勝を挙げて、リーディング3位。その勝率は1割8分2厘で、1割8分4厘戸崎騎手(32勝、リーディング2位)や2割2分3厘ルメール騎手(33勝、リーディング1位)よりは劣るのだが、メインレース(第11R)に限ると、7勝勝率3割8分9厘で第1位。2位は川田騎手(5勝・勝率3割3分3厘)で、騎乗機会が5回以上で勝率3割を超えているのはこのふたりだけになる。

M.デムーロ騎手の言動を見ていると、以前にM.キネーン元騎手が話してくれた「騎手にいちばん必要なのは、勝ちたいと思う気持ち」という言葉を思い出す。勝利へのあの貪欲さが、世界で走る日本馬の後押しになる日が再び訪れてほしいものだ。