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高松宮記念は例年以上に展開の読み方が結果を左右するのでは?
文/編集部(M)、写真/川井博


エイシンブルズアイにテン乗りだった石橋騎手は、陣営(野中厩舎)と相談して「先行する予定だった」とのことだが、他馬が速くて思った位置を取れず、すぐに後方追走に切り替えた。

この辺りは乗り慣れた中山で、さすがに14年目(石橋騎手)ともなると冷静だなあと感心させられたが……ここまで書いて、ふと今週にデビューした藤田菜騎手のことを思い出した。

3日の川崎競馬でデビューした藤田菜騎手は、JRAでのデビューが5日(土)の中山2R(未勝利、ダート1200m)で、自厩舎のネイチャーポイントに騎乗した。管理する根本調教師逃げる指示を与えていたそうだが、ハナを奪い切れないと見るや途中から中団追走に切り替え、直線で馬場の中央に持ち出して伸びてきた(3/4馬身差の②着)。

たった一戦でああだこうだと言うのは違うんでしょうけれど、あの切り替えをデビュー間もない騎手ができるというのは凄いことなんじゃないですかね。

断っておくと、個人的には、女性騎手だからといって特別扱いすることは好みではないと思っています。ただ、3日の川崎競馬での騎乗や4~5日のレースぶりでも、冷静な騎乗ぶりは光って見えた。他の新人ジョッキーに対してもそうですが、温かい目で見守りつつ、活躍を期待したいですね。

今年のオーシャンSは好スタートを決めたハクサンムーンが前半3F32秒7というハイペースで飛ばし、好判断を見せた石橋騎手エイシンブルズアイを優勝へ導いたわけだが、道中でペースを考え、脚を溜める戦法を選択したジョッキーは他にも複数いた。ところが、直線半ばで前が詰まって追えなくなる馬がたくさん現れ、結果的に冷静な判断だけでは上位に来られないレースにもなった。

「メインレースの考え方」で「◎」にしたゴールドペガサスは前が詰まって直線で何もできず(⑭着)、「○」にしたアルビアーノも直線で他馬に挟まれてしまった(⑤着)。「▲」で穴ぐさ💨にしたセイコーライコウも前が詰まり(⑫着)、同じく穴ぐさ💨にしたスギノエンデバーも直線で挟まれる(⑯着)という、自分自身の目を疑いたくなるようなシーンになった。

競馬だから仕方がない、と言い聞かせてみるが、かつては「おい! 審議だろ!」と叫べたものも、いまは言ったところで望みは薄く、詰まった気持ちの持って行き場がない「アメリカ横断ウルトラクイズ」徳光さん(敗者におもちゃのハンマーで叩かれる役目を担っていた)のような存在がいればまた別なんでしょうけれど、なんとも切ないゴール前になった……。

優勝したエイシンブルズアイは流れも合ったのだろうが、直線に坂のあるコースで初めて勝ち鞍を挙げ、その点は高松宮記念に向けても収穫になっただろう。

左回りは3歳時のNHKマイルC(⑬着)だけで、その克服はポイントだろうが、中京芝1200mは少し長めの距離をこなせるスタミナがあった方が良いから、その点は悪くない印象を受ける。今回も含めて15頭立て以上での4勝はふた桁馬番なので、本番でも真ん中から外目の枠をゲットしたいところだろう。

ハクサンムーンは昨年に続いての②着だったが、昨年が2ヶ月ぶりだったのに対して今年は5ヶ月ぶりで、ハイペースで粘った内容を考えても、今年の方が価値が高いように感じる。悲願のG1制覇へ向けて、好内容の復帰戦だったと言えるだろう。問題は、もうひとつの前哨戦でもある阪急杯を逃げ馬(ミッキーアイル)が押し切ったことではないか。

ミッキーアイルハクサンムーンは昨秋のスプリンターズSでも激突し、スタートが速くなかったもののハナを奪ったハクサンムーンが⑫着に失速し、番手に控えたミッキーアイルが④着に敗れている。

ミッキーアイルは古馬になってからは控える競馬を選択していたが、前走の阪急杯で鮮やかな逃げ切り勝ちを演じて、レース後には「やっぱり逃げる形が良さそう」とのコメントが聞かれた。同じく「逃げベスト」の発言はハクサンムーン陣営からもあり、果たしてその兼ね合いがどうなるか。今年の高松宮記念は、例年以上に展開の読み方が結果を左右するのではないだろうか。

長期休養明け初戦ながら③着まで上がったスノードラゴンは、スムーズに差し込めた利もあったが、1分7秒台で走破したことを評価すべきだろう。これまでの芝1200mのベストタイムは、優勝した一昨年のスプリンターズSでの1分8秒8で、8歳での長期休養明けながら今回は1秒近くも時計を短縮した。驚きを禁じ得ないのも事実だが、次走に向けて認識を改めて対応するようにしたい。

アルビアーノは前述した通り、直線で挟まれる大きな不利を受けたので、⑤着という結果は気にしなくていいだろう。芝1200mにも対応できるスピードを見せたし、次走は叩き2戦目の上積みを見込めそうで、広いコースに替われば脚質的にもプラスだろう。左回りでも勝利実績はあるので、巻き返しは必至なのではないか。

今年のオーシャンSは、レースとしては何とも言えないものになったが、高松宮記念の前哨戦としてはそれぞれに収穫もあり、阪急杯との対比で見れば内容もあったように思われる。第46回高松宮記念力勝負の電撃の6ハロン戦になってほしいものだ。