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初対決はデータ通りマカヒキに軍配、さて本番は!?
文/浅田知広、写真/川井博


レースそのものは楽しみだけど、馬券は買いたくないよなあ。と、まあ多くのみなさんもそんなことを考えたであろう、今年の弥生賞である。朝日杯FSを制したリオンディーズが単勝1.9倍、そして新馬-若駒Sを連勝したマカヒキは2.6倍。少し離れて朝日杯FS②着のエアスピネルが4.2倍で続き、3強か、それとも2強プラスワンというか、という様相だ。

なにかおいしい馬券はないものかとデータをあさると、朝日杯FS連対馬の次走は過去10年で[1.5.6.8]、勝率5.0%、複勝率60.0%と、②③着こそ多かれど、勝ったのは13年スプリングSのロゴタイプ1頭だけ。一方、過去10年の若駒S優勝馬の次走(休養明け除く)は[3.1.1.4]、勝率33.3%、複勝率55.6%。

「おいしい」かどうかは別にして、そして中山適性どうのも別にして、とりあえず今年は朝日杯FS組よりはマカヒキをアタマにするのが正解に近い、というデータだった。

とはいえ。中山適性を別にしていいのかどうか。まあ、走っていないのだからわからん、と言えばそれまでだが、3強の中ではもっとも、広いコース向きっぽい走りをしてきたのがマカヒキでもある。

レースもそのマカヒキは予想通りに後方からゆったりしたスタート。リオンディーズはその前、そしてエアスピネルは先行集団の一角で落ち着くかに見えた。

ところが、スタンド前でリオンディーズが掛かって前へと上がり、1コーナーはなんと4番手で通過。ロングスパートはありそうだったが、最初からエアスピネルの前になるとは、少々予想外の展開だ。

もちろん、競馬はこの3頭でやっているわけではない。この手のレース、なにか一発やってやろうと考えれば、思い切った先行策か他力本願の後方待機になる。先行策に出たのはケンホファヴァルトシャララモーゼスあたりで、前はばらけて800m通過は46秒5。ここからペースを落として3コーナーへ向かっていった。

本来なら、この遅くなったタイミングで「後方から」リオンディーズが動き、マカヒキになし崩し的に脚を使わせる展開も考えられたのだが、なにせ最初から先行策で、向正面でも掛かり加減。この形から、さらにロングスパートに打って出るのは穴馬の乗り方になってしまう。

結果として、前半こそ速かったものの、1200m通過は1分12秒3、さらに800~400mも12秒5-12秒5とペースは上がらなかった。こうなれば、マカヒキにとっては普通の差し馬のタイミングで動けばいい展開。その前でエアスピネルもいい手応えながら、こちらは残念ながら、普通の勝ちパターンでどうこうなる相手ではなかった。

そして、残り400mからの2ハロンは11秒3-11秒3。あえて言えば、マカヒキが坂を苦にする可能性もゼロではなかったのだが、まったくそんなところはなく、持ち味の爆発的な脚を繰り出して、きっちりと差し切り勝ち。初対決はマカヒキに軍配が上がり、そして朝日杯FS組は朝日杯FSの順番通りの②③着となった。

さて、この結果を受けて、ライバルも増えれば枠も展開も変わる本番はどうなるか。パッと見の印象としては、敗れたとはいえリオンディーズに上昇の余地はありそうだ。ただ、次は大丈夫という保証はどこにもなく、もちろんこれはマカヒキも同様だ。逆に、なにか手を打ってくるであろうエアスピネルにも、逆転の目は残されている。

ちなみに、今回のようにG1以外の2~3歳重賞で「3番人気5倍未満、4番人気20倍以上」というレース探ると、なんと00年のラジオたんぱ杯3歳S以来。アグネスタキオン(2番人気)→ジャングルポケット(3番人気)→クロフネ(1番人気)という、あのレースだ。

もうひとつさかのぼれば、97年の東スポ杯3歳S、キングヘイロー(1番人気)→マイネルラヴ(2番人気)→マイネルメッサー(7番人気)。この6頭のうち、7番人気だったマイネルメッサーを除く5頭は、すべて後のG1ホースである。

その「後のG1」はクラシックだけではなく、スプリント戦だったり、ダート戦だったりするものの、ともあれ今回、人気でしっかり上位に入ったマカヒキリオンディーズエアスピネルの3頭はその資格を得た。

「勝った2頭は皐月賞で連対している」とも言えるのだが、さて、そんなわかりやすい結果になるのかどうか。今度は別路線組も交え、今回よりは馬券的「にも」おもしろい競馬が見られそうだ。