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久々のG3参戦、58キロでも力が一枚上だった
文/浅田知広、写真/森鷹史


この時期になって(戻って)5回目を迎えた中日新聞杯。昨年はディサイファが優勝し、その後も札幌記念アメリカJCCを制するなど、ひとつ格上のG2で活躍を見せている。しかし、ここを制した当時は5番人気と、今になって思えば過小評価だった、ということになるだろうか。

またその5番人気というのがこのレースではいい線で、なんとなく「上位人気のちょっと下」が勝つレース、という印象がある。06年~10年の同時期に中京2000mで行われた中京記念(11年は小倉代替)と、12~15年の中日新聞杯を合わせると、勝ち馬9頭中7頭が4~6番人気。残る2頭はふた桁人気で、1~3番人気は1勝も挙げていない。

ここまで人気馬が勝たないのは珍しく、過去10年で10回きっちりやっている重賞では、府中牝馬Sの1~3番人気[1.5.7.17]くらいである。

そんな予備知識を仕入れた上で今年の出走馬を見渡すと、格ならサトノノブレス菊花賞②着、日経新春杯勝ちを含む重賞[2.2.3.10]は断トツだ。しかし、それゆえハンデは58キロ、勝つかと言われればちょっと怪しい。また、バウンスシャッセが重賞[3.0.1.7]だが、牝馬限定G3の3勝で、牡馬相手となるとまた怪しい。

もっとも、その他の馬も実績不足だったり、勝ち切れなかったり、あるいは近走不振だったり。なにかと怪しいところがあるからG3のハンデ戦に出てくるのだ、とも言える。とはいえ、中京新コースの4回では、③着以内12頭中11頭が前走⑤着以内難解ではあるが、とんでもない馬もそうそう来ない、という傾向だ。

さてレースは。近5走で逃げていた馬が1頭もいないという、また展開でもひと波乱ありそうな怪しいメンバー。前走まで差していた人気薄ロンギングダンサーが初ブリンカーで先手を取って、800m49秒5、1000m62秒1のスローペースとなった。

そして、怪しい中でも一応「勝ち馬候補」となる4~6番人気では、ヤマニンボワラクテ(5番人気)がその2番手で落ち着いた追走を見せ、人気どころでは、1番人気のサトノノブレスが好位の外。2番人気のクルーガーと3番人気のブライトエンブレムは後方と中団で、展開的には少々厳しく思える位置取りである。仮に58キロ・サトノノブレスの終いが甘くなれば、やっぱり勝つのは4番人気以下か、という流れだ。

そして直線、ヤマニンボワラクテが先頭に立ち、その外にファントムライトと5勝馬同士の追い比べ、というよりは、②③着が計8回の馬と10回の馬の追い比べ。突き放せそうで突き放せない、差せそうで差せない、そんなもどかしい争いが、400m近く続いていった。

そして迎えたゴール前。その争いに決着をつけたのは……、なんと(?)1番人気のサトノノブレスだった! いや、この馬も前走まで[4.4.4.10]で、中京は金鯱賞②③着など必ずしも勝ち切るタイプではないのだが。

そんなにもたもたしてるなら、ちょっとディープインパクト産駒が差し切りますよ、と。坂を上がりラスト1ハロン12秒0まで落ちたところで、最後にスパっと脚を繰り出して重賞3勝目。小倉記念制覇以来となる約1年7ヵ月ぶりのG3参戦、58キロでも力が一枚上だった、とも言えるだろう。

今回は、ここ3戦で装着していたブリンカーを外しての一戦となったサトノノブレス。少々難しいところがあるものの、一昨年春の天皇賞は逃げて見せ場を大いに作る⑧着。そして秋も、前がすんなり開いていれば③着争いくらいはあったかという競馬で、古馬G1でもひと勝負できそうな気配はあった。昨年前半は骨瘤でほぼ棒に振ったが、この勝利で再びG1の舞台へ、ということになりそうだ。

そして②着争いを制したファントムライトは、これでここ5戦連続の②③着。近親のドゥラメンテが中山記念を勝ち切ったのとは対照的で、なんとかきっかけが欲しい。

また、その後ろでは⑥~⑬着が同タイムという大混戦も目立ったが、その一歩前の⑤着でゴールしたバウンスシャッセは、これで[5.0.1.10]と、逆に勝負に絡めばほぼ勝つタイプ。今回は馬群で進路を切り替えつつもよく差を詰めており、そろそろ牡馬相手でもどこかで勝ち切る可能性はありそうだ。