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ルージュバックに悲観する必要など何もない
文/編集部(M)、写真/川井博


週中から注目はルージュバックの1頭という感じだった今年の中山牝馬S。予想を発表する側としても、まずはルージュバックをどう扱うかを考えて過ごしてきたが、日を追うごとに勝ち切れないんじゃないかという思いが強くなっていた。

そう思ったのは、まずは血統。何度も記してきている通り、マンハッタンカフェ産駒中山芝1800m以上の重賞で勝った馬が出ていなかった。報道によっては、「マンハッタンカフェ産駒は中山芝1800mが得意」などといった記事も目にしたが、いや、条件戦と重賞は別物でしょと思っていた。

マンハッタンカフェ自身は中山芝2500mの有馬記念を勝っていて、菊花賞天皇賞・春の勝ち馬でもある。しかし、同産駒で中山芝の中距離以上の重賞を制した馬は0頭で、芝2400m以上の重賞を勝利した馬は2頭しかいない(11年天皇賞・春ヒルノダムール09年神戸新聞杯イコピコ)。マンハッタンカフェ産駒父の活躍距離で適性を考えようとすると失敗するので、そのことは覚えておきたい。

ただ、今回の中山牝馬Sは気になる点があった。ルージュバック以外にもマンハッタンカフェ産駒の有力馬が複数いて、ルージュバックを対抗(「○」)扱いにしても、本命(「◎」)にすべき存在が見つけづらかったのだ。

1番人気のルージュバックマンハッタンカフェ産駒で、2番人気のアースライズも6番人気のシングウィズジョイも同産駒。5番人気のリーサルウェポンディープインパクト産駒だが、同産駒も中山芝1800m重賞で良いとまでは言えず、3番人気のハピネスダンサーメイショウサムソン産駒だったが、同馬は「メインレースの考え方」で記した3つの好走ポイントにひとつも該当しなかった。

血統的にはハーツクライ産駒シュンドルボンが良さそうに映り、木曜日(10日)までは同馬を「◎」候補にしていたのだが、あろうことか金曜日午前の枠順発表で大外枠となってしまった。さらにはルージュバック8枠で、これはエラいことになった……と再び悩まされるハメになった。

90年以降の中山牝馬Sで、8枠で勝利した馬は95年のアルファキュートしかいなかった。その95年は10頭立てだったから、アルファキュート8枠とはいえ馬番では10番。今回の8枠の2頭(馬番15~16番)とは、あまりに違うと感じていた。

枠を重視し、血統については棚上げして、「◎」はマンハッタンカフェ産駒でも最内枠で中山実績のあるクインズミラーグロにした。血統データよりも個別のコース実績を頼りにしたわけだが、結果的に同馬は直線で前が詰まってしまい、最下位に敗れてしまった……。「◎」を信じた方には申し訳ないことをしました。すみません。

90年以降の中山牝馬S8枠の優勝馬は1頭だけだったので、力はあっても8枠の2頭が一緒に馬券に絡む可能性は低いと思っていたが、驚くことにその2頭のワンツーとなった。データは見つけた途端に崩れるというのが「データあるある」ではあるけれど、こんなことになりますかねぇ。。。

③着に突っ込んで波乱を演出したメイショウスザンナブービー人気(15番人気)だったので、この馬が馬券に絡んだことの方が世間一般では驚きだったのだろうが、同馬の実績を振り返れば別に驚くことではなく、8枠の2頭がワンツーを決めたことの方にビックリしてしまった。

中山牝馬S8枠の馬(2頭以上)が一緒に馬券に絡んだのは、それこそ95年以来だが、そうなったのは、特殊なレースの流れも影響したように思う。

今年は1分50秒3という時計の遅い決着だったが、これは1000m通過が63秒7という超スローペースだったことに加えて、上がりも35秒1とかかったため。これだけペースが緩めば、たとえ中山でもレース上がりは34秒台が計時されるのが普通だが、そうはならなかった。

昨今の中山の芝が変わったことと、皐月賞までを見据えた馬場造りをなされていること、さらには週中にが降り、週末が曇り空で馬場が乾き切らなかったことも響いたのだろう。様々な要素が絡み合って、今年のレース結果につながったように思う。

優勝したシュンドルボンは昨秋のエリザベス女王杯で穴ぐさ💨に指名していて、⑦着ながら0秒2差という良いレースをしていて、思い入れのある馬なので、タイトルを獲ったことについては素直に喜ばしいことだなあと感じた。

クビ差で惜敗したルージュバックについては、勝ち切れないんじゃないかと思っていたので、個人的には②着でも今後に悲観はしていない。道中で落鉄していたようでもあるし、今回は中山で、芝1800mの重賞でもあるから、敗れたことで評価を下げる必要はまったくないだろう。

今回は勝ち切れないんじゃないか、と思っていた裏側で、ヴィクトリアマイルが目標であれば、勝つ必要はないだろうとも思っていた。ヴィクトリアマイルはその名称が示す通り、マイル戦だ。しかし、中山牝馬Sは芝1800m戦、しかも馬場を1周するO型コースで、ヴィクトリアマイルが行われる東京芝1600mとはコースが全然違う

ヴィクトリアマイルはこれまで10回行われているが、前走を勝利していて連勝で優勝した馬は08年のエイジアンウインズしかいない。11年以降の優勝馬5頭はいずれも前走が1~5番人気ながら馬券圏外に敗れていて、本番で巻き返しに成功している。中山牝馬Sで敗れた後に優勝した馬としては、12年のホエールキャプチャ(前走の中山牝馬Sが⑤着)が記憶に新しいところだ。

ルージュバックは右回りではきさらぎ賞を制しているが、それは馬場を半周するU型コース(京都芝外1800m)だ。マイル戦は走ったことがないものの、左回りは①①②着で、敗れたのは3/4馬身差のオークスG1タイトルを掴むチャンスは十分にあるだろう。

最後に、毎年のことではあるが、今年もこの中山牝馬Sを最後に現役競走馬を引退し、繁殖入りする馬が複数いるようだ。

今回、6歳以上の馬は7頭いたが、いずれも前走に比べてマイナス体重で、渾身の仕上げだったのかなあと想像した。JRA発表だとレース中に故障をした馬もいなかったようで、無事に厩舎に戻ってきて、牧場に向かえるようだと何より。

ブービー人気で③着に激走してくれたメイショウスザンナは7歳だが、まだ現役を続けるのかな? 成績の波は激しいけれど、これで芝1800m重賞での③着以内は4度目にもなる。穴ぐさ💨指名に応えての馬券圏内はこれで3度目で、本当にありがたい馬です。ありがとうございました。