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“文句なし”の優先出走権で、堂々と本番へ向かう
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也


言うまでもなく、フィリーズレビュー桜花賞トライアルレースで、③着までに入った馬にはもれなく優先出走権が与えられる。改めて言うまでもないことですね。

一方、この日は競馬と同時進行で名古屋ウィメンズマラソンを観戦していたが、これもリオデジャネイロオリンピックの女子マラソン代表選考レース、いわゆるトライアルだった。

このレース(マラソンの方です)は大きな注目を集めていた。女子マラソンの代表枠は3つ。そのうち、これまでに開催された選考レースで2枠はほぼ決まり。実質的に、残る1枠をここで争うことになった。

ただ、“名古屋で日本人最先着すること”イコール代表決定かというと、そうでもないようで、そこは競馬と違うところだ。

実際、昨年の世界陸上に向けての選考レースで、14年横浜国際女子マラソンを制した田中智美選手は選考レースの中で唯一の日本人優勝者となるも、「序盤で前を積極的に追わなかった」こと、別の選手が他の選考レースで田中選手より速いタイムで走った、などの理由で落選している。

そして、その代表選考のやり方は大きな物議を醸した。競馬に例えるなら、チューリップ賞、フィリーズレビュー、アネモネSを比較し、チューリップ賞を差して勝った馬が「時計が遅かった」といったような理由で優先出走権を与えられず、アネモネSフィリーズレビューを好タイムで逃げ切った馬だけに与えられるようなものだ。

実際はそれぞれのレースがどんな内容であっても、重賞は③着まで、アネモネSは勝った馬全馬に優先出走権が与えられる。競馬ファンとしては当たり前のことなのだが、マラソンの選考を見る限り、「競馬では余計な物議を醸すことがないし、幸せなのかもしれないなあ」としみじみ感じた。

また同時に、「この3レースに出走した馬のうち、2頭にだけしか出走権が与えられず、それを選ばなければならないとしたら、今年はどの馬に与えればいいだろうか?」などと考えてしまったのだが(笑)。

なお、その田中選手。この名古屋ウィメンズマラソンに出場し、最後のトラックでのスパート勝負を制して日本人最上位となる2位に入賞。まだ決定ではない(17日に協議されるようです)が、これまでの経緯を考えると、リオにぜひ行ってもらいたいと思う。

一方、競馬では“文句のない形”で優先出走権を獲得したのが、今回の勝ち馬ソルヴェイグをはじめ、上位を占めた3頭だ。

ハナを切ったキャンディバローズ&武豊騎手が作ったペースは前半600m通過が35秒0で、これは過去10年のこのレースで2010年に並んでもっとも遅いペース。競ってこないことを読んで無理に抑えることなく行き切った、さすがの好判断だといえるだろう。

それを好位の内目で追走し、差し切ったのがソルヴェイグ。ペースがさほど流れなかったのにもかかわらず、勝ち時計は1分22秒1で、これに匹敵するタイムでフィリーズレビューを勝ったのが近年では13年メイショウマンボ(1分22秒1)、07年アストンマーチャン(1分21秒8)と、後のG1馬しかいないことからもその価値が分かるだろう。

ソルヴェイグの近親にはスプリント指向が強い馬が多く、今後は距離克服が課題になりそう。それだけに、クラシック路線が終わった後も長い目で見ていきたい。

また、前有利の流れの中で②着まで差してきたアットザシーサイドも評価すべきだろう。直線で馬群を捌くのに手間取る場面も見られただけに、負けて強しという評価を下してよさそうだ。

こちらは母ルミナスハーバー(阪神JF③着、マーガレットS勝ちなどがあるも、クラシックは不出走)、祖母タックスヘイブン(クイーンC③着があるも、クラシックはやはり不出走)と、クラシックの出走に届きそうで届かない牝系なので、“文句なしで”本番への優先出走権を得たことは大きいだろう。

ちなみに、アットザシーサイド、キャンディバローズはともに前走で阪神JFに出走していた。これまで、阪神JFの次走で馬券圏内に入った馬がメジャーエンブレムしかおらず、その価値に疑問符がつきかけていただけに、この結果には他ならぬメジャーエンブレム自身が安堵しているかもしれない(?)。

いずれにしても。今のところ、桜花賞はやはりメジャーエンブレムが人気を集めそうだが、チューリップ賞で感じた、メジャーエンブレム一強と思って牝馬クラシック路線の予想に臨むと、痛い目に遭うかも?」という印象がどんどん強くなっているのだが、皆さんはどうでしょうか?