まれに見る極悪馬場で、ネオユニヴァースの血が騒いだ!?
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也
今週は
雨模様で、馬場がどこまで悪化するのかやきもきしながらの週末。新聞などを見ると、中京の馬場予想は
「稍重」や
「重」が多かったようで、
とんでもない馬場になることはないのでは?という感じだった。
ところが蓋をあけてみると、土曜の中京は芝ダートともに
朝から最終まで「不良」。同じ1400mでも、7Rの
ダート500万の決着時計が1分24秒8、一方
芝G3のファルコンSは決着時計が1分25秒0。これを見ても分かるように、掛け値なしの極悪馬場となった。
さらに、この
ファルコンSでは序盤から
ミスキララが飛ばして行ったことでペースが上がり、
前半600m通過が33秒3。これは
ファルコンSが中京芝1400mで開催されるようになった12年以降で、14年(33秒0)に次いで
2番目に速い。
そして、その14年は良馬場ながら、4角10番手以下の3頭が馬券圏内を占める完全な
差し決着。馬場が悪い今年は
推して知るべしだろう……と思ったのだが、2番手追走から早めに先頭に立った
シゲルノコギリザメが
粘る粘る。まさか粘り切るかと思ったところで
ブレイブスマッシュが迫り、さらに大外から
トウショウドラフタが一気に差し切った。
トウショウドラフタの父は
アンライバルドで、その父は
ネオユニヴァース。この血統、よくよく
雨や道悪に縁があるようで、
ネオユニヴァースは初めての重賞制覇と
ダービー勝ちがともに
重馬場。
アンライバルド自身は良馬場で好成績を残した馬だが、同じ父を持つ
ヴィクトワールピサ、
ロジユニヴァースは
初めてのG1勝ちが道悪だった。
さらに、この
ファルコンSでも勝った
トウショウドラフタだけでなく、②着
ブレイブスマッシュ(
父トーセンファントム)の祖父も
ネオユニヴァースだから、
偶然で片付けるには出来すぎているのでは。今後もこの系統が道悪で出走してきたら、人気にかかわらず注意が必要になるかもしれない。
一方、
トウショウドラフタの鞍上は
田辺騎手で、これでこのコンビで3連勝となった。ちなみにその
田辺騎手、前走の
クロッカスS(①着)のレース後には
「馬群に入れて直線で外に出さない競馬を試した」といった趣旨のコメントをしている。
ここで頭をよぎったのが、
サラブレ4月号の連載『一鞍専心』のこと。
バウンスシャッセとのコンビで制した
愛知杯を振り返ってもらったのだが、
「力がある馬はどの位置をとらなければとか、どこを通らないと厳しいとか、そういうことを考えることがない」、
「大きいレースに向けて、(前哨戦で)試すことができなければなかなか結果を残せない」という発言をしている。
そのことがあったので、個人的に
トウショウドラフタがどこを通ってくるかを注目していた。内を通る、
田辺騎手が言う“セコ乗り”ならばこのメンバーの中では力が抜けていないと感じていると判断できるし、
外を通るなら“試す”競馬ができるだけの力があると判断できるのでは?というわけだ。
そうしたら、前述の通り
大外から豪快に差し切る競馬。レース後に同騎手は
「少しでも馬が走りやすいところを選んで走らせました。今日は脚を取られているような雰囲気もあって、最後まで気を抜けない感じでした(抜粋)」とコメントしたが、それでも差し切ったという内容は
高く評価すべきだろう。
また、今回のレースぶりはG1に向けて
脚を測った意味もあったように思えた。これだけの馬場になってそれが果たせたかは不明だが、
「G1に向けて良い雰囲気で進める」という
田辺騎手のコメントを信じるならば、G1でも注目の存在になりそう。雨が降ればなおさらかも?
最後に触れておきたいのが
トウショウドラフタのプロフィール。生産者の欄には
「トウショウ産業株式会社トウショウ牧場」とある。
トウショウボーイをはじめ、
シスタートウショウ、
スイープトウショウなどを送り出し、昨年10月にその歴史を閉じた
名門牧場だ。
そういえば、先週の
中日新聞杯を制したのも、いまはその名がない
メジロ牧場生産の
サトノノブレスだった。名前はなくなっても、
いまだ名門の力は健在ということなのかもしれない。
自分が生まれる前から続いてきた牧場の名前がなくなるのは寂しい思いもあるが、できるだけその名前を競馬場で見ることができたら、と思う。