未知の距離はあっさりとクリア、次なる壁とは!?
文/編集部(W)、写真/森鷹史
先日、
JRAが来年から
大阪杯をG1に格上げする方針というニュースを目にした。元競馬雑誌の編集者なのに、普段は競馬の話題をほとんど振ってこない
ウチの奥さんですから
「大阪杯がG1になるんだって!?」と言ってきたら大事なのでしょう(笑)。
「札幌記念をG1に格上げしたらどうか」という話はちらほら出ていたが、
大阪杯というのは寝耳に水だった。最近は古馬の中距離型が春にドバイ、香港、オーストラリアなどに遠征するケースが増加しており、その流出を少しでも食い止めたい狙いがあると推察される。
もともと
「3200mの天皇賞・春のステップレースで2000mって距離が短すぎでしょ」と思っていて、09年以降、
大阪杯→
天皇賞・春というローテーションの馬は1年当たりで1~2頭と少なく、
天皇賞・春を3200m→2000mにしてしまうと、今度はステイヤーが目標とするレースがなくなってしまうから、そういう流れになるのも妥当と言えば妥当かもしれない。
それはさておき。90年以降、
天皇賞・春の勝ち馬の前走レースを見ると、
阪神大賞典10頭、
日経賞6頭、
大阪杯5頭、
京都記念2頭、
中山記念、
大阪―ハンブルクC、
ダイオライト記念が各1頭ずつ。
01年以降、
阪神大賞典から直行して
天皇賞・春を制したのは06年ディープインパクト、08年アドマイヤジュピタ、12年ビートブラック、15年ゴールドシップの4頭で、関連性は以前ほどではなくなってきているものの、3000mと3200mと距離が近いこともあり、
天皇賞・春を目指す上では王道のローテーションだといまでも思っている。
そんなことを考えつつ、今年の出走馬を見ると、一昨年の
菊花賞を
レコードで制した
トーホウジャッカル(2番人気)、昨年の
天皇賞・春で3番人気に推された
アドマイヤデウス(3番人気)、昨年の
菊花賞と今年の
ダイヤモンドSで④着と健闘している
タンタアレグリア(4番人気)、昨年の
天皇賞・春③着の
カレンミロティック(5番人気)と、それなりのメンバーが集まったと言える。
そんな馬たちを押し退けて1番人気に推されたのが
シュヴァルグラン。2歳秋から3歳春の重賞では
③⑤⑧着とひと息だったが、その後に休養を挟み、昨夏の札幌で復帰してから
②①①①②着と上昇中の
ハーツクライ産駒。前年秋の休養明けから条件戦を勝ち上がり、
ダイヤモンドS②着を経てこのレースで勝利した同産駒のギュスターヴクライ(12年)とそっくりだ。
重賞未勝利で2400mを超える距離は未経験という状況ながら、ここの結果いかんでは
天皇賞・春の有力候補にもなり得る、
真価を問われる一戦となった。
レースは
カレンミロティックが逃げる縦長の展開で、
アドマイヤデウス、
トーホウジャッカル、
タンタアレグリアも前、前で運ぶ。その上位人気馬を見ながら中団でじっくりと追走する
シュヴァルグラン。
福永騎手が仕掛け所を窺っている感じだったが、残り1000mを切ってからジワジワとポジションを押し上げる。
残り800mを過ぎてペースアップすると先行グループが固まり、
シュヴァルグランはその外から馬なりのまま好位まで進出して直線へ。勢い良く伸びる
シュヴァルグランは内の馬をあっさりと交わし去り、残り1F手前で早々と先頭。
タンタアレグリアがこれに食い下がるも、
シュヴァルグランとの差はジワジワと広がるばかり。
シュヴァルグランが②着
タンタアレグリアに2馬身半差を付けて完勝。
高い長距離適性を示し、重賞タイトルと
天皇賞・春の優先出走権のダブルゲットで、
天皇賞・春に向けて大きな一歩を踏み出すこととなった。また、
シュヴァルグランと
[4.2.0.0]と相性抜群の
福永騎手は骨折休養から復帰後で重賞初勝利となった。
同じ
友道厩舎のアドマイヤジュピタは
阪神大賞典→
天皇賞・春と連勝。昨年のゴールドシップも連勝していたが、
ハーツクライ産駒は中央G1が左回りで
[4.2.0.20]、右回りで
[0.9.4.44]となっている。未知の距離はこの父の産駒らしく、あっさりとこなしてみせた
シュヴァルグランだが、次は
「右回りのG1の壁」を打ち破れるのか、その点がポイントになりそうだ。
一方、直線で前が詰まる
不利があった
アドマイヤデウス(③着)、7ヵ月ぶりでの18kg増(504kg)で失速した
トーホウジャッカル(⑦着)は、今回の敗因ははっきりしている。
トーホウジャッカルはひと叩きで一変となると半信半疑な面もあるが、父スペシャルウィークは99年に休み明け&過去最多体重(486kg)の
京都大賞典で⑦着後、叩き2戦目&16kg減(470kg)の
天皇賞・秋で①着と一変していた。
菊花賞で負かしたサウンズオブアース、ゴールドアクターは昨年の
有馬記念で②①着と好走しており、そろそろ
トーホウジャッカルには
菊花賞馬の面目躍如たる快走を見せてほしいのだが…父の再現となるだろうか。